自殺防止にモバイルとソーシャルを役立てたいアメリカ

アメリカの、特に退役軍人と若年層の自殺を防ぐためにFacebookやモバイル・アプリなどのICTを活用する国家戦略が発表された。今後5年間で2万人の命を救うことを目標にしており、予算も5,560万ドルほどついているようだ。
自殺防止にモバイルとソーシャルを役立てたいアメリカ

アメリカの、特に退役軍人と若年層の自殺を防ぐためにFacebookやモバイル・アプリなどのICTを活用する国家戦略が発表された。公衆衛生局長官Regina Benjamin氏と国家自殺予防アクション・アライアンスの共同プロジェクトで、今後5年間で2万人の命を救うことを目標にしている。予算も5,560万ドルほどついているようだ。

2009年のアメリカの自殺者は37,000人で1日に100人に達している。中でも2300万人いる退役軍人の自殺者が急増しており、戦闘よりも自殺で失う命の方が多いという。2009年には未遂を含め10,888人だったものが2011年には17,754人となり、対策が急務となっている。今回発表されたプランでは退役軍人のほか、ドラッグやアルコールの乱用者、ネイティブ・アメリカン、同性愛/両性愛/トランスジェンダー、若年層も自殺のリスクの高い層とされている。

アメリカでは2001年にも自殺対策プランが打ち出されているが、これまでの研究で自殺がある程度、予防できることが分かってきたという。今回の国家戦略のキーは、インタラクティブ性の高いSNS、電子メール、ブログ、モバイル・アプリ、テキストメッセージなどを、なかなか話題にしづらい自殺について専門のカウンセラーとコミュニケーションを図るプラットフォームに利用しようというものだ。仮想世界やゲーム、テキスト分析などの応用もスコープにあって、開発が進められている。背景にはソーシャル・ネットワークや、モバイルヘルス・アプリケーションの発展と若年層を中心にした人気の高さがあるそうだ。

Facebookはこの国家戦略に特別な貢献をしていて、例えば2011年12月から自殺の可能性があるユーザに対して訓練を受けた専門の自殺カウンセラーとライブで秘密のチャットを交わす機能を提供している。Facebook利用者が友達の自殺をほのめかすような書き込みや、助けが必要そうな書き込みを見つけたら、リンクをクリックすることで匿名の通報を行うことができ、Facebookから電子メールなどで自殺の恐れがある人にホットラインを使うように伝える機能だが、このほかのメカニズムも開発中とのこと。危険な状態にある人は、誰にどのように相談してよいか分からずにいるケースが多く、ソーシャル・ネットワークは、こうした人々の役に立つリソースを提供できるという。

【参照情報】
National anti-suicide plan emphasizes mobile technology
National Strategy for Suicide Prevention Emphasizes Health IT
U.S. officials launch new strategy to prevent suicide
New U.S. Suicide Prevention Strategy Utilizes Facebook
National Strategy for Suicide Prevention: Goals and Objectives for Action

WirelessWire News
TEXT BY 信國 謙司

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