金融政策の柔軟性保つ物価目標の運用を
政府・日銀がデフレや円高の克服に向け、前年比2%の消費者物価上昇率を目標に掲げる共同声明をまとめた。日銀はこれを踏まえて金融緩和の強化を決め、政府も成長戦略の具体化を急ぐ。
新たな枠組みで強力な金融緩和に動くという判断を尊重したい。政府・日銀が経済再生への連携を深めるのも意味がある。だが物価目標を機械的に運用し、金融政策の柔軟性や独立性を損なわぬよう細心の注意を払うべきだ。
日銀は1%の消費者物価上昇率を中長期的な物価安定の「めど」と位置づけてきた。それを2%の「目標」に格上げし、できるだけ早期の実現を目指すという。
同時に金融緩和の新手法を導入することも決めた。2014年から無期限で月13兆円の国債などを購入し、資産買い入れ基金の残高を14年中に111兆円に増やす。
今の日本には大胆な金融緩和が必要だ。今回の措置で経済再生への強い意志を示し、実体経済や市場心理の好転につなげようというのは理解できる。日銀には政治圧力に屈したとの不満もくすぶっているが、金融緩和の効果を引き出す努力を怠ってはならない。
問題は物価目標の運用である。2%の消費者物価上昇率へのハードルは現時点で高いといわざるを得ない。投機マネーの拡大といった金融緩和の副作用や経済・市場動向の変化に対し、柔軟に対応できる余地も残した方がいい。
日本も海外にならって達成時期の特定を避けたのは賢明だが、安倍晋三首相は「一日も早く実現するよう努力してほしい」と訴えた。物価目標を盾に硬直的な金融緩和を迫ったり、緩和手段に口をはさんだりするのは慎むべきだ。
忘れてはならないのが財政規律の維持である。政府がむやみに国債を増発し、日銀に尻ぬぐいを強要するのでは、財政・金融政策の信用を保てなくなる。安倍政権はその点を肝に銘じてほしい。
経済再生の責任を日銀だけに負わせるのでも困る。政府も共同声明に盛り込んだ公約を守り、革新的な研究開発や技術革新などを促す施策を打ち出す必要がある。
事業規模20兆円を超える緊急経済対策は、防災などの公共事業を柱に据えた。景気対策としての公共事業には、即効性はあっても持続力がない。一時的なカンフル剤だけに頼らず、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加や法人減税、規制緩和を急ぐべきだ。