『ゴルフ』7と新型『フィット』が、個人的な最終選考2大車種となった。ともに優れたクルマで、商品性の点でも手堅くまとめられている。
どちらもそれぞれのクラスのビッグネームだけに、ソツのない出来、正常進化に見えた。が、幾度か試乗のチャンスを通してジワジワと感じたのは、最初は一見かわらないように思えたゴルフの驚くべき進化ぶりだった。乗り心地、操縦性、操作性、内外観の質感など、明らかに先代より磨きがかけられた。しかも初期モデルながら今回のモデルは、歴代のどのゴルフよりも“出来上がっている感”がある。初期モデルにありがちな不具合の気配がどこにもない。しかもアップライトだった従来型よりやや低めの着座位置など、クルマの立ち位置も微妙に上級化させた。
対してフィットは、iPhoneでいえば“Sモデル”といったところか。最新のエンジニアリングが投入されてはいるが、スペックもコンセプトもこれまでの延長線上。経営判断からすれば失敗は許されないだろうし、開発者のジレンマもあったのだろう。が、東京モーターショーで「枠にはまるな」と自ら打っていたけれど、ホンダにはフィットのような多くの人の生活スタイルに入り込むクルマならばこそ、もっと驚きや楽しみが味わえそう…と感じる、かつてのような果敢な攻めを期待したい、のである。
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。