積水化学工業の調査研究機関である住環境研究所は2017年5月16日、高齢者の生活の場である自宅や介護現場におけるコミュニケーションロボットの実証実験を5月17日から開始すると発表した。コミュニケーションロボットで高齢者の会話を促進させることで、生活の質全般の向上や効果を確認し「生涯健康脳住宅」を具現化させるための基礎資料とする。期間は10月までの6カ月間(うちロボット使用は3カ月間。それ以外はデータ解析などを実施)。

実証実験のシステム構成
実証実験のシステム構成
(出所:住環境研究所)
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 「生涯健康脳」とは、東北大学・瀧靖之教授が提唱する概念で、脳の活性化や機能維持に重要な4項目「コミュニケーション」「食事(調理)」「運動」「睡眠」(同社では「話食動眠」と呼称)から健康な生活をより長期化させるという考え方。同社は、2016年8月に「生涯健康脳住宅研究所」を開設し、東北大学と連携して脳の育成、活性と住まいや暮らし方の関係性について調査、研究を進めている。

 今回の実証実験では、ヴイストンのロボットプラットフォーム「Sota(ソータ)」をベースに、NTTデータが開発した高齢者向けコミュニケーションロボットを、75歳以上の戸建居住者や、同社100%出資会社であるセキスイオアシスが運営するデイサービス施設、サービス付き高齢者住宅に導入し、「会話」をきっかけとしたQOL(Quality of Life)の向上を検証する。

 具体的な検証項目は、(1)高齢者の会話促進とその増加の有無、(2)生活状況(食欲、運動(活動量)、睡眠、意欲)の改善の有無、(3)コミュニケーションロボットの受容性。今回の実証実験で会話が促進されることで、食事が美味しくなり、活動的になり、よく眠れるようになり、一巡して更に会話が増えるといった生活の好循環を作り出し、高齢者の生活全般の改善に寄与することが期待される。

 NTTデータが開発したコミュニケーションロボットは、NTT研究所のAI技術「corevo」の関連技術を実装し、音声認識、対話制御、音声合成の各機能を備える「クラウドロボティクス基盤」をインターネット接続することで利用する。高齢者が楽しめる会話シナリオを開発し、約3000通りのフレーズを使い分けて会話を促す。「水分を補給しましょう」など日々の活動を促すフレーズも含まれる。

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