仙台でオフィス集約加速 日本公庫やキリン、利用効率化
仙台中心部で企業がオフィスを集約する動きを強めている。日本政策金融公庫が支店の統合を予定、キリンホールディングスもグループ企業を同じビルにまとめた。賃料負担を軽減するのに加え、グループ間の連携を円滑にして営業を強化する狙いがある。オフィス空室率が高い仙台の賃料相場の下落も企業のオフィス集約を促進している。
日本政策金融公庫は来年2月、仙台駅西口の「東京建物仙台ビル」に仙台支店を移転させる。日本公庫は2008年10月に政府系金融機関の4組織が統合して発足した。仙台では統合後も「国民生活」「農林水産」「中小企業」の3事業が別々に支店を構えていた。
大阪や名古屋では既に集約を終えており、仙台もその一環。会議室や更衣室の共用でオフィス利用を効率化させる。融資を申し込みに来た顧客を別の事業部門にあっせんすることもあり、「離れた場所まで移動してもらわなければならず迷惑をかけていた」(日本公庫仙台支店)という。
キリンホールディングスは今月1日、グループ企業の仙台支店を1棟のビルに集約した。清涼飲料事業のキリンビバレッジなどキリンHD傘下の3社がもともと入居していた「仙台橋本ビル」に、キリンビールやメルシャンなど別の3社が移った。キリンビバが使用している階とは別のフロアに空室が出たため移転を決めた。
ビールとワイン、清涼飲料は別々の事業会社が扱っているが、飲食店などに共同で営業する機会は多い。同じビルに入居して連携を密にする。
あいおいニッセイ同和損害保険は10月の合併による発足に合わせて支店を統合した。旧あいおい損害保険が08年に建設した自社ビルに旧ニッセイ同和損害保険の従業員らが移転した。旧ニッセイ同和損保が使用していた自社ビルは賃貸に回す。
オフィス仲介大手の三鬼商事によると、仙台の10月末時点のオフィス空室率は20.1%と主要都市で最も悪い水準にある。新築ビルでも空室を埋めるために、賃料引き下げや一定期間は無料にする「フリーレント」を実施している。
既存ビルとそれほど変わらない賃料で、まとまった広さのある新築ビルに移転できる状況が、企業にオフィス集約を促す一因になっている。