リチャード3世の遺骨発見報道、その英文に注意

 昨年9月の報道から5ヶ月経ちましたが、リチャード3世の物と確定したようです。

 2012年9月に英イングランド中部レスターの駐車場から発掘された500年前の男性の遺骨は、中世のイングランド国王リチャード3世(1452〜1485)のものであることが4日、確認された。レスター大学の考古学チームが、リチャード3世の姉の直系子孫2人のDNAを用いて鑑定を行っていた。

http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013020500019

 リチャード3世といえば「背中が曲がっている」(hunchback 猫背)というイメージがあるわけですが、今回の遺骨の発見で、背骨がだいぶ歪んでいた――そのせいでおそらく身長は低かったであろう――ことが判明しました。ただ、いわゆる hunchback ではなかったようですが。

http://www.newyorker.com/online/blogs/closeread/2013/02/the-humiliation-of-richard-iii.html
 いろいろと想像をかきたてられますね!
 それはさておき、イギリスやアメリカの報道を見て「やっぱり」と思ったことがありました。

http://www.tulsaworld.com/blogs/post.aspx?Found_in_the_winter_of_our_discontent_Richard_III_skeleton_confirmed/57-18853

King Richard III's Bones Found Under English Parking Lot | Popular Science

Is Richard III's Leicester the next tourist hotspot? | Travel | The Guardian
 さきほどざっと目を通したなかでもすでに3つの別の記事に出てきますね、この"the winter of our discontent" (私たちの不満の冬)とそれに類似する表現。最初の記事などはタイトルに使用していますね。
 これ、シェイクスピアの劇『リチャード3世』の冒頭部の非常に有名な語句を典拠としているのです。

Now is the winter of our discontent
Made glorious summer by this son of York.

――今やこの私たちの不満の冬は
  このヨークの後継ぎによって光り輝く夏になった。
「光り輝く」と訳したのは、この son (息子)が sun(太陽)と掛詞になっているので少し工夫しました。
 それはともかく、英米の報道ではしばしばこのようにシェイクスピア等の名言をさらっと改変して利用することがあります。特に今回は、いかにも、という感じですよね。
 ある語句や文章が古典の引用であることに気づかないと、とんでもない誤解をすることもありますのでご注意を。(イギリスは現在国中で何か不満が充満しているのだろうか・・?等々)
 日本人の英語学習者からすれば、なんと学を衒った文章か・・・と辟易するかもしれませんが、これはペダントリーでも何でもなく、普通のレトリックです。私たち東洋人も、かつては大いにやっていたことです。
 今回は、遺骨の正体が判明したのがちょうど冬だったからこそうまい具合に利用できた台詞ということになります。