アングル:韓国で孤独死が増加、高齢者追い込む「葬儀代の負担」

アングル:韓国で孤独死が増加、高齢者追い込む「葬儀代の負担」
1月21日、かつては儒教の文化が重んじられ、親孝行が社会的義務だった韓国だが、高齢化が進むとともに孤独死する高齢者も増加している。写真は身寄りのない人の遺灰が埋められた大邱の墓地(2013年 ロイター/Kim Hong-Ji)
[ソウル 21日 ロイター] かつては儒教の文化が重んじられ、親孝行が社会的義務だった韓国。しかし、経済的に豊かになるにつれ、家族の絆が壊れ始めた。今では、人口5000万人の韓国で、120万人の高齢者が独り暮らしの生活を送っている。これは高齢者全人口の20%を上回る割合だ。
先に夫を亡くしたYoon Sook-heeさん(62)が1月中旬、肺炎を発症して亡くなった。韓国では孤独死する高齢者が増加しており、Sook-heeさんもその一人。火葬は見知らぬ人が所属するチャリティー団体によって行われた。
Yoonさんが40年前に離婚した元夫は、病院からYoonさんの死を知らされたが、責任を放棄。一人息子は長い間、絶縁状態であったため、連絡を取ることすらできない。
「死後、自分の遺体を納める場所がないことから、ひどいうつ状態に陥っている高齢者が多い」。葬儀代が払えない高齢者らに無料で葬儀を執り行う団体の代表、Kang Bong-heeさんはこう説明し、「彼らはなけなしのお金を手に相談に訪れる」と語る。
韓国は先進国で最も高齢化のペースが速い。1980年には3.8%だった高齢者人口の割合が、2002年には7.2%、12年には11.8%となった。昨年5月に発表された保健福祉省のリポートによると、20年には15.7%に増加し、30年には24.3%まで増える見込みとなっている。
<「江南スタイル」の陰で>
ラップ歌手PSYの大ヒット曲「江南スタイル」で世界的な注目を集めたソウルの高級住宅街「江南」。ただ、高齢者にとっての現実は、歌のように華やかなものではない。
江南地域近くに住むKong Kyung-soonさん(73)の小さなアパートに足を踏み入れると、最初に目に入るのはトイレ。生活空間の広さは2平方メートルほどしかない。
「病気になったらもう終わり」。節約のため炊飯器でお湯を沸かすというKongさんは30年前、夫の不倫が原因で離婚。月50万ウォン(約4万2000円)の生活保護を受給し、その中から家賃36万ウォンをやりくりしている。
韓国ではKongさんのように生活保護を受給する高齢者は昨年、独り暮らしの高齢者の19.7%に当たる23万4000人に上った。
なぜ家族に助けを求めないのかと尋ねると、Kongさんは「姉に死にたいと話すと、葬儀代として50万ウォン用意できるならいいと言ってくる」と涙ながらに答え、「神様に1万ウォンでもいいから貸してくれないかと祈ったこともある」と振り返った。
韓国政府も孤独死対策に乗り出し、地元自治体の中には毎日、ヨーグルト飲料を玄関に届ける試みを行っているところもある。住民の異変を未開封のボトルがたまっていないかどうかでチェックするという。
しかし、前述のKangさんはこういった対策は、問題の核心をついていないと強調。「高齢者はただ、単に話し相手が欲しいだけ。高齢者福祉にとって大事なことは、寂しいと感じさせないことだ」
(原文執筆:Christine Kim記者、翻訳:野村宏之、編集:宮井伸明)
*編集者の名前を追加します。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab