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  • 2017/06/06 掲載

熊本の未来会議室が「100回ルールを変えた」理由とその成果

連載:地方創生を支えるコワーキングスペースガイド

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2014年に熊本に誕生したコワーキングスペース「未来会議室」。その立ち上げ時から運営に携わり、広報活動や熊本におけるコワーキングの推進、人と人のマッチングに日々励んでいる工藤 英揮さんに、熊本でビジネスに取り組む思いのたけを聞きました。2016年4月に熊本を襲った大地震では、公私ともに深刻な被害を受けたそうですが、その中から得られたものもあったといいます。

54 代表取締役社長 山口 豪志

54 代表取締役社長 山口 豪志

スタディスト アドバイザー、情報工場 メディア開発部プロデューサー、デフタ・キャピタル アクセラレーター 兼 横浜ジェネラルマネージャ。
2006年から日本最大料理レシピサイト「クックパッド」を運営するクックパッドにて、広告事業・マーケティング事業の創成期より参加、2009年の同社IPOにトップセールスにて貢献。大手食品・飲料メーカ、流通・商社、広告代理店を担当し、バリューチェーン全体を幅広くカバーした事業創造を行う。2012年より3人目の社員としてランサーズに参画し、ビジネス開発部部長として大手企業との事業提携・協業、広告企画の販売開始などを実行。その後、社長室広報チームリーダーにて、クラウドソーシング業界の普及啓もうに47都道府県フリーランス交流会の実施、中小企業庁主催の各県のセミナー登壇など、実績多数。
2015年1月デフタパートナーズのアクセラレーターとして、インキュベーション施設である横浜グローバルステーションの管理運営とベンチャー企業向けに育成プログラムを提供するなど、活動領域を拡げる。
2015年5月に54を創業。常時約30社のスタートアップ企業のアドバイザーとして事業戦略策定、BtoBアライアンス支援、広報部門立ち上げ等のコンサルティングを行う。

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未来会議室の様子。オープンかつ広々とした空間が広がる

熊本の経済を良くしたい、という自分の原点

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未来会議室スタッフ 工藤 英揮さん
 私は1988年に熊本に生まれ、県外の大学で経済を学びました。地域経済を良くしたいと思って、その方法を知りたかったのです。経済書はもちろん、経済や生き方、哲学の書籍を読み漁り、会いたいと思った人には積極的に会いに行くようにしていました。

 そんな中で東日本大震災が起こり、実際に現地に足を運んだ時に大きな衝撃を受けました。地元や身近な人への思いや危機感のようなものが芽生えたからです。そこで、卒業後は地元の熊本市役所の臨時職員を経験しました。民間よりも地域経済に大きなインパクトを与えることができるのではないか、と思ったからです。熊本は大企業があまりないですし、経済を良くするために役所ができることがきっとあるはずだと。特に起業する人の支援でできることがあると思ったのです。

 しかし実際に働き出してみると、行政というのはなかなか速度を持って起業する人を支援することが難しいと感じました。前例がないことをやるのが、どうしても難しいのです。

 その課題に行き詰まって、行政で起業支援することの限界を感じていたときに、コワーキングスペース「未来会議室」の立ち上げプロジェクトの話を聞き、そこに参画することを決めました。

 プロジェクトを始めたメンバーたちに共通して、「衰退する熊本の経済をよくするには、民間で仕掛けていくほかない」という思いがありました。コワーキングスペースは、その課題を解決するひとつのツールになりえると思ったのです。

 自分たちにノウハウがあまりない中で、ワーキングコミュニティ「co-ba」やプロジェクトメンバーの方々と一緒に、開放感ある空間になるよう、設計から工事に至るまで進めていきました。そして、2014年11月、未来会議室はオープンを迎えました。

ルールの変更は100回、改善の早さで問題を乗り越える

 オープンしてみて大変だったこと。それは、人が来ないということ、そして、来てくださっても皆さん使い方がなかなかわからないということでした。そもそも、コワーキングスペースというものがどういうもので、どう使うと良いか、ということが知られていないのです。

 そこで、私たちはまずとにかく、熊本の皆さんに知っていただくことから始めることにしました。地域の大学や専門学校、行政機関などにアポをとって、足を運び、未来会議室を知っていただく活動を繰り返したわけです。特に市役所はもともと勤めていましたので、やりたいことの提案なども一緒に持っていきました。

 しかし、色々なところでお話をさせていただいても、なかなかリアクションの手応えが得られないのです。説明は聞いてくれるのですが、そこから先に来ていただくことまで至らないのです。それでも私たちは、多くの会社を回り続けて、伝えることを続けました。

 それを続けていると、最初は0人だったお客さんが、5人、10人と少しずつ増えていくようになりました。来ていただけるようになったのはうれしかったのですが、今度はそうなると、自分たちがオープンのときに決めた制度やルールの中に、利用者さんにとって分かりにくいもの、使いにくいものがあることが分かってきました。

 具体的には、最初は完全会員制として始めたのですが、それだと皆さん使いにくいという声があり、議論の末、会員・非会員関係なく、ドロップインできるようにルールを改めました。

 また、貸し会議室も、非会員でも利用できるようにしました。ルールの変更は、いままでに100回くらいやっていると思います。必要であれば、1週間単位でルールを変えています。

 地域の皆さんにとって分かりやすくなければ、この未来会議室を作って、運営している意味がなくなってしまいます。この迅速なルール変更を支えているのは、コアの運営メンバーが少人数であることも大きいです。課題を見つけたら、基本的には即決で変更していきます。

経営の観点、場作りの観点で大切にすること

 私たちが大切にしていることは、経営の観点と、場作りの観点、それをつなげて考え、実行することです。

 経営の観点でいうと最初からずっと収益性を重視して、しっかりと数字を追い続けています。継続しなければ本末転倒ですから。当たり前ですが、売上が上がらないと、自分たちの人件費も出せません。

 では、どうやって売上を上げるのかというと、何もしなければ何も変わらないわけで、認知していただき、来ていただき、使っていただく、それしかないわけです。

 その中では利用者さんの声を取り入れることが大事だと思っています。たとえば誰でもドロップイン利用できるようにしたことは、利用者さんの声を取り入れた変更であり、それが利用者さんの手間を減らすことになって、結果的に売上増加につながりました。

 また、未来会議室でイベント開催をすること、そして自分たちが外部のイベントに足を運んでつながりを作ることも大事にしています。こういう取り組みは、決してすぐ売上につながるものではありませんが、長期的にはすごく価値があると思っています。そもそも、会ったことない人の話というのは聞いていただけないですから。

 場作りとしては、私たち運営メンバーが会員さんとコミュニケーションを取ること、そして会員さん同士の交流が生まれるような取り組みに力を入れています。未来会議室という場が、コミュニティであることを心がけているのです。

 あくまできっかけづくりがメインですが、コミュニケーションが嫌だという方以外には、積極的にお声がけをしています。利用者さん同士の交流があるからこそコワーキングスペースとして、「ただの場所貸し」を超えた価値が生まれると思います。

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EVENT BOX(セミナールーム)で開かれた
「事業スタートカンファレンス」の様子

 経営面で嬉しかったのは目に見えて業績が伸びてきたことですね。最初の頃は本当に大変で、とにかく疲れるのに数字が全然伸びませんでした。といいますか、そういう時期が長かったのです。

 また、場作りの観点で嬉しいことは、人と人との紹介、マッチングのプロデュースがうまくいったときです。人には好き嫌い、相性がありますから、こちらが良いと思って会っていただいても、合うこともあれば合わないこともあります。でも、それがうまくいくときには、コワーキングスペースとして価値があることができた、という存在意義を感じられるのです。

【次ページ】地震で痛感、コミュニティの大事さ

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