KDDI総合研究所は2016年10月14日、光ファイバー通信の伝送容量の拡大に向け、周波数利用効率を向上する技術を開発したと発表した。実験では4Gモバイル通信で用いるLTEの約60倍となる、周波数利用効率947bit/s/Hzを達成した。理論値で4P(ペタ)bps以上の通信速度が見込めるという。

実験の概要
実験の概要
(出所:KDDI研究所)
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 現在の商用光通信システムの周波数利用効率は2bit/s/Hz以下で、LTE(最大値15bit/s/Hz)より効率が悪かった。同研究所はこれまで、1本の光ファイバーに光を通すコアを複数配置した「マルチコア」や、一つのコアで複数の光の種類(モード)を送れる「マルチモードファイバー」を用いることで周波数利用効率を456bit/s/Hzまで向上すると表明してきた。

 今回、6モード伝送で64値直交振幅変調(64QAM)信号伝送を用いて、周波数利用効率を大幅に改善した。64QAM信号伝送では、64通りの光信号の振幅と位相の組み合わせの状態(信号状態)を用いてデータを伝送する。従来の周波数利用効率実験で使っていた4相位相変調方式(QPSK)と比べて、原理的に3倍の周波数利用効率の向上が見込める。

 一方、信号状態を4通り(QPSK)から64通り(64QAM)に増加すると雑音の影響を受けやすくなる。そのため、6モード以上を用いたマルチモードファイバー伝送では変調方式がQPSKに制限されていた。今回、モード依存損失等化技術と新規に開発した6モード光増幅器を組み合せることで、6モードファイバーでの64QAM伝送を可能にしたという。

 周波数利用効率を2倍に拡大すれば、同じ周波数帯域で伝送できるデータ容量を2倍に増やせる。今後は同方式を用いた大容量化や長距離化に加え、実用性の向上を目指し、引き続き研究開発を続けるという。

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