大型兵器が遠くから小さなターゲットを狙うのはどうやってるのか?

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    大型兵器が遠くから小さなターゲットを狙うのはどうやってるのか?

    軍事関連には最新技術が使われるのですね。

    諸各国の軍事介入が続くリビア内戦。米国はもちろん介入国の1つ。現地に出向くことなく紛争に参加しリビアを爆撃したわけですが、一体どうやったのでしょう。ミサイル等の大型兵器が遠くは慣れた場所から目的地を狙う、その構造はいたってシンプル、GPSレーザーを使うのです。

    リビア内戦が続く中、軍事介入を決めた米国ですが、米国国内の世論も国外も現地に踏み込まずに対応すべきだとの意見。現地入りせずに、となると軍事オプションは限られたものになります。限られたオプション=離れた場所、海や空から高性能のミサイルや爆弾を使って攻撃をしかける、というもの。この遠隔地からの作戦では、時にミサイルは何百キロも離れた潜水艦から打ち込まれることがあります。ここで初めの疑問が頭をよぎるわけです。そんな遠くからどうやってターゲットを狙ってるの? GPSとレーザーはどう使われてるの?

    ミサイル発射の前にあるのは、数々の詳細な計画。60万7000ドル(約5100万円)と言われるミサイルトマホークはその打ち上げの前に、pre-mission plan(任務のための前作戦)としてプログラムがまず組まれます。プログラムの内容はもちろん行き先入力。目的地到達のためにミサイルのガイドとなるのは、緯度と経度。さらに、出発点から目的地までの飛行路を描いた図面も入力されます。そこに加えて、目的地以外の予備の到達ポイントが15箇所まで入力可能。

    出発点Aから目的地Bまでトマホークが飛んで行くためには、実に複雑な計算が必要になります。そりゃ、敵地に乗り込むミサイルですからね、当然ですよね。20フィート(約6メートル)あるミサイルが海から発射されると、まずは敵のレーダーにひかっからないように海面近くを低空飛行します。時速550マイル(時速約885キロ)のスピードで進むミサイルの案内人となっているのは、GPSシステム(大型旅客機ボーイング747で使われているのとよく似ている)と地形照合誘導方式(TERCOM)と呼ばれているシステム。TERCOMは飛行中のメモを撮ります、風景の画をとります。データベースに蓄積されているデータと、高度測量器とレーダーでリアルタイムで上がってくるデータを比較してこの軌道は大丈夫かをチェックします。わかりやすく例えると、Google Street Mapを見ながら、そのエリアをお散歩する感じですね。もしミサイルが予定の軌道からそれる事があれば、地形学を使ってもとの軌道に戻して先へと進んでいくのです。

    20110409targetting01.jpg
    もちろん、発射後も状況は刻一刻と変化していき、ミサイルはそれに対応しながら目的地まで向わなくてはいけません。トマホークBlock IVはどんな急な変化にも対応できる技術が組み込まれています。GPSの位置データは衛星から常に情報が更新され、必要な場合は当初の予定とは違うルートを通り違う目的地に到着するようになっています。海軍のとある匿名希望軍人さんによりますと、ミサイルには低回モードというものがあるそうで、空中を旋回して次の指令を待つこともできるそうです。

    pre-mission plan(任務のための前作戦)では目的地の画も入力されています。予定通り目的地に着くことができたら、入力されているイメージと、実際の映像を比べて正しい目的地かどうかを判断します。ミサイルはその目できちんと確かめてから攻撃している、ということですね。目で見たものと入力されているイメージが一致すると攻撃します。

    ミサイルはつねに海上から打ち込まれるのではありません。空(飛行機)から打たれることもあります。飛行機F15E Strike Eagleで運ばれる誘導爆弾もあります。この爆弾の案内役を務めるのはレーザーと尾翼。陸を離れる前に爆弾にプログラムを組み込みます。プログラムの内容はある特定のレーザーの目印をターゲットにするというもの。さらに、飛行機には攻撃目的地にレーザーで目印をつけることをプログラムされています。爆弾はこのレーザーの目印をめがけて飛んでいくわけです。が、もちろんこのレーザーは混同しないように細かく分かれています。飛行機1のつけたレーザー目印に爆弾2が突っ込まないようになっているのです。

    F15E機は目的地を探すために赤外線と電子光学イメージを使用しています。映画やドラマにでてくる焦点を合わせるための十字線のアレですね。目的地を見つけると、後はコンピューターが案内役になってくれます。飛行機がどういう軌道を飛びいつ爆弾を落とせばいいか、計算して教えてくれるのです。

    コンピューターの指示に従い準備が整うと、パイロットはボタンを押し爆弾を投下。上空2万フィート(約6000メートル)から落とされた爆弾は、レーザーの目印を探します。目印を探すのは爆弾に取り付けられた目の役割を果たす探索機能。レーザー目印を見つけると、ここでもまたコンピューターがどのようにし尾翼を動かして爆弾をフリーフォールさせるかを計算するのです。F15Eのパイロットで実際にアフガニスタンへ飛行機を運転した経験のあるMajor Ryan Ismirleさん曰く「建物でも車でも地面に空いた穴でも、なんでも狙うことができます。ターゲットに制限はありません。ターゲットを狙えなかったのを見た事がありません。」

    最先端技術のつまったミサイル、ターゲットへの執着心すごいです。しかもコンピューターで計算しつくされているので、なんだか冷たい感じがしますね。冷徹で正確な敵。恐ろしいことこの上ないです。

    original artwork by Christopher Hartelius.

    そうこ(Rachel Swaby 米版