ペパボ研究所 × 九州大学 情報基盤研究開発センター コンテナ型仮想化技術によるクラウドホスティングの共同研究開発を開始  ~より頑健で柔軟なホスティングサービスの実現を目指す~

 GMOインターネットグループのGMOペパボ株式会社(代表取締役社長:佐藤 健太郎 以下、GMOペパボ)で、インターネットに関する新技術の創造と実践に取り組む研究開発組織「ペパボ研究所」と、国立大学法人九州大学 情報基盤研究開発センター(センター長:谷口 倫一郎 以下、九州大学 情報基盤研究開発センター)は、2017年10月1日より、コンテナ型仮想化技術(※1)を基盤に用いたクラウドホスティングに関する共同研究開発を開始しました。
 両者は、大規模インフラ上にコンテナ型仮想化技術を用いたクラウドホスティング環境を構築し、高負荷下での実証実験等を行うことで、より頑健で柔軟なクラウドホスティング(※2)の実現に向けて取り組んでまいります。
(※1)ユーザーごとに独立したアプリケーション実行環境(=コンテナ)を、1つのOS上に複数構築することで、より少ないコンピューターリソースで仮想的な動作環境を実現する技術。
(※2)システムへの要求に応じてリソース量が自動的に最適化されるクラウドホスティング。
▲共同研究者(左から)小田、近藤、松本、笠原、岡村、嶋吉、金子 ▲共同研究者(左から)小田、近藤、松本、笠原、岡村、嶋吉、金子

【共同研究開発の背景】

 昨今では、法人・個人を問わず、Webサイトやアプリケーションを制作・公開する例が増えてきています。Webサイトやアプリケーションの運用においては、突発的なアクセスの急増や、事業・コンテンツの拡大ニーズに対して柔軟な対応が求められており、これにはサーバーやクラウド環境の整備や対策が欠かせません。
 しかし、レンタルサーバー(共用サーバー)は、運用の手軽さを特徴としているものの、突発的なアクセス集中が発生した際、これに対応するためのリソース拡大はサービス提供者しかできません。反対に専用サーバーやVPS・クラウドサービスは、利用者が自由にリソース増減を行うことができる一方で、サーバーの拡張作業や監視といった運用管理が継続的に発生するという課題がありました。
 GMOペパボで新技術の研究・開発に取り組む研究開発組織「ペパボ研究所」は、こうした課題を解決するべく、生物の細胞が持つ生命維持機能をヒントに、システムが自律的にリソースの制御を行う仕組みの研究に取り組んでいます。本研究のもと開発したコンテナ型仮想化技術は、レンタルサーバーの手軽さと、柔軟にリソースの増減ができるクラウドのような拡張性・自由度を兼ね備えたクラウドホスティングとして、レンタルサーバー「ロリポップ!」において試験提供中の「マネージドクラウド」プランの基盤技術に用いられています(※3)
 一方、九州大学 情報基盤研究開発センターは、ネットワーク基盤技術、サイバーセキュリティ、ならびに先端的計算機科学などの学際的な研究開発を推進しており、九州大学におけるICTを活用した教育・研究活動の高機能化・高能率化をはじめ、ネットワーク・セキュリティ、ホスティングサービス等のICTサービスの安定的な運用にその研究成果を還元しています。また、九州大学 サイバーセキュリティセンターは、大学が担うべきサイバーセキュリティ強化の教育・研究に取り組む全学組織です。本センターは、米国メリーランド大学ボルチモア校をはじめとする海外研究機関や、文部科学省の人材育成制度に基づいて国内の関連大学や福岡県警、企業と連携して人材育等の教育プログラムを開発しています。また、サイバーセキュリティ攻撃対策に資する先進的技術の研究を行っています。
 そこでこの度、ペパボ研究所と九州大学 情報基盤研究開発センターは、コンテナ型仮想化技術を用いて、より頑健で柔軟なクラウドホスティング環境を実現するべく、共同研究開発を開始いたしました。
(※3)2017年10月20日現在、クローズドα版を提供中。(https://mc.lolipop.jp/

【共同研究開発の概要】

 本共同研究開発では、大規模インフラ上にコンテナ型仮想化技術を基盤に用いたクラウドホスティングを、実運用に近い環境で構築し、擬似的に作り出した高負荷下での実証実験を行います。具体的には、極端な高負荷下での性能テストをはじめ、適切なリソースの増減テスト、利用可能なリソース量が利用者側の要求に満たない場合のリソーススケジューリングテスト、迷惑メール対策などのセキュリティ向上手法等の実証実験を行います。また、プロトタイプを利用者に提供して実証実験を行うことで、実運用に近い負荷での検証が可能となり、加えて利用者からのフィードバックをもとに改善を行うことで、より頑健で柔軟なシステムの開発を目指します。(共同研究期間は2018年3月末までを予定)

■期待される成果

 本共同研究開発を通じ、どのような負荷状況でもコンテナの起動や終了を高速に行うことができる環境を構築することで、これまで手動でシステムの再起動が必要だったセキュリティ更新や基盤ソフトウェアの入れ替え、高負荷時のリソース拡大やインフラの増強・移行等を自動的に行うことができるようになります。
 また、スパムメールなど大量のメール受信による高負荷状態を避けるための自動オフローディング技術や、コンテナ間での協調によりサーバーへの攻撃元を特定しフィルタリングするセキュリティ機構の開発も行います。
 研究開発した成果については、論文発表を行うほか、GMOペパボが提供する「ロリポップ!」の「マネージドクラウド」プランをはじめとするホスティングサービスに順次実装していく予定です。
【共同研究者紹介】
<ペパボ研究所>
松本 亮介 ペパボ研究所 主席研究員、シニア・プリンシパルエンジニア
本研究の代表者。京都大学博士(情報学)。mod_mruby、ngx_mruby、Trusterd HTTP/2 Web Serverの作者。大規模Webサービスのセキュリティ・リソース管理・運用技術・パフォーマンスや次世代HTTPプロトコルに関する研究を行っている。
小田 知央 ペパボ研究所 研究員、プリンシパルエンジニア
コンテナ型仮想化技術を基盤としたホスティングサービスの開発を行っている。Githubのユーザー情報を用いてLinuxのユーザーとその権限の管理を行うoctopassの作者。
近藤 宇智朗 ペパボ研究所 研究員、プリンシパルエンジニア
コンテナ型仮想化技術を基盤としたホスティングサービスの開発を行っている。RubyやDevOps、mrubyによるシステムプログラミングのレイヤーに興味を持ち、2016年にmruby製のLinuxコンテナエンジンHaconiwaをリリース。
<九州大学 情報基盤研究開発センター>
笠原 義晃 九州大学 情報基盤研究開発センター 助教
本研究の代表者。博士(工学)。安定した情報サービス運用のためのサーバー品質の監視・異常検知・品質改善・セキュリティ対策に関する研究を行っている。
岡村 耕二 九州大学 情報基盤研究開発センター 教授
博士(工学)。次世代インターネット技術、サイバーセキュリティ、省電力指向ネットワークマネジメントに関する研究を行っている。
嶋吉 隆夫 九州大学 情報基盤研究開発センター 准教授
京都大学博士(情報学)。実用ソフトウェアシステムの設計・構築に関する研究や計算機シミュレーションに関する研究を行っている。
<九州大学 サイバーセキュリティセンター>
金子 晃介 九州大学 サイバーセキュリティセンター 准教授
博士(情報科学)。ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークを含むIoTセキュティに関する研究や学習データ分析に基づくセキュリティ教育の効果測定に関する研究などを行っている。

【ペパボ研究所について】

 ペパボ研究所は、GMOペパボがこれまで様々なサービスの開発・提供で培ってきたノウハウを活用し、インターネットの可能性を広げる「なめらかなシステム(※4)」の実現に向けた新技術を研究・開発する組織です。インターネット基盤技術や機械学習・AIを主な研究テーマとし、研究開発から実装、その後の効果測定までを一貫して行い、「事業を差別化できる技術」を生み出す研究開発と情報の発信を行っています。
(※4)生物の細胞が持つ生命維持機能をインターネットサービスに応用した新しいシステムの構想で、AI(人工知能)により、システム自体がサービスを自律制御し、異常が起きる前に自動的に再構築する仕組み。

【九州大学 情報基盤研究開発センターについて】

 九州大学 情報基盤研究開発センターは、情報通信の最新技術を高度に活用するための基本技術を研究開発する組織です。ネットワークとコンピューターが融合された環境における教育・研究活動の高機能化・高能率化を実現するためのネットワーク基盤技術及び次世代インターネット技術の研究開発や、計算科学の応用分野と計算機科学の学際的な研究開発を推進しています。そしてその成果が九州大学のICTを利用した教育研究活動に還元されています。

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