米海軍特殊部隊が実践する「部下を不安にさせないリーダーのあり方」

プレゼンテーション中のリーフ・バビン氏

あなたは問題にうまく対処できる。かつてアメリカ海軍ネイビー・シールズの一部隊の司令官だったリーフ・バビン氏は、そう勇気づけた。

Joe Avella/Business Insider

筆者は最近、アメリカ海軍特殊部隊ネイビー・シールズの元司令官2人から、リーダーシップについて、丸一日を費やして学ぶチャンスを得た。その2人とは、ジョッコ・ウィリンク(Jocko Willink)氏とリーフ・バビン(Leif Babin)氏だ。

ウィリンク氏が率いていたのは、ネイビー・シールズ「チーム3」の任務部隊「ブルーザー」。イラク戦争で最も活躍した特殊作戦部隊の1つだ。またバビン氏は同じ部隊の副官として、直属の部下である小隊長2人を監督していた。ウィリンク氏とバビン氏は2010年にリーダーシップ・コンサルティング会社「Echelon Front」を設立し、2015年に出版した2人の共著『Extreme Ownership』はニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに入った。ウィリンク氏によるポッドキャストは、アメリカで非常に大きな人気を得ている。

筆者はニューヨークで2日間開催されるカンファレンス「Muster」の初日に最初から最後まで参加した。2人の著作を読んだことがあり、またこれまでに何度か2人にインタビューを行ったこともあるのだが、それでも職場で役に立ちそうな実践的な見識を得ることができた。だが、2人が提唱する「エキストリーム・オーナーシップ」の精神には高い自制心と責任感が求められることは分かったものの、その精神的な力が司令官と直属の部下、またはマネジャーと従業員の関係を超えてどう発揮されるべきだと2人が考えているかについてはよく分からずにいた。

午後の質疑応答で、ウィリンク氏とバビン氏に次のように質問した。自分が部下や管理職の立場にあるとき、上司の上司や会社のトップを信じられなくなってしまったら、2人の提唱するリーダーシップの原則をどのように行動に移せばいいだろうか? と。例えば、ビジネスニュースでは大企業のスキャンダルや失敗がよく報じられるが、そんなとき、問題が起きている上層部の下で、自身の目標や懸念を抱く従業員たちはどうすればいいのだろうか。ウィリンク氏とバビン氏がネイビー・シールズ時代にそんな状況に直面したことがあったかどうか、私は知りたかったのだ。

2人が提示してくれた答えは、以下の2つ。これらを状況に応じて使い分けるか、または同時に実践するとよいという。

上司を前線に招く

ジョッコ・ウィリンク(Jocko Willink)氏

講演するジョッコ・ウィリンク氏

Joe Avella/Business Insider

バビン氏は、上記の質問で想定される状況を、過去の自分の体験から理解できたと明かした。そして、「そういう状況になったときは、いやだと思われそうなことを率先してやるようにしていた」と。

バビン氏によると、戦場と職場の両方に共通してみられる典型的なマインドセットは、「上司は遠ざけておこう。細かいことまで口出しされたくないし、自分のやり方でやらせてほしい」というものだ。このマインドセットには、上司と意見が合わない場合、上司が関わってくると状況は悪化してしまうだろうという思い込みがある。だが、ウィリンク氏とバビン氏が率いていた任務部隊「ブルーザー」では、強いて真逆のアプローチを取っていたというのだ。

「むしろ上司の口出しを進んで受け入れ、上司を前線に招いて、そこで実際に何が起きているのか見せるべきだ。決断のチャンスを上司に与えるべきだ。自分が意固地になって正しい判断力を失い、『あいつらは分かっていない』と考えるようになる前に」とバビン氏は述べた。

また、自分の所属会社や所属部署が進もうとしている方向性に同意できない場合、「指揮系統に意見を伝える」努力をすべきだ。そして上の立場にいる人たちに自分の経験を伝えることで、自分の懸念を知らせるべきだ ―― バビン氏はそう語った。

上層部とチームの緩衝材となる

問題が上層部で起きているときは、自分の無力さを痛感する瞬間があるものだ。だがこのようなときこそチームのために強いリーダーでいなければならない、とウィリンク氏は説いた。

ウィリンク氏によると、彼がネイビー・シールズで任務に就いていたころ、個別のミッションに適用される戦略についてはもちろん、イラク戦争全体の方向性を巡る議論が、ネイビー・シールズ内部ばかりでなく全部隊で絶えず行われていたという。「上層部でたくさんのいざこざが生じていた。そして上に行けば行くほど、いざこざは大きくなっていった」とウィリンク氏は述べた。

「そんな最悪の状況で、良いリーダーとしてすべき最も大事なことは何か。それは、あちら側の不条理とこちら側のやり方の間に進んで入り、しっかりと緩衝材の役割を果たすことだ」

つまり、チームがミッションに集中できるようにすること。そして、上層部の混乱に注意を払いつつも、自分たちの仕事ぶりに悪影響が出ないようにすること。ウィリンク氏は、ネイビー・シールズのチーム内部や政府内で何が起きていようと関係なく、内部のいざこざが部下に影響を及ぼさないようにしていたと話した。

「それで部下はメッセージを正しく受け止められるようになる」とウィリンク氏は語った。

[原文:I asked Navy SEALs what to do when things get chaotic at work, and they said the same advice works on the battlefield and in business

(翻訳:まいるす・ゑびす)

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