編集部に米軍から電話! Wi-Fiで建物内部を透視する新技術に関心

Wi-Fiを使った3D透視技術

シャリングハウゼン氏は、Wi-Fiを利用した3D透視技術についての詳細情報を求めていた。軍事利用を視野に入れているのかもしれない。

YouTube/AmpliFi

先日、Wi-Fiを利用して、壁の向こう側の人や物の3Dイメージを作成する新技術を取り上げたところ、米軍からBusiness Insider(米国)の編集部に電話がかかってきた。

電話の主ブレット・シャリングハウゼン(Brett Scharringhausen)氏は、アメリカ中央軍(United States Central Command:CENTCOM)に所属する技術調査員だ。アメリカ中央軍は、中東全域、北アフリカ、アジアの一部など20カ国に展開されている部隊を指揮下においている。

シャリングハウゼン氏は、Wi-Fiを利用した3D透視技術についての詳細情報を求めていた。軍事利用を視野に入れているのかもしれない。我々は、この技術に関する研究論文が専門誌『Physical Review Letters』に掲載されていることを伝えた。

「ほぼ一年中、私は軍に役立つ新技術を探している」と同氏は語った。

ただ同氏によると、CIA、FBI、警察などの組織もまた「壁の向こう側を見たがって」おり、最も有望な技術は組織の壁を超えて共有されるという。

「良い技術を見つけたら、我々は『彼ら』とも共有する」と同氏は言う。「彼ら」とは、同氏の上司、軍(アメリカ陸海空軍、海兵隊、沿岸警備隊)、さらに国土安全保障省、国務省、CIA、FBI、NSA、その他の関連する連邦機関のことだ。

複数の政府機関が同じ技術を求めているなら、それは好都合だ。大量生産による経済効果が生まれ、重複を避けて無駄なく、新技術をより速やかに軍や警察に提供することができるからだ、税金の節約にもつながると同氏は語った。

Wi-Fiを利用した透視に必要な機材

Wi-Fiを利用した透視に必要な機材

Philip Holls and Friedemann Reinhard/Physical Review Letters (CC BY 3.0)

アメリカ中央軍などの軍機関や治安当局が3D透視技術を求める理由は、すぐに想像できる。例えば人質事件、軍の秘密作戦、警察の張り込みなどの危険な状況では、壁の向こう側の映像を見ることができるかどうかが生死を分ける。犯罪者を取り逃がしてしまうかもしれない。

ただし、軍から問い合わせのあったWi-Fi透視技術は、対象の大まかな外形しか捉えられない。人の顔などの詳細を見ることはできない。まだ政府機関によって使用されることはないだろう。

まず、壁の向こう側の人や物の3D画像を即座に作成する技術はまだ開発の初期段階にあり、実用化までに長い年月と多額の費用がかかるだろう。

また、新技術は導入までにいくつもの高いハードルを乗り越えなければならない。例えば、他の機器や技術と重複していてはダメだ。仮に従来の機器やシステムに勝るものであったとしても、完全に取って代わるようなものでなければ、「評価は下がり、ほとんどの場合、予算が下りない」と同氏は述べた。

しかし同氏が明言したわけではないが、技術調査員には、10、20年先を見据えて「軍や政府機関がまだその必要性に気付いていない、革新的な技術を探し出すこと」も求められているようだ。こうした特別なプロジェクトには、今はまだ実用段階になくても、将来性が認められる場合、予算が下りる可能性があると同氏。

「期待通りに行かないからといって、必ずしも失敗ではない。物理学的な問題かもしれないし、まだ科学が解決できていないのかもしれない」

この新技術を開発したフィリップ・ホル(Philipp Holl)氏は、まだ「アメリカ中央軍に所属する人物からの連絡はない」と我々に語った。ホル氏は23歳、ミュンヘン工科大学の大学生で、同大学の教員フリードマン・ラインハルト氏(Friedemann Reinhard)と一緒に研究した。

Wi-Fiを利用した3D透視技術についての詳細記事はこちら(英語)

動画では、この技術の仕組みが解説されている。

source:YouTube/AmpliFi

[原文:The US government is eyeing a technology that can 3D-photograph people through walls using Wi-Fi

(翻訳:忍足亜輝)

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