remcat: 研究資料集

(TANAKA Sigeto)

「妊娠のしやすさ」改竄グラフ作成者は吉村泰典氏であることを内閣府が確認 (高校保健副教材「健康な生活を送るために」国会質疑)

5月25日(水) 参議院行政監視委員会で、高校保健副教材「健康な生活を送るために」(2015年版) についての質疑がありました。委員会の動画は http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=3704&type=recorded でみられます (委員会開始後38分20秒あたりから)。質問者は神本美恵子委員(民進党)。副教材全体の改訂のいきさつのほか、38ページの「子供はどのような存在か」のグラフと、40ページの「女性の妊娠のしやすさの年齢による変化」のグラフを取り上げています。

38ページの「子供はどのような存在か」のグラフについては、まだちゃんとまとめていません。概要と問題点は https://twitter.com/twremcat/status/647607430730268672 前後のツイートをごらんください。

40ページの「女性の妊娠のしやすさの年齢による変化」のグラフに関しては、重要な点はつぎの3つと思います。

作成者は吉村泰典氏

これまで、「女性の妊娠のしやすさの年齢による変化」グラフを提供したのが吉村泰典内閣官房参与 (慶應義塾大学名誉教授、元日本産科婦人科学会理事長) であったことは、有村内閣府特命担当大臣 (当時) 2015年10月2日の記者会見 などであきらかになっていました。しかし、誰がこのグラフをつくったのかは、政府側の見解としては示されていませんでした。今回の質疑では、内閣府からの回答として、当該グラフの作成者は吉村泰典氏であることを確認している、と明言されました。

グラフの元データは「正しい」ほうのグラフなのか、という質問に対しては、吉村氏がグラフをどのような経緯でどの時点でどのようにして作成したかは把握していないとの回答。質問者 (神本議員) からは、もし元のグラフを正確に写そうとして作ったグラフならこんなラインには絶対にならないだろう、という主旨のコメント。

文部科学大臣の評価

馳浩文部科学大臣からは、この教材について、早く産んだほうがいいという印象をあたえることはまちがいないと思う、という旨の答弁

厚生労働省の動画サイトについて

副教材40ページの「妊娠のしやすさと年齢」グラフの訂正前とおなじものが厚生労働省の動画サイトで使われている問題 (現在は視聴不可。http://d.hatena.ne.jp/remcat/20160331/falsified 追記部分のほか、http://d.hatena.ne.jp/remcat/20160528/mhlw の書き起こしを参照) についても質問あり。厚生労働省からは、今後、閲覧者が必ず見る冒頭のページに「正しい」グラフを掲載して訂正の説明を加える、との回答。

なぜまだ訂正していないのかという重ねての質問に対しては、誤ったグラフが使用されていたことの把握に至っていなかったとの答弁 (おい)。質問者 (神本議員) から、誤ったグラフが政府の他のウェブサイトや広報資料で広く使われているのではないか、調査が必要との指摘。

雑感

この質疑で、政府側見解をいろいろ確認できたのはよかったと思います。ただ、質問者が「正しいグラフ」と言っちゃっているのはどうか。「訂正」後のグラフもおかしいのであり、本来、こういう形で参照すべき研究ではないので。→http://d.hatena.ne.jp/remcat/20160331/pr

特に、厚生労働省が動画に入れると回答した訂正文がどうなるのか。つぎのようなものであればまあいいと思うのですが。

6分30秒からの「妊娠の適齢期」セクションに出てくるグラフは、改ざんされていることに加え、そもそもデータ操作がおかしい研究結果だという批判を受けているものです。ビデオ中では講師の吉村泰典氏が具体的な数値をあげながら女性の「妊娠の適齢期」について説明していますが、この部分は信用しないでください。

あとは、当該部分にさしかかったところでも、画面に同様の字幕表示を出すべきですね。

[2017-09-23 追記]

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