25年の刑務所生活の後に経験したテクノロジーの偉大さ

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    25年の刑務所生活の後に経験したテクノロジーの偉大さ

    僕が刑務所に入ったのは、1987年です。当時はモトローラ製の大きくて灰色の携帯電話を使っていました。「brick」と呼ばれてたやつです。電話をかけることと受けることはできましたが、メッセージを送ることはできませんでした。

    ポケベルも持っていました。でも数字を送れるだけなので、通知がきた後、かけ直していました。IBMのパソコンも持っていました。それがどの程度の性能なのかはよく分からないですが、OSはDOSで、メモリは40メガでした。聞くところ、大した製品だという事でした。PCにはエプソンのドットマトリックス・プリンターをつなげていました。用紙がよくガイドから脱線したことを思い出します。イライラさせられました。

    僕がお務めをしていた25年の間のテクノロジーの発展は相当なものです。檻の中にいる間、僕は沢山読書をしました。しかしテクノロジーに関する事を読んでも何かタイピングに関する事を読んでいるような感じでピンときていませんでした。実際に使うまではテクノロジーの偉大さは全然分かりませんでした。また分からなかったのは偉大さだけではありません。テクノロジーに関する用語も全然分かりませんでした。例えば、「ブラウザ」が何を意味しているか分かりませんでした。妻にブラウザって何か聞いてみると、インターネットを見るためのプログラムだと答えました。それを聞いて僕はぽかんとした顔していたと思います。

    「ブラウザって、Googleで検索したい単語を打ち込むための画面の上の小さなボックスだと思ってたよ」

    「違うわ、ハニー。それはURLバーよ」

    僕は牢屋に25年以上いました。そして自由の身になってからまだ5ヶ月経っていません。だから僕がテクノロジーに関して無知でも仕方ないと分かってくれると思います。ベーシックな知識だけでも今すぐに理解するのは無理な量です。必要な事が全て身に付くようになるかどうかは分からないですが、精いっぱい勉強するつもりです。「サーバー」が何の事だか全く分かりません。自分のコンテンツをどうやって公開するかも分かりません。正直、タイムワープをした世界に住んでいるのではないかと錯覚してしまうのは、テクノロジーに関する事だけではありません。よく知らない分野に対しては普通とは違った反応を返してしまうのです。しかし、テクノロジーに関しては本当にハンディキャップを感じています。というのも僕はテクノロジーが肝のビジネスをやりたいと思っているからです。僕は刑務所の事、刑務所にいる人の事、そして彼らが刑務所にいる間に出所後に価値やスキルを自分に身につけるような方法を伝えていくのが自分の使命だと思っています。

    出所する前から、僕はテクノロジー戦略について色々検討していました。妻はマイクロソフトの製品を使っていました。けれど、僕が読んだ全てのものがアップル製品の方が使い方を早く習得できると示唆していました。ある日、妻が私にiPhone 4Sを手渡してくれました。出所して1週間以内に、MacBookProとiMacを購入しました。僕は全てのデバイスが連携して動作してくれることを期待していました。しかし妻がアップル製品を好まなかったので、マイクロソフト製品を入れる事を主張しました。そして僕が困ったら妻が助けてくれる事になりました。僕には、メールや機器の同期など簡単なタスクがある程度の速さで実行できるようになるまでに沢山の問題がありました。あと沢山のパスワードを覚えるのが大変でした。妻に1つのパスワードを多用しようと提案しましたが、情報管理の観点からダメと言われました。僕自身、刑務所で個人情報を盗んだ人にたくさん会いましたから、妻の言う通りだと思います。

    僕はQuora(訳者注:Quoraは、米クオーラが運営するSNSの要素を加えた高品質をうたうQ&Aサービス。wikipediaより)を楽しんでいます。というのもシンプルだからです。人が質問して、僕が答える。でも分からない事も沢山あります。自己のブランドを高めたり、自分の専門領域を知ってもらうために、どうやってプラットフォームを使うかなどは全然分かりません。

    Quoraの中で働く人がサービスの有益な使い方に関するインサイトを提供してたので、そのガイダンスがとても役に立っています。今僕が出来ることと言えば、知られていない刑務所についての質問に自分の見解を示すことくらいです。

    僕はより多くの人に伝えるために、Quoraの他にもソーシャルメディアを使っています。そして僕の仕事に多くの人が関心を持ってくれるようにウェブサイトを立ち上げたいと思い、ディベロッパーも雇いました。しかしこんなに限られた知識では他の人ができるレベルにまで達することができる気がしません。他の人ができるレベルに達しなければ、必要なだけの影響力を持つことができません。僕はこの問題を早急に解決したいと思っていますが、知識のなさから慎重に行動することを強いられています。どの程度の進歩が妥当なのかはわかりませんが、もっとテクノロジーやソーシャルメディアを勉強することを楽しみにしています。

    ※ この記事はQuoraに投稿したマイケル・サントス(Michael Santos)さん本人の許可を得て掲載しています。1987年8月11日の逮捕から2012年8月13日の出所まで、25年間の刑務所生活は彼の新しい本「Earning Freedom」で読むことができます。また彼のTwitterはこちらです。

    image: Shayan Sanyal/Wikimedia Commons

    Michael Santos(原文/mio)