世界の2大広告主、P&Gとユニリーバがデジタル広告費を削減

P&Gの最高ブランド責任者マーク・プリチャード氏

P&Gの最高ブランド責任者(CBO)マーク・プリチャード氏。前年比でP&Gが41%、ユニリーバが59%のデジタル広告費を削減している。

Neil Hall/Reuters

プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)とユニリーバはここ数年、デジタルメディアに対して、不透明な状況が改善されるまでデジタル広告費の削減も辞さないという強い姿勢で、透明性の向上を求めている。

そして今、世界の2大広告主は、その言葉通りにデジタル広告への支出を削減しているようだ。

ニューヨークの広告調査会社メディアレーダー(MediaRadar)の推計によると、前年比でP&Gが41%、ユニリーバが59%のデジタル広告費を削減している。

出稿サイト数も減っている。1~5月の出稿サイト数は、P&Gが昨年の1459サイトから今年は978サイトと33%減。一方、ユニリーバは606サイトから540サイトで11%減となっている。両社は、デジタル広告費の詳細を公表していない。

さらに昨年から今年にかけてP&Gが継続して出稿しているサイトは、Yahoo NewsやBuzzFeed、ロイターなど712サイトあったが、このうち560サイトで支出が削減され、メディアレーダーによると、支出は前年に比べ79%減となっている。同じくユニリーバは、NBCニュースやタイムの健康サイト「TIME Health」など268サイトに継続して出稿しているが、このうち155サイトで支出を削減、前年比57%減となっている。

「広告主は代理店、メディア、アドテク企業に対して、より一層の透明性を求めている。FacebookやYouTubeに対しても同様だ。この要求は、ここ数カ月でさらに大きくなっている。当社のデータによると、大手広告主の一部に、デジタルメディアへの出稿を減らし、デジタル広告費を削減する動きが出ている」とメディアレーダーの共同創業者兼CEOトッド・クライゼルマン(Todd Krizelman)氏は語った。

ユニリーバのCMO(最高マーケティング責任者)キース・ウィード(Keith Weed)氏は、世界的な広告イベント「カンヌライオンズ(Cannes Lions)」において、ブランドは広告のバイイングの自動化に、より注意を払うべきだと繰り返した。「我々は、デジタル広告のサプライチェーンの不透明性を解消する必要がある」と、ウォール・ストリート・ジャーナルが主催したシンポジウムにパネラーとして登壇し、語った。

P&GのCBO(最高ブランド責任者)マーク・プリチャード(Marc Pritchard)氏も、一貫してデジタル広告の不透明さと代理店との契約の複雑さに対する懸念を示した。「P&Gは、我々が納得できるところに予算を投入する」と同氏は、3月に行われた全米広告主協会の会議で述べている。

広告予算はテレビからデジタルへと急速に移行している。調査会社イーマーケター(eMarketer)によると、デジタル広告費は現在、年間720億ドル(約8兆円)に上る。透明化に向けて規制がさらに強化されることも予想されるが、P&Gやユニリーバのような幅広いブランドを展開する大手企業は、デジタル広告によるターゲティング広告よりも、むしろマス広告に回帰するかもしれないと、広告代理店メディアアソシエイツ(Mediassociates)のベン・クンツ(Ben Kunz)氏は語った。

「最近のデジタル広告の透明性やクオリティに関する問題を考えると、マスマーケットを対象に日用品を販売しているブランドは、今もまだ成果を上げているマス広告への回帰を決断するかもしれない。P&Gやユニリーバのターゲットとなる層の商品に対するニーズや価値観は比較的『同質』で、テレビCMのような非デジタル広告のマスアプローチが十分に効果的だからだ」

[原文:Two of the world’s biggest advertisers are cutting back on their digital ad spend

(翻訳者:Tomoko A.)

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