誰が為の特典商法

書店特典が「描き下ろし短編」だと心が辛いというお話。 - Togetter



わかります、わかります。
私も元々愛媛という地方在住者だったので地方の悲哀はわかります。
本州に就職するも地方住まいで、ある時どうしても描き下ろし特典が欲しくて500円の単行本のために数千円の交通費と数時間を出して店舗に買いに行ったりもしました。
基本的に辛い思いしかしていないんですよね…


で、なんでそんなことになっているんだと以前業界関係者から聞いたことがあるんですが、その内容をまとめると特定の店舗でのみ特典が付くカラクリは…

  1. 店舗側から編集部に「特典付けたい。その見返りに追加で○○部売ります」と持ちかける。
  2. 編集部から作家に「特典用に絵or描き下ろし短編描いて欲しい。追加で○○部剃られてその分印税が増えるので原稿料はなしで」と打診する。*1
  3. 店舗側が編集部を通して作家から貰った素材を用いて自腹で特典を作る。
  4. 店舗側も追加の○○部も売り切ってウマーだけど、特典制作費で割りとトントンで売り切れなかったらもちろん赤字。


大体こんな感じらしいですね。
利害関係だけ見ると…、

  • 店舗:売り上げアップするも制作費で利益はそれほど出ない。
  • 出版社:原稿料ロハの場合はボロ儲けだが、原稿料有りの場合はトントン。
  • 作家:原稿料ロハの場合は骨折り損。原稿料有りの場合でも単行本休みの大半が潰れる。*2
  • 読者:東京及び大都市近郊の人のみ嬉しい。それ以外の地方在住の大半はヘイトが溜まる。


うーん、改めて考えても得をしているのって極一部だけのような気が…
しかも出版社によっては特典が付く店舗の情報はまとめられないので有志が調べて情報を共有したり、作者本人がアナウンスに骨を折る始末。
そこは出版社の営業とか広報とかが仕事してくださいよ、と思いますよね…


ちなみにクリエイターの友達に聞いた中で一番悪辣だと思ったのはラノベイラストレーターに店舗特典用イラストをロハで描き下ろしさせようとした編集部ですね。
いや、あんたのとこの報酬は買い取り形式だから印税増えるよってお話は関係ないですよね?(笑


どうしても特典を付けるとした場合、読者的に平等な手法としては…

  • 店舗側が特典付きのものを通販する
  • 電子書籍に書き下ろし特典が付く
  • 出版社公式通販にのみ書き下ろし特典が付く


くらいなんじゃないかな、と思います。
特典付きの通販だとCOMIC ZINとか。
電子書籍の書き下ろしだと「この素晴らしい世界に祝福を! 12 女騎士のララバイ【電子特別版】」とか。
出版社公式通販書き下ろし特典だとTOブックスの「本好きの下剋上」とかですね。


エロゲのアリスソフトを見てもわかるけど、公式通販ってのが中間マージン取られないし一番正解に近いんじゃないかな、と思います。
知らなければ気付かないけれど、作者のブログやtwitter、出版社の公式Webサイトをチェックするくらいのファンなら絶対気付くようになってるし問題ないかと。
全国各地に本屋が充実していてマイナーな本も入荷するなんて2017年末の今となっては幻想なので、これからは出版社公式通販で特典付きが強くなるんじゃないでしょうか。
というか強くなって欲しいですね。
地方の本屋にとっては厳しいけど…

*1:編集部によっては原稿料がきちんと出ます

*2:特典サンプルはちゃんと貰えます、当たり前だけど