『スター・ウォーズ/新たなる希望』が1977年に公開されて以来、ファッションデザイナーたちは「はるか彼方の銀河系」からインスピレーションを得てきた。ルーク・スカイウォーカーやヨーダといったキャラクターの顔を用いてトレーナーやシルクドレスをノスタルジックに飾ってみたり、あるいはもっとさりげなく、原作映画を特徴づけるアースカラーとモノクロの色づかいをデザインに反映してみたり、といった具合だ。
正直、公開以来40年以上もの間、スター・ウォーズ1作目の『新たなる希望』がデザイナーたちのインスピレーション源であり続けていることに驚く。『新たなる希望』は過去のストーリーであるから、監督ジョージ・ルーカスとコスチュームデザイナーのジョン・モロは、当時のSF映画に見られた近未来的なデザインを取り入れなかった。彼らは、長い時代を超えてなお、その価値を保ち続けている日本の侍や軍服からインスピレーションを得たのだ。
ニューヨークのFIT美術館の副館長、パトリシア・ミアーズは次のように語った。
「1977年に初公開されたとき、スター・ウォーズは一種のカルチャー現象でした。 セットと衣装ははっきりと異なる2つの美を融合したものでした。すなわち、ハイテクと脱構築ないし終末的なものです。この二重性はある意味、1980年代の主要なトレンドを先取りしていました。一方では、イヴ・サンローランによる、強い光沢感と角ばったシルエットを兼ね備えた力強くてシャープなカットのスーツが現れ、他方では、川久保玲や山本耀司を筆頭に、アバンギャルドなデザイナーたちが脱構築の隆盛の先駆けとなっていました」
US版VOGUEは『新たなる希望』の公開年を記念して、ファーコート特集で、ジェリー・ホールなどのモデルとともにダースベイダーとC-3POを起用。1979年にはティエリー・ミュグレー(THIERRY MUGLER)がメタリックガウンのコレクションを発表し、ニューヨークタイムズは「スター・ウォーズ・シンドローム」の影響について取り上げた。
スター・ウォーズが1999年から2005年にかけてシリーズ化された時は、純粋なスター・ウォーズファンは見下したが、これらのシリーズもまた、ファッションに大きく取り入れられた。『ファントム・メナス』の公開時、イブ・サンローラン・ボーテはクイーン・アミラダにインスパイアされたメイクアップコレクション「ワン・ラブ」を発売し、2週間で完売した。
最近のファッション界はますます過熱化し、2012年にルーカスフィルムを買収したディズニーは、ロダルテ(RODARTE)、コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)、ラグ&ボーン、プリーン(PREEN)、さらにはクリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)とコラボレーションを果たしている。
また、2015年の『フォースの覚醒』公開に合わせて、ディズニー社はチャリティー・プログラム「フォース4ファッション」を始動。ダイアン・フォン・ファステンバーグ、ピーター・ピロット(PETER PILOTTO)、ジョナサン・アンダーソンなど数人のデザイナーに、スター・ウォーズのイメージを反映させたカプセルコレクションのデザインを依頼。その収益の一部はChild Mind Instituteへの寄付にあてられた。
ディズニーのDCIP執行役員であるジョシュ・シルバーマンは、このコラボレーションについて、「私たちは世界中に広がっている製品を通じて、生活の中にスター・ウォーズのようなストーリーを持ち込みたいのです」と語った。
ラグ&ボーンのカプセルコレクションは『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の公開に合わせて12月1日に発表された。共同創業者でありCEOのマーカス・ウェインライトによると、同コレクションは、『最後のジェダイ』のコスチュームデザイナー、マイケル・カプランが、最近の3部作でも踏襲していた、1977年の『スター・ウォーズ』が初めて表現した美的センスを取り入れているのだそう。
ウェインライトはVOGUEに次のように語った。「コスチュームデザイナーや『ローグ・ワン』のスタッフと会ったのですが、驚いたことに、私たちとカプランはデザイン源が同じだったのです。ラグ&ボーンのデザインはイギリスのテーラー、作業服、アメリカの軍服をミックスしたもの。ラグ&ボーンにはヴィンテージアイテムのアーカイブが数多くあるのですが、その中にはカプランたちが参考にしていたものがありました。スター・ウォーズにはどこか時間を超越したところがある。それは、この映画の設定が過去でありながら、私たちと同次元にあり、未来的な感じがしないからでしょう。だからこそ人々は本質的な部分でこの映画の世界に親しみを感じ、ファッションも別世界のものとは感じられないのだと思います」
ニューヨークのオフィスに本物のストームトルーパーを飾っているラグ&ボーンが、スター・ウォーズのイメージをデザインに取り入れたのは今回が初めてではない。2009年秋冬コレクションでの、ハイテク感あふれる生地と軍服のようなデザインはスター・ウォーズと侍からインスピレーションを受けたものだ。
この10年は、かつてないほどスター・ウォーズを思わせるファッションが登場した。マヤ ハンセンの2013年秋冬コレクション、ディオール(DIOR)、ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)の2015年プレフォール、マーラ ホフマンの2015年秋冬コレクション、これらすべてが、レイア姫のヘアスタイルも含め、オリジナル3部作からヒントを得ていた。
そしておそらく最も有名なのは、ロダルテ(RODARTE)の2014年秋冬コレクションだろう。中でも、ヨーダのクローズアップやデス・スターで飾られたブラックドレスをはじめ、ディズニーとコラボレーションした5着のドレスは、オリジナル3部作から強いインスピレーションを受けていた。
多くのファンやスター・ウォーズ世代と同じように、スター・ウォーズはロダルテにとってもどこか懐かしさをかきたてる存在だ。ロダルテのマレヴィ姉妹は当時、StarWars.comに次のような寄稿をしている。「スターウォーズは、私たちが観たことを忘れられない唯一の映画であり、多くの意味で、私たちの一部となっているように思います。あの映画は受け継がれる文化として、私たちの社会に溶け込んでいるのです。非常に多くの人々を繋ぐ中心であり、また、世界のはるか彼方離れた場所と場所とを神経のようにつなぐ複雑なネットワークでもあります」