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2017年4月20日(木)

PS4/PS Vita『祝姫 -祀-』7月20日発売。竜騎士07さんの書き下ろし追加シナリオが収録

文:イズミン

 日本一ソフトウェアは、PS4/PS Vita用ソフト『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』を7月20日に発売します。価格はPS4版が7,538円(税込)、PS Vita版が6,458円(税込)。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』
『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

 本タイトルは『なく頃に』シリーズを手がけた人気作家・竜騎士07さんが紡ぐ、“呪い”をテーマにした和風伝奇ホラーアドベンチャーです。悲しくもおぞましい物語を、イラストレーター・和遥キナさんと背景作家・mochaさんによる美しいビジュアルが彩ります。

 『祝姫 -祀-』には、PC向けタイトルとしてリリースされた『祝姫』本編の移植に加えて、竜騎士07さんによる追加シナリオが収録されており、未プレイの人はもちろん、PC版ユーザーも楽しめます。

 この記事では、プロローグや登場人物などを紹介します。

プロローグ

 煤払(ススハラ)家の男子は代々、一定の歳を迎えると親元を離れて独り立ちする。そして誰にも頼らずに心身を鍛え、それを以て一人前と認められたそうだ。だからこの日に備え、1人で生活する為にさまざまなことを身に付けてきた。

 県立須々田高校。そこが僕の新しい学校だ。高校での毎日は、気楽なだけでなく、とても快適。誰もが楽しげに過ごす2年A組。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

 しかし、彼女。黒神十重(クロカミトエ)。彼女は、不思議、……という言葉だけでは説明のつかない少女だった。胸には片時も離すことなく、日本人形のようなものを抱えている。

 知らぬ間に髪の毛が伸びている呪いの人形に違いない、などと囁く者もいる。そう言われても不思議のない、薄気味悪い人形だった。でも、そんな彼女との出会いは運命だったのかもしれない……。いや、これは運命だったのだ。

須々田駅、南口前にて

「駅ってさ。何気に超メジャーでポピュラーな自殺スポットだと思うんだよね」

 雑踏のざわめきの中から、不意にひとつの声だけとチャンネルが合うことがある。その携帯で話しているっぽい、若いOLらしい女性の声も、そんなものの1つだった。

「どんな自殺の名所もさ。結構、行くの大変じゃん? だって思わない? 富士の樹海とかで死ぬ人って、どんだけ頑張ってるわけ?」

「樹海までの行き方調べて。電車乗って、乗り換えて乗り換えて、歩いて歩いて。フツー、死ぬ為だけにそこまでやるかね?」

 ガールズトークを楽しむかのようのノリで、イカレた話をしていた。

「駅ってさ。誰もが日常に利用している場所なわけだよね。それで、電車を待っている時間って、自分を顧みるいい時間になるわけじゃん」

 電車待ちのささやかな時間に、……ふと、死んでもいいかなと思い至るわけだ。確かに、駅は素晴らしい。死のうと思い立ったなら、死ぬ為の準備は何も必要がない。ただ、ホームの最前列から数歩、歩み出るだけでいい。

「ね? 最高の自殺スポットだと思わない? コンビニやカラオケくらいに身近でお手軽な、カジュアルな自殺スポットだと思うわけ」

 自殺って、……もっともっと悲壮で重いものじゃなかったっけ。でも女は、死はもっと気楽に考えてもいいものだと言うのだ。……眠くてぼんやりとしているせいなのか、彼女の言うそれは、ものすごく斬新で新鮮な何かを気付かせてくれたように感じてしまう。

「自殺って言葉が、私は物騒だと思うんだよね。エステで、新陳代謝を改善して、新しいお肌を生まれ変わらせるのと、まったく同じ感じ」

「だから“自分殺し”なんて物騒な言葉じゃなくて、人生のリピュアとかってどうかな。ね、なんかステキな響きになったと思わない?」

 その時、私は初めて、……彼女が私に向かって語り掛けていることに気付く。長い髪が印象的な、OL風のお姉さんだった。

「してみると、結構、驚いちゃうよ。何で今まで無駄に怖がってたんだろ、馬鹿みたいって」

「……したことあるんですか、……リピュア」

「うん」

 彼女はあっさりと答える。目眩がして、周りの喧騒がボリュームの摘みを間違えたみたいにやかましく聞こえる……。

 気付けば、私は満員のホームの最前列にいた。後ろには満員の人々の人垣。押し戻ろうにも、満員電車並のぎゅうぎゅう詰めで、私が押し入ろうとしたのと同じだけ押し返される。

「見てみて。下を」

 彼女の声はすぐ近くから聞こえるけれど、姿は見えない。指示に従ったつもりはないが、後ろから押され、つい足元を見てしまう。……するとホームの下は、青空だった………。

「………………………っ……」

 砂利とレールのあるべき空間が、……ぽっかりと抜け、眼下に青々とした大空を覗かせているのだ。まるで、空に浮かぶ島から、眼下を見下ろしているみたいに。

「おいでよ」

「……でも……」

「すっごい簡単であっさりだよ。怖くなんかないから」

 彼女はいつの間にかそこにいて、手を差し伸べていた。見れば、いるのは彼女だけではない。友人たちか、あるいは同僚たちだろうか。スーツ姿の男女が見える。

「でも、……これって……」

 飛び降りろってことだよね……? ホームから。みんな、飛び切りの笑顔で手を差し伸べてる。でもほら、向こうから電車がやってくる音が聞こえる。地鳴りが唸りが、叫びが聞こえる。

「ほら、早く。」

「……怖くないから。痛くもないんだよ」

無理だよ。そこへ飛び降りるってことは、……だって、だって……。

 ……ら、……じゃないか……。ら、……ばら……。みんなみんな、……手も、……足も、……首も、……ばらばらじゃないか……。

 青空なんてない。そこは風雨と錆で赤茶色に染まった石が敷き詰められたホームの下。錆色の太いレールがまるで鉄格子のように遮る向こう側から。ごつごつとした石を掻きわけながら、懸命に私に向かって手を伸ばす、……四肢がばらばらの亡者たちの呻きが、そこにあった。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

それは、単なる悪夢でなければならなかった

 白昼夢。それは覚醒時に体験する、夢に類似した意識状態を指す。夢や空想よりも直接的で生々しい現実感を持ち、――時には快感や痛覚までもともなう。

 少女たちは、以前から奇妙な白昼夢に悩まされていた。口では説明しようのない、奇怪な夢。あるいは淫靡でおぞましい妄想。悪夢は少しずつ彼女たちの精神を摩耗させ、蝕んでいく。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』 『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』
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 いびつで凄惨な光景が広がる白昼夢。

 煤払涼は4人の少女たちと交流を深めるうちに、それぞれが抱える悪夢や苦しみを共有することになる。生まれて初めて得た理解者に彼女たちの心は救われたかに見えた。

 ――しかし、それはこの地に千年続く“呪い”を成就させるのと同義でもあった。

「死ぬことが許されたお前が、羨ましい。無力さを呪いながら、去れ」

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』 『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』
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登場人物

煤払涼(ススハラスズム/声優:古川慎さん)

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

「……僕は、見て見ぬふりができるほど、器用じゃないんだ」

 この物語の主人公。親元を離れて心身を鍛えるべく、椿子の両親が大家を務めるアパートに引っ越してきました。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

黒神十重(クロカミトエ/声優:赤﨑千夏さん)

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

「10年遅い。いいや、100年遅いっ、1000年遅いッ……、ううぅッうううぅぅぅッ……」

 須々田の町にある祝元神社の1人娘。焦点の合わない瞳でぼんやりとしていることが多く、教師やクラスメイトからは距離を置かれています。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

春宮椿子(ハルミヤツバキコ/声優:本多真梨子さん)

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

「まぁ、私も女子やってるしっ。キュートキュートになるよう、毎日努力してるしねっ」

 涼とは遠い親戚であり同級生。将来の夢は素敵なお嫁さんになること。独特の口調は“女の子らしさ”を意識したものらしいです。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

美濃部鼎(ミノベカナエ/声優:大坪由佳さん)

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

「あーあ、どっかにいい儲け話とか転がってないかねぇ」

 上級生の自覚がまったくない先輩。面倒くさがり屋ですが、苦労以上の対価が得られるなら積極的な行動をみせることも。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

布川莉里杏(ヌノカワリリア/声優:ブリドカットセーラ恵美さん)

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

「学業も部活も両立できてこそ女子高生アイドルだと思いますので」

 涼や椿子の後輩で、現役高校生アイドル。幼いころから子役タレントとして芸能活動をしていました。大人びたしっかり者で、かなりの努力家です。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

雛形真由(ヒナガタマユ/声優:田中涼子さん)

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

「シャチホコ部って素晴らしい! →顧問は一体誰かしら? →私、ちやほや!!」

 涼たちが所属する部活の顧問。面倒見がよく、生徒たちに慕われています。恐るべき三段論法で自らの主張を押し通す口先の魔術師です。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

熱田夏也(アツタナツヤ/声優:泰勇気さん)

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

「さっすが、グレートな男だぜ!! 煤払ぁ!!」

 涼の親友でクラスメイト。とある出来事がきっかけで、涼のことを尊敬しています。些細なことでも感動する暑苦しい性格です。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

平和な地方都市“須々田”

 本作のストーリーは地方都市“須々田”を舞台に展開していきます。そこに暮らす人々は、新参者である煤払涼を優しく受け入れますが、彼はやがてこの地に隠された忌まわしい過去を目の当たりにします――。

須々田高校

 涼や椿子たちが通う県立高校。須々田は本作の舞台となる地域一帯の名称で、以前は煤田とも呼ばれていたらしいです。

シャチホコ部

 正式名称は“社会地域奉仕貢献部”で、ボランティアや地元の催し物の手伝いが主な活動です。部員は鼎、椿子、莉里杏、十重、そして新たに入部した涼と夏也の全6名。雛形と部長の鼎がのんびりとした性格のため、正式名称の固さに反して部内の雰囲気はゆるくなっています。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

祝元(いわいもと)神社

 黒神家が代々宮司を務める神社。歴史は古く、平安時代に建立されたと伝えられています。人形供養でも知られており、人形神社の異名を持っています。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

鹿神比古命(ろくがみひこのみこと)の伝承

 須々田に伝わる民話。その昔、土地神の鹿神比古命は飢饉に苦しむ人々を憐れみ、祝福の煤を撒いて“金の鹿”を遣わしました。金の鹿がもたらした富のおかげで、この地は大いに栄えたと言われています。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

竜騎士07さんによる追加シナリオが収録

 『祝姫 -祀-』では、ゲーム本編に加えてシナリオライター・竜騎士07さんによる書き下ろしの追加シナリオが収録されています。詳細は続報で発表される予定です。

『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』
『祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)』

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