グッドデザイン賞から考える、中小企業とデザインの緊密な関係 | RBB TODAY
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グッドデザイン賞から考える、中小企業とデザインの緊密な関係

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どこにでも持ち出せる明かり「Bottled」。LEDを用いたコードレスの照明器具のため置き場所を選ばない。新しい「照明体験」を得ることができる
  • どこにでも持ち出せる明かり「Bottled」。LEDを用いたコードレスの照明器具のため置き場所を選ばない。新しい「照明体験」を得ることができる
  • 開発したアンビエンテックの「Bottled」を手にする小関氏は、商品デザインのみならず、商品のコンセプト作りにも積極的に取り組む
  • ヨーロッパにまで活躍の幅を広げているプロダクトデザイナーの喜多俊之氏に師事し、11年に独立してRKDS(リュウコゼキデザインスタジオ)を設立した小関隆一氏
【記事のポイント】
▼デザインとは商品を魅力的にわかりやすく“翻訳”すること
▼コンセプト作りから関わるデザイナーとの協業がヒット商品を生む
▼商品開発のストーリーと融合したデザインに価値がある


■商品の魅力が伝わるデザインとは?

 デザイン性に優れた商品や事業を評価するグッドデザイン賞では、ここ数年、中小企業が開発した商品が数多く出展され、審査員から高い評価を受けている。脱・下請けや事業拡大のために近年では自社ブランドを開発する中小企業が増えているが、その成功にはデザイン力が不可欠なものといえるだろう。

 アートディレクターでデザイナーの小関隆一氏は、同賞において中小企業とのコラボでよく知られる人物。13年度に受賞の太洋塗料の水性塗料「マスキングカラー」、翌14年度受賞の武州工業による知育玩具「パイプグラム」は、ともに小関氏がデザインを手がけている。

 そんな小関氏にとってデザインとは何か? その答えとして返ってきたのが「翻訳」だった。例えば、マスキングカラーは太洋塗料の主力商品であった、業務用の”塗ってはがせる塗料”を一般向けに開発した商品。赤や青、緑など多彩なカラーラインアップを用意し、壁や窓などさまざまな場所にマーカーのように塗って、それが乾くとはがすことができる。ロフトや東急ハンズといった有力な量販店をはじめ、海外へも販路が広がっているヒット商品だ。

 塗料は缶入りのものをハケにつけて使うのが普通だが、マスキングカラーは対象が一般向けということで、道具要らずの片手で直接塗れるマーカーペンのような容器とした。ロゴマークは塗料を剥がせることをイメージしたデザインに。商品名も塗ってはがせるマスキングテープから連想し、「マスキングカラー」とネーミングしている。

 ボトルの形状やロゴのデザイン、ネーミングといったプロダクトデザイン全体を通じて、誰でも「手に取ってキャップを外してマーカーペンのように塗るもの」だとすぐにイメージしやすくなる。この分かりやすさが、小関氏の“翻訳”という表現だ。

■デザインを通して商品の物語を伝える

 照明機器を手掛けるアンビエンテックは2012年、コードレスランプ「Bottled/ボトルド」発表した。これは、同社のバッテリとLEDを組み合わせた小型照明だが、その商品提案を行ったのが、他ならぬ小関氏だ。


「この構造を使えばコードレスの照明器具が実現できると考えたときに、思いついたのがダイニングテーブルの上に置けるタイプ。一見して使い方がわかり、コードがなく、上から吊るす必要もなく、食べ物や飲み物と一緒にさり気なく置けるという利用シーンをイメージしたところ、ガラス製でワインのボトルのようなデザインと、『Bottled(ボトルド)』というネーミングになりました」

 「マスキングカラー」の塗ってはがせる誰もが手軽に使える特性、「Bottled」のコードレスで置く場所を選ばない性質を、小関氏は大胆にデザインに取り入れる。そこで大事にしているのが、「技術的背景を含めた商品のストーリー性も意識して、デザインすること」だ。

「グッドデザイン賞が製品だけではなく、サービスやビジネスモデルといった姿・形がないものも対象にしているのは、現在ではデザインの先に見える商品のストーリー性も評価されているからだと私は考えています」

■自治体が中小企業とデザイナーのマッチングを仕掛ける

 太洋塗料では“塗ってはがせる塗料”で培った技術力を、B2Cの商品開発につなげることで、脱下請けと事業の拡大を実現している。それを可能にしたのは小関氏の存在だ。では、両者はどのようにして出会ったのだろうか?

「きっかけは東京都が主催する『東京ビジネスデザインアワード』です。これは、都内の中小企業とデザイナーのマッチングを仕掛けるもので、中小企業が自社の商品なり技術なりを公開し、その中から新規事業につながりそうだと感じたものが見つかれば、デザイナーが事業プランを提案します。13年に第1回が開催されたときに太洋塗料を知り、私が『マスキングカラー』を企画して提案したところ、テーマ賞を受賞し、商品化に向けた協業が実現したのです」

 知育玩具「パイプグラム」の武州工業についても、その出会いは「東京ビジネスデザインアワード」でのこと。自分の所属する自治体が、このような企業とデザイナーとのマッチングに力を入れているか、中小企業は知っておく必要がありそうだ。

 今まで下請けを手掛けてきた企業が、いきなり自社でデザインを手掛けるのはハードルが高い。そこで重要なのが協業できるデザイナーを見つけること。その上で、今のデザインの潮流の中では、物語の背景にあるストーリーを取り込むことが、評価のカギとなりそうだ。

<Profile>
小関隆一(こぜきりゅういち)さん
多摩美術大学美術学部デザイン学科インテリアデザイン専修卒業後、I.D.K.デザイン研究所に在籍し、ヨーロッパにまで活躍の幅を広げているプロダクトデザイナーの喜多俊之氏に師事。第2デザイン室室長を歴任した後、2011年に独立してRKDS(リュウコゼキデザインスタジオ)を設立。商品デザインのみならず、商品のコンセプト作りにも取り組み、中業企業とのコラボで手掛けた商品はグッドデザイン賞、iFデザイン賞、東京ビジネスデザインアワードなど受賞多数。
《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》
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