子ども向けヒール靴:ちょっと待って

毎日jp
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 子ども向けにヒールが高い靴や厚底のサンダルが出回っている。
脚長効果があり、大人っぽく見える。
でも、ちょっと待って。成長には悪い影響しかない。
おしゃれもいいけど、足が悲鳴を上げているかも……。

 ●痛み、歩けないほど

 相模原市南区の小学5年生の女児(10)は、
2年生の時にヒールが約4センチもある靴を履き始めて以来、
両足の小指の付け根辺りに痛みを感じるようになった。
ミュール(かかとを覆わないサンダル)を履いて出かけると、
途中で歩けなくなってしまうほど。
「背が高く見られたい」と我慢していたが、
通学用のスニーカーを履いている時も痛みが取れず、
今春、東京都内の専門医を受診した。

 診断は「外反扁平(へんぺい)足。このままでは外反母趾(ぼし)になる」。
土踏まずがなくなり、足首から先が体の内側に向かって曲がっていた。

 今は、足を矯正するためにポリプロピレン製の中敷きを使い、
かかとから土踏まずの辺りまでを固定している。
大人顔負けのヒール靴で決めている同級生もいるが、
女児は「痛いのはもういや」と、靴の幅を調節できる
ひも付きのスニーカーしか選ばなくなった。
女児の母親(33)は「小学校に入る前までは、子どもの足に気を使って、
靴選びにも注意していただけに、残念。
おしゃれでかわいいヒール靴が多いので、
子どもから『欲しい』と言われると、つい買ってしまった」と話す。

 ●元に戻らない

 足のトラブルの原因は、遺伝や生まれつきの足の形、
歩き方の癖なども大きく、靴だけでトラブルを完全になくすことは難しい。
とはいえ、靴の選び方によって症状を悪化させてしまうことがあるのも確かだ。

 「ヒールが4センチ以上の靴は、大人にも良くない。
骨が未完成の子どもが履くと、足が変形して元に戻らなくなる」。
女児を診察した「足の診療所」(東京都港区)の桑原靖院長は指摘する。

 ヒール靴を履くと、かかとが上がる分、アキレスけんが短くなる。
体重が足の前部にかかり、靴の中で締め付けられた親指は体の外側に、
小指は体の内側に曲がる。成長途上の子どもは骨が軟らかいため、
当然、大人よりもダメージは大きい。

 「歯の矯正は大人になってもできますが、
足の矯正は10歳を過ぎると難しくなります。
どうしても履きたければ、できるだけ短時間で。
履いた後は必ずストレッチをするように」と桑原さんは訴える。

 靴の中敷きを作る義肢装具士の大平吉夫さんによると、
ヒール靴を履けば、足だけでなく背中や骨盤にも無理な姿勢を強いるため、
猫背になりやすいという。
「将来かっこいい脚や姿勢になりたいなら、
小学生の間はヒール靴を履かない方がいい」と大平さん。
夏はサンダルやミュールなど足元が不安定な靴が多いが、
大平さんは「冬のムートンブーツも足が靴の中で揺れ動いて良くない」と指摘する。

 ●厚底にも注意

 厚底の靴も、足のトラブルを招きやすい。
かかとから着地して足の裏に体重を乗せ、指先で地面を蹴る
−−という歩行の基本動作ができなくなるためだ。
NPO「オーソティックスソサエティー」(東京都千代田区)の理学療法士、
佐々木克則さんは「厚底靴では膝を伸ばせず、前傾姿勢になり、足を引きずった
『ペタペタ歩き』しかできない。ねんざもしやすくなる」と話す。

 足の骨格が完成するのは大体12歳。
子どものうちは筋力や靱帯(じんたい)も弱く、転倒しやすい。

 もし子ども向けにサンダルを選ぶなら、ヒールの高さは1センチほど。
足を覆う部分が多く、ストラップが付いているものが良いという。
同NPOは全国で「親と子どもの足の健康広場」を開き、
子どもの靴の選び方などを紹介している。
ホームページはhttp://www.orthotics−society.or.jp/。【鈴木敦子】
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