山田祥平のRe:config.sys

モバイルは小さけりゃいいってもんだ

モバイルは小さけりゃいいってもんだ Dart
Dart

 米国のスタートアップFINsixがKickstarterで資金を募り、約5,000万円の支援金を集めて開発したという、超小型の軽量電源アダプタ「Dart」。

 日本の半導体商社丸文株式会社も出資、FINsix社の日本総代理店としてこの製品を扱いはじめ、つい先日、ようやくアマゾンで手軽に入手できるようになった。もちろんPSE取得済みの製品としてだ。

 その丸文に、この画期的な製品の詳細について聞いてきた。

ACアダプタをより汎用的なものにするDart

 持ち運びに便利なように機器を小さく作るにはどうしてもいろんなところにしわ寄せがきてしまう。その結果、電源やデータを外部とやりとりするためだけに、ブタの尻尾のような専用ケーブルやクレードルが必要になってしまい、トータルモビリティ的には本末転倒になっている製品もよくみかける。

 ACアダプタはそんなジレンマを背負い続けるデバイスの1つだ。

 FINsixは、米カリフォルニアのシリコンバレーにある数十名規模の会社だ。MIT出身の創業者が率い、多くの特許を持っているという。

 Dartは、コンセントに直接差し込めるタイプのACアダプタで、一般的なものと比べて1/4のサイズ、軽さを実現している。具体的には85gで50ccだ。ちょっと前の3,000mAくらいのモバイルバッテリを想像するといいだろう。

 本体には、日本の一般的なコンセントに差し込めるプラグが直に装備されている。対応電圧は100-240Vなので、世界中のほとんどの国でプラグアダプタなどを介して利用できる。

 驚くべきはその出力で、このサイズながら19.5V、65Wのキャパシティを持っている。最近のモバイルPCに付属するアダプタも、かなりコンパクトになってきてはいるが、容量としては45W程度だろう。いかにDartの出力が大きいかがわかるというものだ。

 技術的には一般的なスイッチング電源ではある。だが、その効率は95%に達する。この無駄のなさが特徴だ。スイッチング電源は、入力された100Vの交流のオンオフを高速に繰り返すことで目的の直流電圧を作り出す。

 そのオンオフの周期がスイッチング周波数だ。この周波数を高くすればするほど、大きな電力を確保できるが、効率は下がってしまう。だが、それを両立したのがFINsixの技術だという。そこでは共振が重要な技術要素になっているらしいが、詳細については開示されていない。

 また、スイッチング素子に「GaN(窒化ガリウム)」を使えばさらに小型化が可能だそうだが、コストアップにつながるため、この製品では一般的なシリコンを使っているという。それでもアマゾンでの販売価格は12,000円と、ちょっと高価だ。

各社のPCに対応

 Dart本体にはDart端子と呼ばれる専用の2ピン端子が装備され、ここに付属のケーブルを接続する。ケーブルは両端がDartプラグになっていて、片側にはUSB Type-Aメス端子を装備し、5V/2.1Aを出力できるコブのようなパーツがくっついている。

 Dart端子には、自分が使うPCの電源端子に合致するプラグを装着して使う。製品には9種類のプラグが同梱され、Acer、ASUS、DELL、富士通、HP、Lenovo、NEC、東芝、VAIO、マウスコンピューターといった代表的なメーカー製PCに電源を供給することができる。

 また、同梱の9種類とは別に、2種類のプラグが用意されていて、別途連絡することで無償で入手できる。たとえば、HPの比較的新しい製品に使われているプラグは同梱品には含まれない。丸文では最初から11種類のプラグを同梱することも検討中だという。

 もう1つ大事なことは、基本的にDartが定格19.5Vであるという点だ。

 以前、この連載でCooler MasterのノートPC用次世代電源アダプタ「MasterWatt 65/90 NB」を紹介したときに、手元にあるPCの電源電圧を調べたが、各社、見事に異なっていた。ただ、値だけみれば、HPが19.5V、NECが20V、富士通が19Vなので、自己責任になるがまず大丈夫だろう。実際、問題なく電源を供給できている。

 16Vのパナソニックはいくらなんでも無理だと思ったが、試してみたらこれも問題がなさそうに見える。おそらく、レッツノート側がかなり許容の幅が広いのだと思われる。電圧が高すぎる場合には保護回路が働き入力が遮断されるように設計されているに違いないので、自己責任で試してみる分には大丈夫そうだ。ただし丸文では、きっぱりと「対応していない」としている。

 このくらい汎用的なアダプタが、プラグ、ケーブル、本体のみで小さなポーチに入るのなら、外出時のバッグに放り込んで常備しておくことができる。

 何よりも、その日の用事に応じて、併行して使っているどのPCを持ち出す場合にも、万が一のバッテリ切れに対応できるので安心だ。持ち出したPC用のものとは別のアダプタを持ち出してしまうというリスクも回避できる。だから安心してカバンに入れっぱなしにしておけるわけだ。

USB PD対応アダプタにも変身

 これだけでもずいぶん汎用的なACアダプタとして重宝するのだが、この製品をもっと汎用的にするためのオプションがある。それがDart-C/Type-Cケーブルだ。

 片側がDartプラグで本体に装着し、もう片側にはType-C端子が装備されているので、Type-C端子を持つ機器に電源を供給することができる。同梱ケーブルと同様に、USB Type-Aメス端子が装備されているので、一般的なUSB充電も可能だ。

 そして、このケーブルを使うことで、DartをUSB Power Delivery(PD)対応電源として利用できるのだ。ケーブル側にTI社のPDコントローラが内蔵され、20Vは3.25A、15V/12V/9V/5Vは3Aに対応する。つまり、ケーブルそのものがPD対応機器で、Dartは単にそこに19.5V 65Wを供給する汎用PD電源というわけだ。

 手元の測定器で計測するかぎり、Cold Socket、告知PODも仕様どおりと、正しくPD規格に対応しているようで、20V/3.25A対応ということから、3Aを超えているため、eMarkerも実装されていることが想像できる。

 個人的には来年(2018年)以降発売されるノートPCの多くはPD対応になっていくものと予想している。そうなれば、こうした製品はますます汎用的なものとして便利になっていく。きっと将来的にはDart端子を撤廃してType-C端子を装備し、本体内にPDコントローラを内蔵し汎用的なType-Cケーブルが使える製品が出てくることは間違いない。

 だが、現時点での使い勝手としてはDartと専用ケーブル、そしてオプションケーブルの組み合わせというのは現実的な解だといえる。ちなみに丸文によれば、オプションのDart-C/Type-Cケーブルは、年末の発売に向けて準備を進めているそうだ。

 実際に、発売前のケーブルを取材時に借用して使わせてもらったが、ケーブルがType-Cになるだけで、この製品の使い道が大きく拡がることを実感できる。

 PCはもちろんスマートフォンの急速充電にも使えるようになるからだ。これでまた1つ荷物を減らせるかもしれない。オプションについてもぜひ、早期の発売をかなえてほしいものだ。

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