米Microsoftは現地時間2016年12月8日、米LinkedIn買収の手続きを完了したと発表した。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)が12月6日に条件付きで同買収を承認し、手続き完了に向けた動きが一気に進んだ(関連記事:MicrosoftによるLinkedIn買収、欧州委が条件付きで承認)。

 MicrosoftはLinkedInを262億ドルで買収する計画を6月に発表したが、市場競争の阻害やプライバシーの侵害といった問題が指摘され、特にLinkedIn買収を試みながらMicrosoftに敗れた米Salesforce.comが強く反対していた。

 ECは、MicrosoftがWindowsやMicrosoft Officeの独占的地位を利用して、競合のビジネスSNSの締め出しを図る可能性を懸念したが、Microsoftが提示した譲歩案はこうした懸念を解決するとして、5年間の履行を条件として買収を承認した。

 MicrosoftのSatya Nadella最高経営責任者(CEO)は、買収を最初に公表した際と同様に「最優先事項はLinkedInの成長を加速すること」と述べた。LinkedInのJeff Weiner CEOも「日常業務は基本的にこれまでと変わらない。今後も従来どおりLinkedInメンバーを第一に考え、プライバシーとセキュリティに取り組む」とし、買収後も独立した運営を続ける方針を明らかにした。

 また両社は当面の取り組みとして、LinkedInのIDおよびネットワークとMicrosoftの「Outlook」やOfficeプロダクトとの連係、LinkedIn通知とWindowsアクションセンターの統合、LinkedInインフィード広告の各種Microsoftサービスへの拡大をはじめ、「LinkedIn Learning」を「Office 365」およびWindowsエコシステムで利用可能にすること、「LinkedIn Sales Navigator」と「Dynamics 365」の統合を通じてソーシャルセリングを再定義することなどを挙げた。
 
 MicrosoftにとってLinkedIn買収は過去最大規模の買収案件となる。しかしMicrosoftはオンラインマーケティングの米aQuantiveやフィンランドNokiaの携帯端末事業など、過去の大規模買収で成功した例がなく、LinkedIn買収が吉と出るか「懐疑的になる十分な理由がある」と米New York Timesは報じている。

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[発表資料(2)]
[発表資料(3)]