地盤沈下が止まらない

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 フジテレビの”月9”ドラマ『カインとアベル』が、同枠の初回最低視聴率8.8%を出してしまった。さらに吉田羊が主演する『レディ・ダ・ヴィンチの診断』は8.8%、天海祐希の『Chef〜三ツ星の給食〜』8.0%、玉木宏の『キャリア〜掟破りの警察署長〜』は7.9%と、今クールのフジドラマすべてが10%を割る異例の事態となっている。

 一方で好調なのはテレビ朝日だ。『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』は20.4%、『相棒』は15.5%と、人気シリーズが初回視聴率1位、2位と続いた。その後はTBSの『IQ246〜華麗なる事件簿〜』が13.1%、同局の『逃げるは恥だが役に立つ』が10.2%となっている。日本テレビは『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』が12.9%、『レンタル救世主』が10.2%と、フジ以外の他局は10%超えドラマを連発している状況だ。

 前クールの定例会見でフジテレビの亀山千広社長(60)は、「まずはドラマから」と視聴率の立て直しを図ったが結果を出すことはできず、今クールは最悪の状況でスタートとしてしまった。テレビ関係者によると、

「“ドラマのフジ”の代表格だった『月9枠』でさえも、大スポンサーのTOYOTAに見限られて年内打ち切りのウワサもありましたが、いよいよ現実味を帯びてきました。さらに、フジドラマに対する視聴者のマインドに変化が起きてきています」

 フジドラマのブランド失墜はさんざん言われてきたが、本格的に崩壊のカウントダウンが始まっているようだ。

■フジドラマで爆死するということ

 今まで、低視聴率でドラマが終わると、主演の役者は致命的なダメージを負い、低視聴率のレッテルを貼られることになっていた。ところが最近のフジテレビのドラマに対しては、役者へのダメージが比較的軽いらしいと、芸能関係者は話す。

「ここ最近のフジドラマへの批判の大きな特徴として、出演者ではなく、脚本や演出など、ドラマの内容へのダメ出しが多いですね。4月期の月9『ラヴソング』では、ヒロインの藤原さくら(20)の吃音や設定性格にケチがついていました。もちろん、主演の演技にも批判は集まりますが、それも消し去ってしまうほどの内容のチープさ、古臭さ、矛盾が話題になってしまう。実績のある福山雅治(47)や松嶋菜々子(43)などの大物がフジドラマで低い数字を出しても、役者への大きな批判は集まらず、『フジに関わったから』と世間から同情される始末です」

 そこで、得をするのが、他局のドラマ制作だ。

「今や業界内では、フジのドラマは爆死が当然、と言われています。本来なら、低視聴率を取った役者は起用しにくくなるのですが、フジドラマで低視聴率をとった役者は、他局のキャスティング候補からはあまり外れません。しかも、一度商品価値が下がった役者。テレビ局としては、配役や待遇など、製作陣に有利な条件でオファーを出すことができます。役者もネガティブイメージを払しょくしたいため、条件を飲むしかない。今までは主演しか受けなかった高額ギャラの役者を、脇役や安めのギャラでくどき落としやすい状況が生まれつつある。フジドラマ主演の役者は、他局にとっておいしい物件になっているんです」(前出・関係者)

 完全一人負け状態のフジドラマ。もうすでに他局の食い物にされる状況ができつつあるようだ。

文・橘カイト(たちばな・かいと)※1979年島根県生まれ。編集プロダクションを経て、フリーに。週刊誌などで芸能関係の記事を執筆。また、民俗学などにも精通し、日本のタブーにも数多く取材。主な著書に『真相!禁忌都市伝説』(ミリオン出版)ほか多数。