谷原秀人(37=国際スポーツ振興協会)が大会連覇で今季3勝目、通算14勝目を挙げ、賞金ランク1位に返り咲いた。首位から出て70で回り、通算12アンダー268で並んだ池田勇太(30)とのプレーオフに突入、2ホール目でバーディーを奪って退けた。ファンを大事にする広島カープ黒田投手の影響を受け、ショットが不調な中でも会場に足を運んだギャラリーに喜んでもらいたい一心で、集中力をつないで勝ちきった。

 谷原の“男気(おとこぎ)”が勝利を呼び込んだ。「こんなに調子が悪くて勝ったのは初めて」。前半から思うようなショットが続かない。それでも「1人でもいいから『谷原、すごいな。粘っているな、あいつ』と思ってもらえるよう、少しでも感動を与えられるよう」諦めずにプレーした。

 10番でダブルボギー、13番でボギーとし、首位池田と2打差になっても、ギャラリーの「頑張れ!」の声に「ここから3つバーディーを取ろう」と心に決めた。16番で1・5メートル、17番で2メートルにつけて連続バーディーとすると、ギャラリーの間から「神ってる」という言葉も飛び出した。谷原と池田の賞金ランク1位攻防戦は、最後まで多くのファンを引き連れていた。

 前週は中国の試合に出て疲労もあった。不調で「本当は出たくない」とも思ったという。だが、第1日の夜にテレビで黒田投手の特別番組を見て、「ファンに喜んでもらえるように」と奮起。過去2勝というコースとの相性、パット巧者の底力もかみ合った。

 普段はポーカーフェースな男が、プレーオフのためカートで移動する際、ファンに手を振り続けた。優勝スピーチでは「ギャラリーの皆さん、楽しかったですか~?」と呼びかけ、親近感を印象づけた。敗れた池田にも「いい勝負だった。また来週頑張ろう」と伝えた。男子ツアーを盛り上げるため、2人で賞金王レースを熱くしようという意味だ。ツアーのリーダー格としての自覚がにじんだ。【岡田美奈】