ランニングは、比較的簡単に始められる運動です。でも慣れてきたような気がしてきたあたりから、かえってケガをしやすくなったり、細かいことが面倒になって上達のチャンスを逃したりといった「壁」に突き当たりがちです。この記事では、ランニング・コーチのJason Fitzgeraldさんにより良いランナー・ライフを送るための秘訣を伝授してもらいましょう。

何にでも後から振り返ってからこそ、わかることがあります。私は13年近くランナーとしてレースに出場してきましたが、過去のトレーニングで「あそこを変えておけばよかった」と思う部分が山ほどあります。多くのミスを犯しました。ちょっとした判断ミスが、ケガや、レースでの大失敗を招きます。中には半年間、まったくランニングができなくなったこともありました。

私のケガの多くは、短気な性分や、「負傷とは無縁だ」という思い上がりから起きました。練習で走る距離を3~4キロほど減らすのを嫌がったり、筋トレをサボったり、といったことです。おおざっぱな性格がアダとなり、数々の負傷に悩まされました。アキレス腱の炎症、腰痛、腸脛靱帯炎(別名ランナー膝)、シンスプリント(すねの痛み)、大腿四頭筋の肉離れ――これらすべてを私は経験しています。

けれども、これは過去の話です。最近では小さなことにも気を抜かないよう、細心の注意を払うようになりました。効果はてきめんです。

何しろ、2009年以来大きなケガは1つもしていないのですから! この記事を書いている時点(2011年3月)で、2カ月以上の間、毎日休まずにランニングを続けています。2011年の累積走行距離は6000キロ近くに達する見込みですが、これは2010年の実績を20%上回る距離なのです。

最高のランナーになれるよう、皆さんには、私の過ちから学んでもらえればと思います。この記事に限って言えば、「私のやっていることではなく、言っていることに従え」という方が正しいはずです。では前置きはこのくらいにして、私がランニングを始めた時に知っておきたかった「7つの掟」を以下にご紹介しましょう。

1.長距離走で成果が出るまでには時間がかかる

それも、かなりの時間がかかります。オリンピック選手をはじめとしてさまざまランナーの指導実績があるランニング・コーチのGreg McMillan氏は、トップレベルの選手に対し、「可能性が花開き始めるまでには2~3年はかかる」と伝えているそうです。

ちなみにこれは、高校や大学で積み重ねてきた練習期間に加えてという意味です。ですから、実際にはほぼ10年かかる計算になります。長距離走で成果を出すには、粘り強い継続、そして徐々にトレーニングのパターンを変え、力をつけていくことが肝心です。

私は以前、それまで週65キロほどだった走行距離を、いきなり週110キロ以上にまで増やしてしまうというミスを犯したことがあります。もちろん身体を痛めました。また、週100キロ弱から週145キロに増やしたこともあります。この時もケガをしました。私は徐々に負荷を増やすという、ランニングの鉄則を無視していたのです。とにかく焦りは禁物です。まずはゆったり構え、走行距離を徐々に伸ばしていく方が、長い目で見ると速く走れるようになります。上達に近道はないのです。

2.ただ走るだけではダメ

以前の私は、速く走るためには、ランニング以外の運動は不要だと思っていました。心臓と肺を強化すれば十分という認識だったのです。体幹トレーニングは一度もやったことがなく、フォームを見直すドリルもたまにやる程度。ウェイトトレーニングの部屋は避けて通っていました。これが大間違いだったのです

幅広くバランスが取れた運動能力を身につければ、ケガの防止にもなりますし、より効率の良い走りが実現できます。ひいては、ケガによる中断なしに、長期間トレーニングができるようになるのです。

3.小さなことにも手を抜かない

ランニングを健康的に続けるには細かな事柄をしっかり守るのが肝心です。

必要な時は忘れずにアイシングをし、きついトレーニングの後には昼寝をしましょう。健康な食生活を心がけ、本格的なケガになる前に、ちょっとした痛みもでも手当てをしましょう。ランニングは健康にいい運動ですが、あなたが走り続けられるかどうかは、その前後のケアにかかっています。

自分専用のトレーニングメニューを作成したり、「トレーニング計画を守れなかったら何かをおごる」と友達に宣言するという手もおすすめです。

4.できるだけ底の薄い靴を選ぶ

以前の私はわりと「ゴツい」タイプのランニングシューズを愛用していたのですが、「なぜいつもアキレス腱が痛くなるのだろう?」と不思議に思っていました。また、エクササイズ中もフラットシューズを履いていませんでした。しかし時代は変わりました。

今では、底の薄いシューズを履き、戦略的に裸足でのランニングを取り入れると、トレーニング全体の効果が上がることが、数々の実例から明らかになっています

1週間に1度は裸足でランキングする機会を設け、それ以外の日には自分に合った軽量のランニングシューズで走ってみましょう。これだけで、ケガのリスクはたちどころに減ります。また膝下や足の筋肉が鍛えられ、より効率良く走れるようになります。底の薄い靴の方がきれいなフォームで走りやすくなりますし、裸足ならなおさらです。

軽いタイプのシューズに履き替えたなら、徐々に慣れていくようにしましょう。軽量シューズには多くのメリットがありますが、よく考えて、徐々にトレーニングメニューに組み込んでいかないと、その効果も台無しです。

5.キツいトレーニングは抑える

しばしば、レースそのものよりもキツいトレーニングが行われています。「身体の限界を試す」といったフレーズで形容されるようなものです。

けれども、こうしたトレーニングはそれほどやる必要はないでしょう。ケガのリスクが増えますし、すぐに燃え尽きてしまうからです。やりすぎると、気力も萎え、疲労困憊してしまいます。

普段のトレーニング・サイクルには取り入れず、目標にしているレースが4~8週間後に迫ったあたりで数回やる程度に抑えましょう。これはあくまで、普通のトレーニングを積み重ねた上でのおまけ的な存在なのです。

6.ランニングフォームは大事。練習で磨こう

高校時代はランニングフォームなどまったく気にかけず、フォームを磨くドリルもほとんどやりませんでした。けれどもそれは間違っていました。

ほかのすべてのスポーツは、フォーム・トレーングを大いに活用しています。水泳選手なら、正しい泳ぎのフォームを身につけることを最優先します。バスケットボールのコーチも、「脇を締めろ!」「腰を曲げるな!」と、口を酸っぱくして選手に言い聞かせています。

運動におけるほかの動きと同様に、ランニングもスキルの一種です。ケガを避け、速く走るためには、効率良いフォームを身につける必要があるのです。変なクセがついて変えにくくなる前に、早いうちから正しいランニングフォームを身につけましょう。

7.ちょっと違う道を走ってみる

私は、あらゆるランナーにとって、山野を走るトレイルランニングには大きなメリットがあると確信しています。土の地面は舗装道路よりも柔らかく、きついトレーニングの後の回復も早まります。またさまざまな条件の地面を走るので、バランス力が鍛えられ、身体を安定させる筋肉をより多く使えます。

ケニアには、「道路は元気な足を殺してしまう」という言い回しがあります。ケニアのランナーは、ほとんどのトレーニングを、起伏のある、舗装されていない道で行います。ケニア人選手がケガによる中断なくトレーニングできているのも、でこぼこ道の効果かもしれません。身体にはやさしいですし、筋力もつきますから。あなたも毎週のランニングのうち、何回かは舗装道路を走るのをやめ、ぜひトレイルランニングに挑戦してみてください。

鳥の鳴き声や木の葉がこすれあう音を聞きながら走るのは、車の流れを横目にしながらのランニングよりもずっと快適ですよ!

7 Things I Wish I Knew When I Started Running | Strength Running

Jason Fitzgerald(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)

Photo by Thinkstock/Getty Images.