IoT向け通信サービスを提供するソラコム(東京都世田谷区)の玉川憲社長は2016年10月19日、「ITpro EXPO 2016」(主催:日経BP社)で「IoT大航海時代の先駆け SORACOMの戦略とお客様事例」と題し特別講演を実施した。講演では、同社のIoT向けLTE通信サービスの法人ユーザーが、提供開始から1年で約4000社になったことに触れ、複数の導入事例を紹介。今後もサービスメニューを順次強化するなどして、国内外の企業がIoTを活用したサービスを展開する際に、通信インフラとしてソラコムのサービスを活用しやすくするよう努める姿勢を強調した。

「ITpro EXPO 2016」会場で講演するソラコムの玉川社長
「ITpro EXPO 2016」会場で講演するソラコムの玉川社長
[画像のクリックで拡大表示]

 同社は2015年9月のITpro EXPOにおいて、NTTドコモのMVNO回線と回線管理・制御のクラウドサービスを組み合わせたLTE通信サービスの提供開始を発表している。以来、導入企業が順調に増えているといい「導入企業は日本国内で4000社以上。大手からベンチャーまで、さまざまな業界の企業に利用いただいている」ことを明らかにした。

 玉川社長は講演の中で、複数の導入事例を紹介した。十勝バス(北海道帯広市)は保有する全ての路線バスにGPSのモジュールとソラコムの回線を搭載。十勝バスのスマートフォンアプリで、バスのリアルタイムの位置情報を確認できるようにした。パルコは店舗の入口に設置したカメラの画像をソラコムの回線経由で集約。画像解析で来店者の性別・年代を推定し、時間帯ごとの客層分析に活用している。

法人ユーザーは4000社に上るといい、講演ではパルコなど複数の導入事例を紹介した
法人ユーザーは4000社に上るといい、講演ではパルコなど複数の導入事例を紹介した
[画像のクリックで拡大表示]

 日本交通子会社のJapanTaxi(東京都千代田区)は、タクシーの後部座席に設置したタブレット端末への広告配信にソラコムの回線を活用。ソラコムの通信料金の割引設定がある深夜帯に広告を配信する仕組みとしており、運用コストを抑えている。楽天Edy(東京都世田谷区)は、仙台市の楽天Koboスタジアム宮城でプロ野球の試合中にビールを販売する際、ソラコムの回線に接続したスマートフォンでクレジット決済を実施している。プロ野球の試合がある日だけソラコム回線を有効にすることで、想定外の不正利用が起こるリスクを減らしている。

 玉川社長は、これらの導入企業が1回線・1カ月あたり300~500円程度でLTE回線を運用していることを紹介。「当社は運用コストを削減し、それを運用コストの安さという形で顧客企業に還元している」(玉川社長)とする。併せて、この1年間に新サービスを10種類、新機能を28回追加するなど、顧客ニーズにきめ細かく対応していると強調した。

ソラコム玉川社長の講演の様子
ソラコム玉川社長の講演の様子
[画像のクリックで拡大表示]

 ITpro EXPO 2016が開幕した10月19日には、ソラコムとKDDIが共同開発したIoT向けLTEサービス「IoTコネクト Air」をKDDIが発表している。これについて玉川社長は「モバイルとクラウドを結合したIoTの領域で当社がやるべきことは、まだまだたくさんある。顧客企業の要望をいただき、新しいサービスを提供していきたいと考えており、今回KDDIという強力なパートナーと新サービスを発表できたことをうれしく思う」とコメント。今後に向けては「創業以来『ソラコムが出てきたことでIoTがやりやすくなった』と言われたいと思って事業を展開してきた。今後も日本や世界から、たくさんのIoTプレイヤーが出るようまい進し、そうした評価を得られるよう全力で取り組みたい」と宣言して講演を締めくくった。