サイエンス

人間の遺伝子操作を行うゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」を用いた臨床試験申請が承認される

by Dave Fayram

今後のがん研究において大きな役割を果たすことが期待される、ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)」を活用した臨床試験の申請が、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の「組み換えDNA諮問委員会(RAC)」の審議を通過しました。

First proposed human test of CRISPR passes initial safety review | Science | AAAS
http://www.sciencemag.org/news/2016/06/human-crispr-trial-proposed


First Human Test of CRISPR Proposed
https://www.technologyreview.com/s/601717/first-human-test-of-crispr-proposed/

Gene-editing tool CRISPR may soon be used to treat humans for the first time | The Verge
http://www.theverge.com/2016/6/22/11998546/crispr-human-trial-approved-treat-gene-editing

審議会はネットでライブストリーミング配信が行われ、注目が集まっていました。

NIH VideoCast - Recombinant DNA Advisory Committee - June 2016 (Day 1)
https://videocast.nih.gov/summary.asp?live=19349


「ゲノム(genome)」は「遺伝子(gene)」と「染色体(chromosome)」を合わせて作られた言葉で、DNAのすべての遺伝情報のことです。ゲノムを読み解けば生物の持つ機能を知ることができますが、さらに、ゲノムを編集することによって、病気を治療したり、理想的な生物を作り出したりすることが期待されており、研究が進められています。

遺伝子を自在に設計して生物の特性を変えられる神の領域の技術「ゲノム編集」とは? - GIGAZINE


「ゲノム編集」の分野においては、ゲノム配列の任意の場所の操作を行える技術「CRISPR/Cas9」が2012年に登場。すでにあった「ZFN」「TALEN」というゲノム編集技術よりも格段に扱いやすくなりました。

こうなると、「CRISPR/Cas9」を人間にも応用すれば、もっと効率よく病気治療に役立つ研究が行えるのではないか、と考えるのは自明の流れ。ペンシルベニア大学が骨髄腫(ミエローマ)・黒色腫(メラノーマ)・肉腫(サルコーマ)といった腫瘍に対して、がん患者の体内から取り出したT細胞をゲノム編集して戻すことで攻撃を行わせ、治療するという方法を提案し、その臨床試験の是非についての審議が行われた、というわけです。


RACは棄権1を除いて満場一致でこの臨床試験を承認しました。ただ、RACの承認は大きな一歩ではあるものの、これから研究者らが所属する機関の倫理委員会の承認、およびアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認も必要なので、今すぐに臨床試験が始まるというわけではありません。

なお、Editas Medicineというバイオテック企業が、遺伝性の眼病治療のためにCRISPR/Cas9の臨床試験を2017年に行う予定であることをすでに発表しているのですが、こちらはまだRACの承認を受けていません。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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