全席指定、エリア選択不可、本人確認アリ!

8日に行なわれたJ1リーグ戦で起きた事件が物議を醸しています。各方面からの報告によると、ホーム側のゴール裏自由席…いわゆるサポーター席へ入場するためのゲートに「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕が掲げられており、それが人種差別的な意図の横断幕ではないかと騒がれているというのです。どういう意図で掲げられたものかは掲げた当人からの発信がないようなのでハッキリとしませんが、普通に読めば「日本人以外お断り」と解釈すべき文面。いわゆる人種差別的な内容と読まれても仕方ないものです。

↓所属選手からも写真つきの報告が!



所属選手の書きぶりを見ると、このメッセージは「誇りをもってこのチームで闘う選手」に対するものと解釈している様子。選手に対してのものなのか、観客に対してのものなのか。いずれにしても、この横断幕の存在について選手たちも把握し、残念に思っていることは確かなようです。

↓クラブからも公式に遺憾の意が表明された!
<サガン鳥栖戦での出来事について>

本日行われましたJリーグ第2節サガン鳥栖戦におきまして、差別的と解釈されかねない発言と行為がありました。
クラブとしましては、差別的発言・行為は断じて許されるものではないと考えています。
浦和レッズは「差別的発言」の禁止など「重点禁止6項目」の遵守を呼びかける「SPORTS FOR PEACE!」プロジェクトを2014シーズンから強化して取り組んでおります。
差別の最大の抑止は一人一人の心にあると考えております。そのために、浦和レッズは今後も「SPORTS FOR PEACE!」プロジェクトの啓発を軸に訴えを続けて参ります。
なお、今回の出来事につきましては、事実確認のうえ適切な対応に取り組んで参ります。
皆様のご理解とご参画のほど、何とぞよろしくお願いいたします。

浦和レッドダイヤモンズ

http://www.urawa-reds.co.jp/topteamtopics/%E3%82%B5%E3%82%AC%E3%83%B3%E9%B3%A5%E6%A0%96%E6%88%A6%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%87%BA%E6%9D%A5%E4%BA%8B%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/


クラブと選手が遺憾に思っているのですから、これがホーム側のサポーターがしたことなら「サポート」とは言えない行為ですし、むしろクラブの価値を毀損する迷惑行為といえるもの。いずれにせよ、掲示された側のクラブには何ひとつ得のない行為です。

年に何回かくらいずつこういう事件が起きますが、いい加減この手の事件を起こす輩を排除することはできないものでしょうか。この手の事件のたびに繰り返される「一部のサポーターが…」というやり取りもいい加減飽きてきましたし、「再発防止に向けて取り組んでまいります」という永遠に達成されない意気込みも虚しいばかりです。

もっとも今回の場合、クラブ側も即時撤去的な判断をするのは難しかったんだろうと思います。横断幕を掲示すること自体に対しては、基本的に寛容なわけですから。誹謗中傷でないと判断すれば監督批判・選手批判などのメッセージすら黙認してきた歴史の中で、言葉の持つ意味の解釈を巡り「必ずしも人種差別的な内容とは言えないんじゃないかなぁという気がしないでもないような感じも受けないということもなくはないかもしれない」くらいの余地があるモノを強制排除する判断は、現場レベルでは難しいものがあります。

「出場選手が日本人だけだなぁと思ったので掲示した」とか「フォルランみたいな外国籍選手を獲得してこないフロントへの不満を表明した」とか怖い人に言い張られたら、面倒ですからね。ましてや、係員ですらない「いちファン」が止めようと思えば、怖さ・面倒さは大変なものになりますし。

僕は、今回の事件及びこれまで起きた事件の根底には、「サッカー場内部だけで通じる特殊常識」を容認してきたことの問題があると思っています。

例えば、もしソコに掲示されていたのが「●● Supporter Only」という横断幕であったならどうでしょう。それは特にクラブ側からも止められないし、問題化もしなかった行為だと思うのです。サポーター席の入場ゲートなんですから、サポーターオンリーなのは当たり前という風に思う人が多いでしょうから。

でも、実は違いますよね。サポーター席という認識であっても、その実態は「ゴール裏側の自由席」にすぎないのです。チケットを持っていれば誰でも入っていい、好きなチームを応援していいはずのエリアです。アウェイ側のユニフォームを着て、ホーム側のゴール裏自由席に座ったって別にいいはずなのです。それが一般社会の常識です。

「ホーム側のサポーター席にアウェイ側のサポーターはきてはいけない」
「アウェイ側のサポーター席にホーム側のサポーターが行くのも不可」
「もしそのルールを犯せば当人に危険が及ぶかもしれない」
「境界線付近での揉め事を回避するために緩衝エリアを設ける」
「負けた試合のあとは移動のバスを取り囲んで文句を言う」
「成績不振のチームでは試合後に居残って首脳陣の解任を要求」

こんな話、ほかのエンターテインメントではまず聞きません。サポーターが…いや、「サポーターの名を借りた迷惑な客」が、サッカー場内部だけで通じる「気に入らないものは威力によって排除してよい」という特殊な常識を押し通してきたことで、一般社会の常識が捻じ曲げられているのです。そうした特殊常識が「相手方サポーター」だけでなく自分の気に入らないものすべてにまで拡大した結果、「JAPANESE ONLY」横断幕も生まれたのではないでしょうか。

この横断幕が掲げられたのが「ゴール裏自由席への入場ゲート」であるという点にも、サッカー場内部の特殊常識の存在を感じます。もしすべての外国人を排斥しようとする意図だったなら、この横断幕はスタジアムの入場口に掲げるべきですよね。そして、メインスタンドやバックスタンドにも横断幕を貼るべきところです。ていうか、別にわざわざサッカー場でやらないで、近所の公園とかでデモでもしたらいいんじゃないでしょうか。しかし、実際に掲示されたのは「ゴール裏自由席への入場ゲート」です。おそらくは、掲げた側にも何となく「ココからはやっちゃっていいエリア」という意識があったのでしょう。

本気でこの手の事件に対処しようと思うなら、そういう「特殊常識」ごとなくすしかないのではないでしょうか。

まず第一手として、コンサートなどにあるような「全席指定、エリア選択不可」という席割り。特定エリアに「特殊常識」を是とする人が固まれば、そのエリアは「特殊常識」によって支配されます。それを席割りによって止めさせるのです。

そしてチケット購入時および入場時の本人確認。オークションサイトなどを経由して、本来の席割りから移動することを本人確認によって妨げるのです。僕自身3万人規模のコンサートで本人確認をされた経験がありますが、入場に大変な時間が掛かるなど不都合は多いものの、やってやれないことはありません。これは、やる気の問題です。

また、掲出物や応援グッズへの制限も検討すべきでしょう。自作の横断幕や旗などはクラブ側に事前にデザインを提出し、承認を得たものだけを使えるようにすること。掲示できる場所や時間も掲示物ごとに事前に指定され、その場所以外での掲示は認めないこと。そして、承認を得ていないものは、どんなにフレンドリーな内容でも排除すること。

クラブによって事前審査の有無はマチマチのようですが、この確認は本来あって然るべきものと思います。クラブにお金を落としてくれるスポンサーの看板よりデカイ横断幕で自己主張されたら、看板よりソッチに目がいくじゃないですか。まして、予告なく悪口でも掲示されたら困るじゃないですか。微妙にキナ臭いものも、じっくり時間をかけて検討し、ちょっとでも不安があればNGにしたいですからね。

とまぁ、非常に息苦しい感じにはなりますが、お客側の常識に委ねていては平穏なイベント運営ができないようなら、あらかじめ運営側でガチガチの規制を設けるしかなくなります。2020年には東京五輪があり、テロリズムの排除なども意識しなければいけないタイミングですし、新たなやり方を導入するにはいい頃合いなのかもしれません。

「サポーター」というつかみどころのない集団に紛れさせるのではなく、「迷惑な客」として特定し、次回以降排除していかなければ、多くの善良なファンとクラブ・選手が迷惑をこうむるばかり。

いちいち本人確認とかされたら面倒臭いですけど、怖かったり、差別的だったりするよりはマシですからね。


次戦からは入場口に「良識ある人ONLY」の横断幕を掲げておきましょう!