富士通は2017年5月16日、コールセンターで受けた問い合わせに自動応答するチャットボットサービスを2017年度第2四半期(7~9月)に発売すると発表した。顧客からチャットで問い合わせが入ると、人工知能(AI)が自動で回答する。同社のAI「Zinrai」で対話の流れを学習することで自然に対話できるという。

富士通の開発した業務向けチャットボットサービスの画面例
富士通の開発した業務向けチャットボットサービスの画面例
(出所:富士通)
[画像のクリックで拡大表示]

 新サービスの名称は「ODMA デジタルエージェント for コールセンター」。ユーザー企業が蓄積したFAQなどをZinraiで学習し、対話履歴から対話の流れ(シナリオ)を理解する。シナリオを学習する技術は富士通研究所が開発した。

 顧客の問い合わせに対して、FAQデータベースを検索して該当しそうな回答文を候補として表示する。複数の回答文を選んだ場合は、回答に該当する確率が高いと判断した順に回答文を並べる。曖昧な質問や表現の問い合わせを自動で聞き返す機能を備え、顧客の質問を絞り込んで的確な回答文を選ぶ精度を高める。回答文の内容から回答のマナーや話法などのノウハウも学習するため、顧客がストレスを感じづらくなるという。AIが回答できない難しい問い合わせは、人のオペレータが引き継ぐ。

「ODMA デジタルエージェント for コールセンター」のシステム構成
「ODMA デジタルエージェント for コールセンター」のシステム構成
(出所:富士通)
[画像のクリックで拡大表示]

 富士通の実証によれば、AIが選んだ回答文候補のうち、上位5位以内に正解が含まれていた確率は80%以上だった。まず同グループでPCサポート業務を担当する富士通クライアントコンピューティングに導入する。2020年度末までに250社への販売を目指す。富士通のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5 Zinraiプラットフォームサービス」のAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を経由する形でも新サービスを提供する。

 富士通デジタルサービス部門AIサービス事業本部担当の原裕貴執行役員は、「現在、コールセンターの対応や業務の効率化といった用途でAIの引き合いが強い。導入しやすく成果が出やすいためだ」と期待を語った。「海外勢に比べて顧客に近い立場でサービスを提供できる」と、導入支援やシステム構築、稼働後の運用サポートといったサービスを提供できる体制を協調した。

富士通の原裕貴 執行役員
富士通の原裕貴 執行役員
[画像のクリックで拡大表示]