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Global Perspective 2012
2012年11月29日掲載

NFCはただの手段:フランスCityvoxの取組み

(株)報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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2012年11月にフランスのポータルサイト「Cityvox」が携帯電話のNFC (Near Field Communication:近距離無線通信) を活用してレストランなどの店舗情報検索や店舗の評価、お気に入りレストランの投票ができるサービスを開始した。

「Cityvox」はフランスのレストラン、シアター、シネマ、バーなどの情報が掲載されているポータルサイト。日本や世界でもよく見かけるようなサイトである。
 今回、フランス133都市のレストラン1,553店舗においてNFCが搭載された携帯電話で情報を読み取り、店舗情報検索や店舗の評価、お気に入りレストランの投票ができるようになる。NFC非対応端末ではQRコードでの読み取りも可能になる。Cityvoxに登録されている1,553の店舗には赤いスティッカーを貼り、そこに利用者が携帯電話をかざしてサイトにアクセスして店舗情報を見たり、投票したりする。

(図1)CityvoxのNFC対応スティッカー
このスティッカーにNFC対応スマートフォンをかざすだけで良い。
(図1)CityvoxのNFC対応スティッカー
(出典:Cityvox)

店側の積極的な取組みで広がるNFC利用シーン

フランスではNFCのトライアルや商用化に積極的である。またスマートフォンも普及している。
 Cityvoxでは店舗ごとに利用者が評価したコメントや星の数が5段階で表示されている。

(図2)Cityvoxでのお店のページ

(図2)Cityvoxでのお店のページ1

(図2)Cityvoxでのお店のページ2
(出典:Cityvox)

Cityvoxに加盟している店舗で利用者は店先に貼っているスティッカーに携帯電話をかざすだけでよい。非常にシンプルである。それでお店の投票をしたり、評価を書き込んだりできる。
 お店側からしても多くの人に投票や評価を書いてもらいたいから、お客様への利用を促進していく。欧米はチップ社会である。チップをたくさん払ってくれる人は「良い評価」を書いてくれる、「星数」を多く付けてくれるだろうと店舗側も積極的になる。Cityvoxでは悪い評価のコメントや星数も掲示されている。
 フランスだけでなく全世界で共通だろうが、多くの人がこのようなポータルサイトに出ているコメントや星の数を見てレストランを決める際の参考にしている。「ミシュランガイドの星はついていないけど、Cityvoxでの評価は高いな。行ってみようか」と。フランスの店側もこのようなサイトでの評判を意識している。

NFCのスティッカーにスマートフォンをかざすだけで店舗の評価やコメントが出来るようになれば、お客様に良いコメントを書いてもらったり、投票してもらうために、店側もスマートフォンでの操作方法を学習してお客様に教えていく。そこで教えてもらったお客様は他の店舗でも利用していく可能性が高い。そのようにしてスマートフォンでNFCを活用した利用シーンが日常生活の中に入ってくる。

NFCはただの手段

NFCはただの手段であり、難しいものではない。日常生活の中でのありふれたシーンに入ってくれば、それがNFCだと認識するまでもなく使われるようになる。NFC搭載の携帯電話端末は2012年に約1億200万台出荷され、2017年には19億5,000万台になると予測されている(ABIresearch 2012.11)。NFCが携帯電話に搭載されていても実際の利用シーンがなければ、誰も使わない。
今回のフランスのCityvoxのようにポータルサイト、店舗、利用者にとってそれぞれのメリットがあるような「仕掛け」があると気がつかないうちにNFCも浸透していく。サービスの提供側、供給側にそれぞれ利用してもらう目的とメリットがあれば、それを実現する技術は自然と浸透していく。これは何もNFCに限ったことではない。日本でも周囲を見渡すとこのような事例はたくさんある。

(参考)Cityvox

*本情報は2012年11月29日時点のものである。 

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