規則を守れば高成績は間違いない。
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高校の卒業式で総代を務めた学生たちのその後を追ったボストン大学の研究者カレン・アーノルド(Karen Arnold)氏によると、彼らのほとんどが実際に成功しているということが分かった。ほぼ全員が、成績平均点(GPA)3.6(0から4の5段階評価)以上で大学を卒業し、ほとんどが大学院に進学し学位を取得、約半数が一流の専門職に就いた。
ここまでは、想像に難くない。
エリック・バーカー(Eric Barker)氏が新刊『Barking Up the Wrong Tree』の中でこの調査について言及している。「高校で1番だったという人の果たして何人が、世界を変えられるというのか。何人が世界を動かせる? 何人が世界に影響を与えられる? 答えは簡単、ゼロだ」
バーカー氏が言いたいのは、優秀な学生は一般的に成功するだろうが、夢のような大成功を収めるような者はほとんどいない、ということだ。
むしろ、成績は良くない、または、学校はあまり楽しくない、という子どもたちの方が、大成功する傾向にある。ある調査では、700人の億万長者のGPAの平均は2.9だった。
これには2つの理由があるとバーカー氏は言う。
1. 「学校では、言われたことをきちんとできる学生が評価されるが、人生では、物事を揺るがす人が評価される」
アーノルド氏はバーカー氏に対し「確かに、大人は指示や秩序に前向きに従う者を評価する」と言っている。
つまり、総代の生徒は、教師が望むことを察し、実行していたに過ぎない。
一方、世界で最も影響力のある思想家や指導者たちは、政治的または科学的問題に対し、常に常識を覆すような解決策を打ち出してきた。既存の、効果もほどほどという策で有名になった者はいない。
ニューヨーク・オフィスを訪れたバーカー氏はBusiness Insiderに対し、「学校の規則はとてもわかりやすいが、人生のルールはそうではない。学校という閉鎖的な組織を離れたら、ある程度ルールにとらわれずに行動する者が有利だ」と語った。
2. 「学校では万能型が評価されるが、実社会では情熱と専門性が評価される」
勉強を楽しむ生徒は学校生活で苦労しがちとの研究結果もある。
Flickr / Vancouver Film School
高校では、どんなに歴史が好きでも、ヨーロッパのルネッサンス時代だけを勉強するわけにはいかない。適当なところで切り上げて、数学の宿題にも取りかからなければならない、とバーカー氏。
しかし一度社会に出てしまえば、ある特定の分野で優れていることが重要で、それとは関係のない知識やスキルはさほど問われない。
衝撃的なことに、アーノルド氏の研究では、本当に勉強が好きで知的な学生ほど、高校では苦労する傾向にあるということがわかった。好きなことを掘り下げることができない教育システムを窮屈に感じるのだという。
「卒業生総代の生徒は、その後もその教育システムを支持する人々と働く道を選ぶことが多い。彼らもシステムの一部になるのだ。システムを変えることもなければ、転覆させることもない」とバーカー氏はまとめた。
もちろん、総代だった者が絶対に大成功できないと言っているわけではない。しかし、覚えておかなければならないのは、単に規則を守っていても高校時代のような成功を収めることはできないということだ。リスクを負う、反旗を翻すのは大変なことだが、それこそがさらなる成功へと導いてくれるのだ。
[原文:Why valedictorians rarely become rich and famous — and the average millionaire's college GPA was 2.9]
(翻訳:Ito Yasuko)