ブレイクダンスと格ゲーがまさかのコラボ。B-BOYとプロゲーマーがトークを繰り広げた「Red Bull BC One 2016×ストV」記者発表会レポート

　今年で初開催から13年目を迎える1on1のブレイクダンス・トーナメント「Red Bull BC One 2016」と，カプコンの対戦格闘ゲーム「ストリートファイターV」（PC / PS4）（以下，ストV）という異色のコラボレーションについての記者発表会が，本日（2016年4月28日）東京・渋谷のRed Bull Studios Tokyo Hallにて開催された。


　12月3日に愛知県体育館で開催される「Red Bull BC One」の世界大会「Red Bull BC One World Final 2016」。そのコラボレーションパートナーとしてストVが選ばれたことを端を発するこの発表会。会場にはストVのプロデューサー・杉山晃一氏とアシスタントプロデューサーの綾野智章氏，そしてRed Bull所属のプロゲーマー・ボンちゃんが招かれ，ブレイクダンス界の著名ダンサーとトークを繰り広げた。
　本稿では，発表会の内容を中心に，その模様をお届けしていこう。

コラボの内容は，キービジュアル，コラボクリップ，コラボコスチュームなど多岐におよぶ。今後ついては追って情報が公開されるとのこと

「ストリートファイターV」公式サイト

「Red Bull BC One」公式サイト（英語）

ブレイクダンスと格闘ゲームの意外な共通点とは？

　発表会は，今回のコラボが実現した経緯についての説明が，杉山氏と綾野氏から行われた。そもそもRed Bullは，ストリートファイターシリーズの世界大会である「Capcom Pro Tour」（以下，CPT）のスポンサーでもあり，両社には密接なつながりがあったらしい。そこで，このたびRed Bullからオファーがあり，二つ返事でOKしたと杉山氏は語った。

　また「Red Bull BC One 2016」と「ストV」は，どちらも1対1の真剣勝負であるところに共通点がある。「ストリートファイターII」のキャラクターセレクト画面では，飛行機で世界を飛び回り，各国の強者に会いに行く演出が描かれるが，CPTや「Red Bull BC One 2016」のツアーもまさに同様。世界各国で予選が行われ，強者が決勝大会に集ってくるのも，両者の共通点だと説明が行われた。

左からストV アシスタントプロデューサーの綾野智章氏と，プロデューサーの杉山晃一氏。ちなみに綾野氏は，以前にB-BOY（ブレイクダンサーのこと）が16人ほどズラりと並んだ写真を見たときに，「これは格闘ゲームのキャラ選択画面だな！」と感じたそうだ

　さらに杉山氏によれば，ストVはe-Sportsを牽引するタイトルとして作られたこともあり，今後はより若いプレイヤーにアピールする必要があるとのこと。そういった点においても，ストVと「Red Bull BC One」は同じところを目指しているという。
　最後に杉山氏と綾野氏は，ストVがゲームの枠を超えて広がっていくことを期待し，今回のコラボによって新しい文化が生まれるきっかけになってほしいと語り，トークを締めくくった。

発表会の冒頭では，「Red Bull BC One」の概要が映像で紹介された

　続いてはプロゲーマーのボンちゃんと，B-BOYのTaisukeさんのトークセッションがスタート。Taisukeさんは今回のコラボについて，「自分達もストリートから生まれたカルチャーで活動しているため，リアルストリートファイターだと思っている」と語る。対するボンちゃんは，「単なる格ゲーイベントではなく，ブレイクダンスのプレイヤーとチームを組んだパフォーマンス勝負といったものも，今後は広がるのでは」と自説を披露した。

ボンちゃん（左）とTaisukeさん（右）

　競技への取り組み方についての話題では，Taisukeさんが「自分を持っているかどうかが重要」と語った。ブレイクダンスは，審査員が個人の裁量でジャッジを下すものであり，そこに明確な審査基準などは設けられていないという。そのため誰が勝ってもおかしくはなく，自分のポテンシャルを発揮できるかどうかは，ダンスのうまさだけでなく，当日のパフォーマンスやメンタルの強さも関係してくるとのこと。
　一方ボンちゃんは，「自分のスタイルを大会で披露すること」と「試合で勝つこと」は必ずしも同義ではないと言い，プロである以上勝つことは重要ではあるが，それ以上に「どう勝つか」が大切なのだと語る。また，自身を応援してくれるファンや友人のためにも，信頼を裏切るようなプレイはできないともコメントしていた。

　さらにTaisukeさんは，B-BOYの世界が抱えている課題についてのトークを展開した。長い歴史を持ち，最近では小中学校の体育の授業に取り入れられていることもあって，技術面の向上が著しいブレイクダンスの世界だが，残念ながらプロのB-BOYは日本に存在していないとのこと。
　Taisukeさん自身，以前はインストラクター業と並行しながらダンスを続けていたそうだが，生徒達に「先生，今日は電車ですか」と言われて思わずハッとなったそうだ。小さな子供でもダンスに触れる機会が多くなり，その先には子供が夢見る対象としてのダンサーが存在しなくてはならない。それに気付いたTaisukeさんは，今年の3月にインストラクターを辞め，車を買ってプロのB-BOYとなることを決意したのだとか。今後は「Red Bull BC One 2016」といった大きな大会を目指し，プロとして挑戦を続けていきたいと語り，トークを締めくくった。

　Taisukeさんが選んだ道がそうであるように，格闘ゲームのプロもまた，未だ職業として確立されているとは言い難い側面がある。そういった意味でも，やはり両者には共通する点があるのかもしれない。今回のトークセッションは，そんなことを感じさせられたイベントだった。道なき道を行く開拓者となった2人，その今後の活躍に期待しよう。

「ストリートファイターV」公式サイト

「Red Bull BC One」公式サイト（英語）