安倍政権が推し進める経済政策パッケージは「アベノミクス」と呼ばれています。
大胆な金融緩和、拡張的な財政政策、それに成長戦略を「3本の矢」として日本経済を再び成長軌道に乗せる、というものです。
私自身は、「成算は良くて五分五分、一方財政への悪影響やスタグフレーションのリスクは蓋然性が高い」と見ています。日本国内で7~8割の人が「アベノミクスで日本は甦る!」と信じられれば、景気は気から、でうまく行くかもしれません。でも現実には、とてもそうなると思えませんし。
さて最近、「安倍政権の言う”成長戦略”は、”構造改革”とは似て非なるもの」という指摘を何度か目にしました。たとえば、これ。
“安倍成長戦略”と“小泉構造改革”の違い|岸博幸のクリエイティブ国富論|ダイヤモンド・オンライン
官僚用語で言う“成長戦略”とは、霞ヶ関の多くの官僚が嫌がる規制改革などの“構造改革”路線よりも、“国家資本主義”的なアプローチを意味するのです。
ちなみに、前記の日経記事にも書かれていますが、小泉政権の間は“成長戦略”といったものは一度も策定されておらず、常に“構造改革”という言葉が用いられていました。“成長戦略”なるものを政府が策定するようになったのは小泉政権が終わってからです。こうした事実を踏まえても、“成長戦略”という言葉が“構造改革”を嫌う官僚によって作り出されたことは明らかでしょう。
規制改革や税制改革によって企業活動を促進し、同時に社会保障制度改革や財政改革を通じて消費者・生活者の不安感や先行き不透明感を取り除く。こうした当たり前のことを着実にやっていく方が、結局は経済成長の近道だと、私は思うんですけどねぇ。そういう視点からは、アベノミクスに対しては「ピント外れ」「危うい賭け」といった印象を持ちます。
うまく行かないことがはっきりしてから「それ見たことか」と言い始めるのはいささか卑怯なので、今のうちからこうして明言しておきます。