トヨタ自動車とスズキは2016年10月12日、情報技術や環境、安全技術の分野での技術開発強化に向けて、業務提携の検討を始めると発表した。スズキ会長の鈴木修氏が今回の提案を持ちかけた形だが、背景にはコネクテッドカーや自動運転技術に必要な情報技術の開発に対する強い危機感があった。

提携に向けて議論を始めたトヨタ自動車社長の豊田章男氏(左)とスズキ会長の鈴木修氏(右)
提携に向けて議論を始めたトヨタ自動車社長の豊田章男氏(左)とスズキ会長の鈴木修氏(右)
[画像のクリックで拡大表示]

 スズキは提携によってトヨタの強みとする自動運転技術や情報通信、環境分野の先進技術開発を加速したい考え。鈴木修氏は都内で開いた会見で、「(トヨタは特に)情報技術が優れている。自動車を取り囲む環境が大きく変化する中で、技術を共有していかなければ生きていけない」と危機感を語った。同氏は2016年9月にトヨタ名誉会長の豊田章一郎氏に相談を持ちかけ、10月に入って再度、トヨタ社長の豊田章男氏に提携に向けた議論を働きかけたという。

 トヨタは2017年から米国を皮切りに2019年までに世界で販売する全車両にDCM(データ・コミュニケーション・モジュール)と呼ばれる通信機器を標準搭載すると決めている。コネクテッドカーや自動運転の実現には、車両だけでなくインフラとの協調が欠かせないためだ。スズキは軽自動車など小型車の開発やインド市場でのシェアに強みを持つが、異業種の関わる通信分野では後塵を拝していた。

 トヨタは、スズキと規格の標準化を進めるとともに、インド市場を含むグローバルでの影響力を強めたい考えだ。豊田章男氏は「スズキには変化に対応する力や、周囲を巻き込む力がある。自動車のエネルギー、環境対応といった問題は1社だけでは対応できない。今後、資本も含めてこれから一緒に協力していきたい」と述べた。一方で、具体的な提携内容は未定とし、「これから議論する」(同氏)とした。