ふろむ京都・播州山麓

京都の西山&播州山麓から、気ままな雑話をお送りします。長期間お休みしていましたが、復活近しか?

平均寿命

2013-01-22 | Weblog
 麻生副総理が、また失言したとマスコミが報じています。本人は後に不適切だったと撤回し、議事録からも削除されたそうですが、1月21日付けウェブ版速報をみてみます。

 麻生太郎副総理兼財務相は21日開かれた政府の社会保障制度改革国民会議で、余命わずな高齢者など終末期の高額医療費に関連し、「死にたいと思っても生きられる。政府の金で(高額医療を)やっていると思うと寝覚めが悪い。さっさと死ねるようにしてもらうなど、いろいろと考えないと解決しない」と持論を展開した。また、「月に一千数百万円かかるという現実を厚生労働省は一番よく知っている」とも述べ、財政負担が重い現実を指摘した。

 「さっさと死ねるようにしてもらうなど、いろいろと考えないと解決しない」など、国民の非難を受けることになるでしょう。しかし言い方は不適当でも、言わんとしたことは決して間違ってはいないという意見もあります。
 北海道大学医学教授の宮本顕二氏の昨年6月に発表された「欧米にはなぜ、寝たきり老人がいないのか」を転載します。読売新聞医療サイト「ヨミドクター」、「今こそ考えよう高齢者の終末期医療」2012年6月20日。

 ヨーロッパの福祉大国であるデンマークやスウェーデンには、いわゆる寝たきり老人はいないと、どの福祉関係の本にも書かれています。他の国ではどうなのかと思い、学会の招請講演で来日したイギリス、アメリカ、オーストラリアの医師をつかまえて聞くと、「自分の国でも寝たきり老人はほとんどいない」とのことでした。一方、我が国のいわゆる老人病院には、一言も話せない、胃ろう(口を介さず、胃に栄養剤を直接入れるため、腹部に空けた穴)が作られた寝たきりの老人がたくさんいます。
 不思議でした。日本の医療水準は決して低くありません。むしろ優れているといっても良いくらいです。
 「なぜ、外国には寝たきり老人はいないのか?」
 答えはスウェーデンで見つかりました。今から5年前になりますが、認知症を専門にしている家内に引き連れられて、認知症専門医のアニカ・タクマン先生にストックホルム近郊の病院や老人介護施設を見学させていただきました。予想通り、寝たきり老人は1人もいませんでした。胃ろうの患者もいませんでした。
 その理由は、高齢あるいは、がんなどで終末期を迎えたら、口から食べられなくなるのは当たり前で、胃ろうや点滴などの人工栄養で延命を図ることは非倫理的であると、国民みんなが認識しているからでした。逆に、そんなことをするのは老人虐待という考え方さえあるそうです。
 ですから日本のように、高齢で口から食べられなくなったからといって胃ろうは作りませんし、点滴もしません。肺炎を起こしても抗生剤の注射もしません。内服投与のみです。したがって両手を拘束する必要もありません。つまり、多くの患者さんは、寝たきりになる前に亡くなっていました。寝たきり老人がいないのは当然でした。
 さて、欧米が良いのか、日本が良いのかは、わかりません。しかし、全くものも言えず、関節も固まって寝返りすら打てない、そして、胃ろうを外さないように両手を拘束されている高齢の認知症患者を目の前にすると、人間の尊厳について考えざるを得ません。
 家内と私は「将来、原因がなんであれ、終末期になり、口から食べられなくなったとき、胃ろうを含む人工栄養などの延命処置は一切希望しない」を書面にして、かつ、子供達にも、その旨しっかり伝えています。

 国ごと、また宗教によって、死生観や医療観は異なるのでしょうが、人間個々の終末のことはもっともっと議論されるべき大きな課題です。
 上記で取り上げられた国の平均寿命をみてみます。男女合わせての数字ですが、
日本82.7歳、オーストラリア81.5、スウェーデン80.9、イギリス79.4、アメリカ79.2、デンマーク78.3。
 反対に寿命の低い国をウィキペディアで見てみました。197カ国の統計が載っていますが、50歳未満を低い国から並べます。
 アフガニスタン43.8歳、ジンバブエ、ザンビア、レソト、スワジランド、中央アフリカ、シェラレオネ、コンゴ民主共和国、ギニアビサウ、ナイジェリア、モザンビーク、マリ、チャド、ソマリア、ルワンダ49.9。
 最低のアフガニスタン以外は、すべてアフリカの国々です。彼らの無念で悲痛な終末について、超高齢化国のわたしたちは、ほとんど考えることがない。問題はここにもあるのではないかと思ってしまいます。
<2013年1月22日>
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2 コメント

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Unknown (ジンファンデル)
2013-01-28 23:36:12
過剰な延命治療で平均寿命が5年の下駄をはいているとしたら、日本人は最長寿国ではなく、アメリカなどと同じ平均的な先進国クラスとなります。となると、健康にいい日本食というけど実態はあるのかという問題になります。
一方、アフガンやブラックアフリカの短命は基本は内戦です。医療ではどうしようもない。それに、犯罪、エイズ、幼児死亡率、飢餓。こうした国は、歴史的に見て、ずーとこんな状態で、まだましだったのが植民地時代。フェアトレードだ、搾取だなんてことを言う人もいますが、もっと根は深そうです。
下駄 (西山)
2013-01-29 08:41:12
日本人はやっぱり下駄をはいているのでしょうね。
「最長寿国」などと誇れない。上の並みでしょうか。
一方の最貧・低年齢国は、老人希少国かもしれません。
長短どちらの国民にも、実は深い根があるのですね。

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