日本ロック界に君臨する女性5人組バンド「SHOW‐YA」のヴォーカリスト、寺田恵子姐さんが人生相談に乗ってくれた!

ここは東京・神田あたりの路地裏にある、隠れ家的なバー。ウイスキーのボトルが並ぶカウンターの中には、ゴールド&ピンクのロングヘア、胸元に赤い薔薇のタトゥーが入ったロックな姐(ねえ)さんが…。

そう、代表曲「限界LOVERS」などで日本ロック界に君臨する女性5人組バンド「SHOW‐YA」のヴォーカリスト、寺田恵子姐さんである!

メジャーデビューから32年、酸いも甘いも噛み分けた姐さんが今回特別に、悩める男女の「人生相談」に乗ってくれた。

前回記事「再結成するために5年間は謝り続けようと…」では、ある相談をきっかけにSHOW‐YA再結成のエピソードが明かされたが、この最終回では姐さんの私生活や酒豪ぶりまでも赤裸々に…!?

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#10 築地市場移転問題や森友学園問題で、「忖度(そんたく)」が日本の悪い慣習のように言われていますが、ぼくは仕事で忖度しまくっています。忖度ってそんなに悪いことですか? 姐さんも忖度することってあるんですか?(41歳・男性・編集者)

寺田 忖度なんて、最近初めて聞いた言葉だよね(笑)。私も、忖度することはあるんじゃないかな。相手の気持ちを汲み取って、先回りして動くことはある。ただ! 人の金で忖度すんなよって思う。だって森友の場合は国有地でしょ。税金で免除してあげようとか、それは違うだろって思うよね。

―会社や人間関係での忖度とは次元が違いますよね。

寺田 違うよね。子供たちの未来がかかってたりするのに、大人の忖度で振り回すなよと思う。

―ところで、姐さんって結構ニュースをチェックしてるんですか?

寺田 ニュース大好きだよ。朝からずっと観てるよ。今日は午前4時から『暴れん坊将軍』を観て、その後ニュース観てました(笑)。

―早起き!

寺田 いや、今朝はその後寝たんだけど、その逆のパターンもある。睡眠時間はあまり多くないので。

―寝なくても大丈夫な人ですか?

寺田 目が腫れるから早く寝なきゃって思うんだけど、ちびちび飲みながら朝のニュースを観て寝るっていう日もあるし、今日は早く寝たいっていう時は、濃いめのヤツをカッと飲んで…。

―カッコいい!

寺田 で、寝るんだけど、朝4時起きみたいな仕事があったりすると、12時前に一生懸命酒飲んで寝るんだけど、1時とか2時に目が覚めちゃうんだよね(笑)。

―ハッハッハッ!

寺田 とにかく、ニュースはよく観てるよ。いつも観てる番組が観られない時は、スカパーでニュースチャンネルをつけたりとか。誰がどんな発言するんだろうとか気になるし。コメンテーターがおかしな発言をすると、TVに向かって「何言ってんだコイツ!」とか呟(つぶや)いたり。このチャンネルにくるんじゃねえ!とか思ったりする時もあります(笑)。

―姐さんもコメンテーターできるんじゃないですか?

寺田 え? でもバカです、私(笑)。観るのは好きだけど。TVに向かって文句言ってるのが好きなんで。お笑いもクイズ番組も好きでよく録画して観てるし、クイズ番組は自分が賢くなろうと思って一生懸命観るんだけど、覚えられないんだよ(笑)。あとは、NHKの『ドキュメント72時間』。

―あれは面白いですよね!

寺田 あとは『プロフェッショナル仕事の流儀』とか『アスリートの魂』とかね。大体、夜中はNHKをずーっと見て、泣いてます(笑)。

―ここでもまた泣く(笑)。

寺田 昨日はNHKで、長崎の佐世保で91歳のおばあちゃんが食堂やってるっていうドキュメンタリーを観ました。深夜、おばあちゃんがお料理作って出してるんだよ。そのおばあちゃん、結婚するタイミングを逃して独身なの。で、独り暮らしなの。すげえなって思って。会いに行きたいなって。おばあちゃんが生きているうちにご飯食べに行こうって思うくらい、感動した。なんか、お友達になれるんじゃないかって(笑)。

「貧乏をバネにしてのし上がってやろうと心に決めた」

食パンのミミをかじって空腹を満たしていた貧乏な時代もあったという

#11 日本のプロ野球のファンです。大谷翔平もいずれメジャーに行ってしまうのでしょうけど、なぜみんなメジャーを目指すのか。WBCで日本の野球はアメリカに劣らないことが証明されているじゃないですか。(17歳・男性・高校生)

寺田 老後じゃない? メジャーで数年間活動すると、ずーっと結構なお金をもらえるんでしょ?

―そっちっすか!

寺田 大リーガーの年金ってすごいらしいよ。現役引退後、生活に不自由しないくらい、相当な額がいただけるらしい…って、夢のないこと言っちゃった!?

―いや、ガチな答えです!

寺田 だって日本だったらさ、監督やコーチ、解説者になれたらいいほうだけど、それでも現役時代より収入は落ちるわけじゃん。もちろん、純粋に自分の実力を海外で試したいという選手もいると思うけど、日本国内をターゲットにするのと、世界で勝負するのでは、マーケットの規模が全然違うもん。この島国の中でやるのか、世界に挑戦するのか…でも、その先にあるのは…。

―やっぱコッチっすか。

寺田 フフフフフ。私たちミュージシャンだって、なんの保障もないもん。寝ずに一生懸命曲を書いたって、売れなきゃ一銭にもならないわけで。そういう意味では保障があるってすごくいいことだと思うよ。

―この流れで、次はお金についての相談です。

#12 同級生は「給料が安くてもやりがいのある仕事がしたい」とかカッコいいこと言ってますが、やりがいよりもカネでしょう、と俺は思います。貧乏でも充実してたらいい、なんていうのは幻想ですよね?(21歳・男性・就活生)

寺田 う~ん、そこは難しいな。私はすっごいお金があった時も、貧乏な時も、どっちも経験してるけど、お金があるから幸せだったかというとそうでもないし、貧乏だから不幸だったわけでもない。貧乏な時はそれこそ、食パンのミミを「ウサギのエサにします」とか言ってタダでもらって、それをむしゃむしゃ食べてた時期もあるけど。

―姐さんにもそんな時期が!?

寺田 あったよ。デビュー前の20歳くらいの時。実家の商売が傾いて、大金持ちからいきなり貧乏になった。眠れなくなって、お風呂に入りながら酒を飲んだりしたこともあった(笑)。でも、今思えばその時も楽しかったよ。貧乏をバネにしてのし上がってやろうと心に決めて、実際にのし上がってきたしね。

―お金がない時代でも、やりがいは常にありました?

寺田 あった。自分はこうなりたいとか、夢はずっと持っていたから。家族を食わせるために給料のいいところに就職するのか、それとも音楽の夢を追うのか、一瞬悩んだこともあったけど、「夢を追って家族を食わせればいいじゃん」って思ったので、そのまま音楽を続けたんだよ。

―カッコいいですね!

寺田 ひとつ言えるのは、お金だけを頼りにしてると、お金がなくなった時はキツイよってことかな。

「酒とタバコは絶対やめない」

ライブ本番前に頭を振るとスイッチが入るのだと、ルーティーンを明かす姐さん

#13 ひと目惚れした女のコを1年がかりで口説き落とし、交際を始めました! めっちゃいいコで真剣に結婚も考えているのですが、ひとつだけ彼女に嘘をついていることがあります。彼女は食べ物や衣類などオーガニックの健康志向なのですが、僕は酒・タバコ・ジャンクフード、体に悪いものが大好き。正直に打ち明けたらフラれそうで恐いです。(26歳・男性・SE)

寺田 フラれるのが恐いんだったら、我慢すればいいじゃん。

―出た! 一刀両断!

寺田 それか、陰に隠れてタバコ吸ってジャンクフード食べて、一緒にいる時は何事もなかったように演じ切るしかないよね。

―それが答えです! ちなみに、姐さんは酒・タバコと健康の兼ね合いってどのように?

寺田 ストレスを溜めないことが一番の健康法だと思っているので、酒やタバコを我慢して体が健康的になっても、心が病んだら意味がない。だから、酒とタバコは絶対やめない。周りに何を言われても絶対やめない。その代わり、強い体を作ればいいという考え方で、40歳くらいからジムに通い続けてるよ。

―酒はともかく、ヴォーカリストですから、タバコをやめようと思ったことは?

寺田 第1期SHOW‐YAの時は吸ってなかったけど、脱退した瞬間にヘビースモーカーになりました。1日何もしなくていいから、ベランダでずーっとタバコを吸っていて、それ以来やめられなくなってる。ステージで歌ったり走ったりすると心臓がバクバクするから、ライブの前は本数を減らしたりするけどね。

―今はどれくらいですか?

寺田 できれば10本以内に収めたいんだけど、曲を作る時、ギター弾いてコンピューターと睨(にら)めっこしてたりすると、チェーンスモーカーになってしまうね。

―心肺機能には影響があるけど、喉にはそれほどでもないんですか?

寺田 お医者さんが言うには、5本くらいだったら影響ないって。だから本当は5本にしなきゃいけないんだけど(笑)。

#14 未経験ながらバンドに加入させてもらい、ドラムを始めたアラフォー女です。ずっとバンドに憧れてたのですごく嬉しいのですが、ライブでは緊張しすぎて顔が死んでると言われます。ステージ上で姐さんはどんな精神状態なのですか?(38歳・女性・会社員)

寺田 別の私になる。だからあれだよ、出る前に何回か頭振っときゃいいじゃん。

―え? 実際、頭振ってるんですか?

寺田 振る。

―それでスイッチが入るわけですね。

寺田 頭振るのは、『ローズ』っていう映画がお手本になっていて。ベット・ミドラー演じるロック・シンガーが鏡の前でずっと頭を振るのね。カッと頭を上げて目を見開いた瞬間にスイッチがオンに入るんだけど、私はそれを20代からずっとやり続けてる。みんなで円陣組んで「頑張ろう、オーッ」みたいなのもやるけど、その後、ひとりですーっとその場を離れて、頭を振ってる。グワーッてエネルギー溜めて、パッと出ていく。

―それをやると、ステージ上で違う自分になれると。

寺田 そう。普段は(控えめに)「寺田恵子です」って感じだけど、ステージでは「私が寺田恵子よ! 私を見て!!」みたいな。そのスイッチを入れないままステージに出ると、あまりいいライブができないんじゃないかな。人前に出るのが苦手な人はこういうことをしないと、ずっと緊張を引きずってしまうので。ちなみに、私は20代の頃に買った赤面症を治すための本を今も持ってます(笑)。

―へ~、姐さんでも!?

寺田 シャイっていうわけではないけど、本来は人に注目されるのがあまり好きではないんだよ。でも、ひとりぼっちは嫌い。面倒くさいでしょ(笑)。

―天使と悪魔の二面性ですね。

寺田 そう、天使と悪魔で。とにかく、自分なりのスイッチを見つければいいんじゃない? 誰かにバン!って背中を叩いてもらうだけでも効果があるかもしれないし。人前に出る仕事じゃなくても、例えば重要な会議でプレゼンする時とかさ、スイッチを入れるのは有効。自分なりのやり方が見つからなかったら、とりあえず頭振っとけ!

「途中から記憶なくなって、気付いたらおうちにいた」

「飲むと、ひとりでおうちに帰るのがイヤになるんだよ」というお茶目な一面も

―最後に、僕の悩みなんですけど…。

寺田 ハッハッハ、悩みあるんだ?(笑)

#15 酒癖が年々悪くなっています。暴れたりはしませんが、とにかくテンションが高くなり、二次会三次会、いけるところまでいってしまいます。そして最近はよく記憶をなくします。もちろん次の日は最悪の二日酔いで仕事も捗(はかど)らず。「そこそこにしとく」秘訣ってありますか?(37歳・男性・編集者)

寺田 わかりません! その秘訣があるなら、逆に教えてほしい(笑)。

―同病相哀れみましょう(笑)。姐さんにもお酒の失敗談はあります?

寺田 最近はないかな。3年前くらいに、もうスタッフとは飲まないって決めたので。

―それ、相当な決断じゃないですか。

寺田 飲むと、ろくなことがないので(笑)。ひとりでおうちに帰るのがイヤになるんだよ。ずっとこの楽しい時間が続けばいいのにって。スタッフに説教したりしてるんだけど、説教も楽しいの、私(笑)。誰かが「そろそろ帰る」って言い出したら、すごい剣幕で怒ります。「なんだと~!」って。

―10人で飲んでたとしたら、最後まで10人でいたい?

寺田 基本はね。「明日早いのですみません」という人は引き止めないけど。残った人にとっては地獄だよね(笑)。ある時、明け方まで飲んで、もうどのお店も閉まっちゃったから、「事務所行くぞ」ってコンビニで酒買って飲んだんだけど、ひとりずつ潰れていくわけさ。飲むって言ったよね~、寝てんじゃねえぞとか思いながら、ひとり倒れ、またひとり倒れ…。で、酒をドン!って置いて、「帰る!」って言って帰ったんだけど(笑)。

―お酒強そうですもんね。泥酔することもあるんですか?

寺田 あるある。意味わかんなくなって、担(かつ)がれて帰ることもあるよ。いろんなバンドが出るイベントの打ち上げの時なんかは、飲まされることもあるのね。「お疲れ様でした。ありがとうございました」って私がテーブルを回ると、「まあまあ姐さん、一杯」とか飲まされるんだけど、それが全部テキーラのショットなんだよ。途中から記憶なくなって、気付いたらおうちにいたんだけど、その帰り道も結構大変だったらしい(笑)。

―スタッフさんに担がれて帰ったんですね。

寺田 背負われながらずっと、「ごめんなさいごめんなさい」って言ってたらしいんだけど、家に着いた瞬間に、「帰って~!」と叫び始めたらしい。なんでうちにいるの! 帰って~って(笑)。

―面倒くさい(笑)。

寺田 面倒くさいでしょ(笑)。

―だからもうスタッフとは飲まないと。でも、酒はやめない?

寺田 やめない。やめる意味がわからない!

(取材・文/中込勇気 撮影/本田雄士)

●寺田恵子(てらだ・けいこ)1963年7月27日生まれ。高校1年生でバンド活動を始め、85年、「SHOW-YA」のヴォーカリストとしてデビューし、実力派として脚光を浴びる。シングル「限界LOVERS」は売り上げ30万枚を突破し代表曲に。91年にグループを脱退、その後ソロ活動を開始。05年、14年ぶりにSHOW-YAを再結成。以降、ソロと平行して活動中。最新情報は寺田恵子オフィシャルサイトまで

●SHOW-YA PRODUCE 「NAONのYAON 2017」4月29日(土・祝)/日比谷野外音楽堂/14:00開場、15:00開演。87年に初開催された女性アーティストだけのロックフェス。今年の出演者はSHOW-YA 他、はるな愛、荻野目洋子、小比類巻かほる、久宝留理子、相川七瀬、夢みるアドレセンス、渡辺敦子(ex.PRINCESS PRINCESS)、富田京子(ex.PRINCESS PRINCESS)、SILENT SIREN、Gacharic Spin、Mary’s Bloodなど。詳細は「NAONのYAON 2017」オフィシャルサイトでチェック!