調査/コンサルティング会社のアイ・ティ・アール(ITR)は2011年4月27日、主に関東地区に本拠地を置く企業に向けた緊急提言「電力危機を乗り切るデータセンター対策」を発表した。

 提言内容の主旨は、夏に電力危機が起こる可能性は高いという想定のもとで、自社システムの準備をすべきというもの。「IT部門は非常事態が続いていることを認識し、危機意識をもってデータセンター対策を立案し、早期に実行に移すことが求められる」と述べる。

 以下、提言の前半部における主要な内容を要約して紹介する。ITRは提言全文を自社WEBサイトで公開している(全文はこちら)。

■4月上旬に東京電力と政府は、計画停電を原則実施せず、大口需要家に対する節電目標を緩和する、という方針を発表した。ただ、節電規制が解除されたわけではない。また、具体策も不明なまま。IT部門としては、決して楽観視はできない。政府から信頼できる電力供給計画が発表されるまでは、計画停電が発動された場合のシナリオを立案しておく必要がある。

■特に中堅・中小企業のIT部門では、オフィスビルの一角にサーバールームを設置していることも多い。自家発電機を備えていなければ、稼働停止を余儀なくされる。そのため、安定した電力供給が期待できる場所にサーバーを待避(移設)するか、その場所とのサーバーの二重化を検討するべき。あるいは計画停止を前提とした運用のシナリオを練る必要がある。これらのためにIT部門はまず、優先して対処すべきシステムの特定を急がねばならない。

■電力危機が発生しうる夏期までの時間は限られている。先に述べたような設備にぜい弱性を抱えているIT部門は、暫定的な施策しか実行できないことを意識して、必要なことをすべき。自家発電機を備えるなど強固な設備を持つIT部門も、電力の需要予測と発電機の稼働検証を実施したうえで、安定稼働に備えたい。

■計画停電が発生した際は、システムのシャットダウンから再起動・動作確認に至るまで、4時間程度のシステム停止が余儀なくされる。復帰までの手続きを明確化し、正常な再開ができるように準備しておくことが、最低限求められる。

■商用データセンターは、自家発電機を備え、燃料会社との優先契約を持つ。計画停電や、突発的な停電に対応できるような対策がなされている。そのため、IT部門にとっては、商用データセンターにサーバーを預けることは最も有効な対策の一つ。西日本地域に利便性の高いデータセンターが確保できるのであれば、それも推奨したい。