ジョーダン・スピース(22=米国)の連覇の夢は水の中に消えた。首位から出て、前半32とスコアを伸ばして独走態勢に入ったが、後半41と大崩れして73。通算2アンダー286で3打差2位に終わった。12番パー3で2度小川に入れるなど「7」をたたいたのが致命的だった。3打差5位から出たダニー・ウィレット(28=英国)が通算5アンダーでメジャー初優勝を飾った。

 今年の「オーガスタの魔女」はスピースに残酷だった。12番パー3、ピンまで150ヤードの第1打はグリーン手前の斜面を転がり、小川に落ちた。大観衆にもスピースの心にも衝撃が走った。「何をすべきか分からなかった」。第3打となる80ヤードからのショットはダフって、直接、小川の中へ。第5打でグリーン奥のバンカーに入れ、6オン1パットの「7」だ。昨年の第1日から守ってきた首位の座から陥落した。

 安全策が裏目に出た。6番からの4連続バーディーもあって、9番終了で2位に5打のリード。「後半はパープレーで勝てると思った。それで守りに入ったのがいけなかった」。10番では第1打に3番ウッドを握ったが、スイングに思い切りがなく、球は右へ出て結局ボギー。「11番も同じだった」。今度はドライバーで右の林に入れて、連続ボギーだ。「12番では集中力がなかった。せめて『5』で上がっていたら…」と声を絞り出した。

 連覇ならニクラウス、ファルド、ウッズに続く史上4人目の快挙だった。それも2年連続で第1日から首位を走る完全優勝のはずだった。

 表彰式では恒例通り前回王者として、優勝者にグリーンジャケットを着せると「こんなにつらいセレモニーはなかった」と正直にもらした。

 悲劇的な敗北に「立ち直るのには時間がかかるだろう」とも。若きスターのゴルフ人生に新たな試練が訪れた。