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査定は地銀に丸投げ、机上の目標数値…混乱の元凶・中小企業庁

倒産予備軍は5万社!? 金融円滑化法で混乱する地銀の苦悩

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倒産予備軍は5万社!? 金融円滑化法で混乱する地銀の苦悩の画像1中小企業庁が入居する経済産業省総合庁舎別館
(「wikipedia」より)
 来年3月末で中小企業金融円滑化法が終了するのを控え、中小企業の再生が難題となっているが、地域金融の担い手である地方銀行からは、「中小企業庁が勝手にぶち上げた今年度の再生支援目標3000件の達成は無理」と反発の声が上がっている。しかも、「中小企業庁は、再生をサポートする中小企業再生支援協議会での処理スピードを従来の標準6カ月から2カ月に短縮するため、同協議会はよほどのことがない限り、原則資産査定はやらない。資産査定は金がかかるから金融機関でやれと言ってくる」(同)と不満たらたらである。

 ある地銀幹部によると「金融円滑化法や景気対策緊急保証、セーフティネット保証などの政府支援により、中小企業の資金繰りは一時的に緩和し、倒産は大きく抑制されているが、売上が伸びないなど再生計画が思うように進まない企業も多い」という。特に金融円滑化法では、同じ企業が何回も条件緩和を申し入れたり、一企業が複数の債権について条件緩和を申し入れたケースも少なくなく、30~40万社の中小企業が円滑化法で延命・再生途上にあるとみられる。このうち、「5~6万社は転廃業が必要」と金融庁幹部は指摘する。

 こうした中小企業に対しては、「基本的には各金融機関がコンサルティング能力を発揮して、中小企業の主体的な取り組みを促しながら最大限の支援をしていく必要がある」(金融庁幹部)と行政も後押しするが、中小企業との交渉に当たる地域金融機関の現場からは、「限られた取引先を安易に倒産させてしまっては、地域の信用を失墜する。かといってさらに延命させれば、自らの首を絞めかねない。再生ファンドを創って債権をバランスシートから切り離すことも考えられるが、それとて先送りにすぎない。中小企業の再生は、簡単にはいかない」(地銀幹部)と苦しい声が聞かれる。

●サンドイッチの金融庁

 こうした地銀の反発に手を焼いているのが、中小企業庁と交渉に当たる金融庁で、地域金融機関と中小企業庁にサンドイッチされ、身動きができないでいる。「中小企業庁の立場でものを言えば地域金融機関の総スカンを浴び、地域金融機関の意見をそのまま中小企業庁にねじ込むこともためらわれる」(金融庁関係者)状態という。

 地域金融機関がこぞって反発する再生企業の資産査定についても、「中小企業庁は総額数千万円の債権に対し、1000万円に近い資産査定費用をかけるのは勘弁してほしいと言っているのだ」と地域金融機関をなだめるが、だからといって、「資産査定をせずに債権放棄することはOKか」というと、そうでもない。結局、金融機関側の持ち出しで資産査定をやるはめになる。「こんなことで、中小企業金融円滑化法は本当に終了できるのだろうか」(地銀幹部)と心配顔だ。

 そうした中、ある大手地銀では、最近、内々に不振中小企業を専門に担当するセクションを本部に立ち上げた。「これまで円滑化法で貸出条件を緩和してきた先に対して、引導を渡す専門部」(関係者)という。支店の担当者は、取引先の中小企業に対し、「当行は円滑化法の趣旨を踏まえ貴社を応援します。ともに経営課題を考え、再建に向けて努力しましょう」と言ってきた手前、円滑化法が終了するので、支援も打ち切るとは言えない。そこで本部の専門セクションが出張っていって、当該の中小企業に支援打ち切りを宣言するというのだ。「死刑宣告人」のような損な役回りだが、「体力がある地域金融機関は、早めに引当金を積み、不振企業の淘汰に入っている」(地銀関係者)ことは、まぎれもない事実だ。

 円滑化法では、中小企業向け融資に当たり貸付条件の変更等を行っても、「経営改善計画が1年以内に策定できる見込みである場合」や「5年以内(最長10年以内)に経営再建が達成される経営改善計画がある場合」は不良債権にならないと規定されており、円滑化法終了後も、この定義は継続される。

 しかし、経営改善計画が1年以内に策定できる見込みから貸出条件の緩和に応じたものの、1年が経過してもなお計画が策定できないでいる中小・零細企業が数多く残っている。これら不振企業をどう淘汰するか、地域金融機関の苦悩は続く。
(文=森岡英樹/金融ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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