ハードウェア

あの日の思い出を再体験させてくれる力がOculus Riftには備わっている

By Sergey Galyonkin

Facebookによって約2000億円で買収されたことから数々の波乱を巻き起こすという事態にも発展している没入型3Dヘッドアップディスプレイの「Oculus Rift」は、2台の高精細ディスプレイで目の前に映像を映し出すことで並外れた仮想現実空間を生みだすことができるデバイスです。主にゲームなどの分野での利用が想定されているOculus Riftですが、病魔に冒されて残された時間が少なくなってしまったある女性にとっては、思い出の風景などをまるで現実の光景のように体験させてくれる魔法のようなデバイスだったようです。

How the Oculus Rift helped Roberta Firstenberg battle cancer
http://www.theriftarcade.com/how-the-oculus-rift-helped-roberta-firstenberg-battle-cancer/

Oculus Rift helps dying woman experience the outside world virtually | Polygon
http://www.polygon.com/2014/4/18/5625660/oculus-rift-cancer-patient

ロバータ・ファーステンバーグさんはガンに冒され、残された命はあと数か月であることを告知されました。それ以来病気のせいで体が弱ってしまい、次第に自宅の部屋から一歩も外に出られない状態に。「もう一度外に出て、自分の庭を歩いてみたい」と孫娘のプリシラさんに語った所からこのエピソードはスタートします。


ロバータさんが実際にOculus Riftを装着したときの様子は、以下で公開されているムービーで見ることができます。

Grandmother Uses Oculus Rift as Therapy - YouTube


ムービーを撮影したのは、ロバータさんの孫娘のプリシラさん。ある日、祖母のロバータさんがガンに冒されており、もう外を出歩くだけの体力が残されていないことを知りました。


せめて自宅の庭を歩いてみたいと望みを語ったロバータさんですが、もうそれだけの体力は残されていない様子……。そこで、プリシラさんはOculus Riftの開発チームに連絡をとり、祖母の望みをかなえる手助けを願い出ることにしました。


そして後日、プリシラさんのもとに1台のOculus Riftが届けられました。


こちらがOculus Riftを装着する前のロバータさんの様子。ソファーに腰掛けていますが、体力が弱って一歩も外には出られなかったそうです。


Oculus Riftを装着し、バーチャルな世界の中を動き回るロバータさん。手にはゲーム用のコントローラーが握られ、スティックを使って前後左右の動きを操作しているそうです。


不意に手を伸ばすロバータさん。画面の中に好きな蝶が飛んできたので、思わず触ろうとして手を出していました。


「まるで、本当にその世界の中にいるみたいな感覚だったわ。どれも美しくて、色鮮やかで、本当にそこにあるみたいな感覚で。途中で階段が出てきたんだけど、その階段を上ったのよ!本当なら階段を上がることなんてできないけど、まるで飛んでいるみたいに階段を上がっていったわ」と目を輝かせるロバータさん。目の前に蝶が現れた時は「蝶にキスしたくなったわ」と楽しそうに語ります。


そんなロバータさんがまだ元気なころ、庭でガーデニングをしていると、車体の上にカメラを取り付けた奇妙な自動車が家の前を通りかかったことがあったとプリシラさんに語りました。プリシラさんはそれがGoogleストリートビューを撮影するストリートビューカーだと直感。確認したところ、ガーデニング用具を持つロバータさんと、愛犬「スペック」の姿が映っているページがあることを発見しました。

そのことをロバータさんに伝えてOculus Riftで見てもらったところ、ロバータさんは非常に喜んだといいます。しかし、ほどなくその表情は曇ってしまうことに。まだ元気な自分と愛犬「スペック」の姿を見て思い出がこみ上げ、涙を流してしまったそうです。ロバータさんにとってはリアルで濃密な思い出を呼び起こさせる力がOculus Riftに備わっていたことを教えてくれる出来事でした。


「ガンに冒されていることがわかっている私と、私の家族にとって、とても貴重な時間でした。自分のこれまでの経験や思い出にもう一度触れることができて、まるで新しいレベルのセラピーのようでした」と語るロバータさん。残念ながらこの後に帰らぬ人となってしまいました。


ゲームの分野での利用が取りざたされることも多い没入型ヘッドアップディスプレイですが、このようにもっとパーソナルな体験にも役立つことを教えてくれるようなエピソードとなっています。

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in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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