「jazzLife」10月号 執筆後記[ジャズキュレーション]

 

 

まずは「生誕80年、没後5年」という特集記事。

誰でしょうか――、それはウェザー・リポートを作って

コンテンポラリーなジャズの歴史を変えた男、

ジョー・ザヴィヌル。

ボクとウェザー・リポートの出会いはあまりよくなくて、

1982~83年くらいの来日公演を一度見ただけ。

 

当時は「大阪ではすごく盛り上がる」という噂があって、

東京でのウェザー・リポートはリハーサル程度だなんて言われてた(笑)。

 

ジャコもいなかったし、遠くの安い席で(学生だったので)見た

ウェザー・リポートの印象は、やっぱりぼんやりしたものでしかなかった。

 

それでも、『ブラック・マーケット』や『ヘヴィ・ウェザー』は愛聴盤だったし、

すごいグループだという認識は持っていたんだけど。

実は、ウェザー・リポート解散後も、ジョー・ザヴィヌルの活動は

追っかけていた。当時から気になる存在だったのかな・・・。

解散直後の久々のソロ・アルバム『ダイアレクツ』(1986年)も

リアルタイムで買った。まだ当時はCD普及前で

アナログLPだったけど。

 

編集部から「ジョー・ザヴィヌルについての原稿を書いてみないか」

と言われて、ウェザー・リポートについてまとめるのはスペース的には

ムリだけど、彼個人のソロ・アルバムなどの業績や、エポックメイキングな

「イン・ア・サイレント・ウェイ」という曲を絡めたストーリーなら

おもしろく書けそうだと思って、引き受けることにした。

 

とても参考になったのは、彼の自叙伝。

エピソードをピックアップして、ザヴィヌルとマイルスの愛憎的な交流や

ヨーロッパ人としてのアイデンティティを強く意識していたことなどを

勝手に解釈しながら書いていく作業はとてもおもしろかった。

 

新たに資料として買い足して聴いていたのはこれ↓。

初期のザヴィヌルが、自己の音楽に目覚めたきっかけとのなる

作品と紹介してもいいだろう。

 


the MOSTインタビュー

その夜に関内のKAMOMEでライヴがあるからというので、

夕方のリハーサル後にインタビューするという予定で出かけていった。

このリハーサルについては、ヤマハのコラムにもアップする予定。

富澤えいち:記事一覧   音楽ジャーナリスト ライターの眼 ~今週の音楽記事から~   ヤマハ株式会社-153059

  ⇒音楽ジャーナリスト&ライターの眼 富澤えいち担当コラム

 

the MOSTの取材は久しぶり。たしか2nd『FORCE』のときだったから、

10年前になるだろうか。

 

12年もオリジナル主義でバンドを維持するというのは、やはり

並大抵の努力と精神力じゃできないんだろう。

静かに、しかし力強く、「勇気」というタイトルを掲げる彼らの音は、

日本のジャズを支えるために欠かせないパワーの源泉なのでは

ないかと思うのだが。


さかもと未明インタビュー

タレントとして活動しているさかもと未明が

本格的にジャズ歌手として活動を始めるということで、

デビュー作となる作品について話を聞いてきた。

 

彼女については、すでにかなりのハンディキャップがあるので、

正直に言って普通のジャズ歌手と同じ土俵で評することは

無理だろうと思っていた。

かといって、「イロモノ」の扱いをすればいいのかといえば、

それほどジャズは甘くないし、記事だっておもしろくならないだろう。

 

百戦錬磨のさかもと未明は、そのあたりもちゃんと心得ていた。

ボクからの「色眼鏡」がかかっているだろう質問にも丁寧に答えてくれて、

彼女がどれだけジャズに情熱を注ごうとしているのか

をしっかりと伝えてくれた。

 

さかもと未明の魅力は上手さではない。

ずばり、声と雰囲気。

 

なんだそんなことか――と思うなかれ。

その天性の条件が揃わずに苦しんでいる歌手志望者が

どれだけいることだろうか。

 

健康状態が心配な人だけれど、ぜひいろいろなアイデアを

実現させていってほしい。


ちょっと話は横道にそれるけれど、広告ページでこんなのを見つけた。

42,000円かぁ・・・。欲しくなっちゃうなぁ(笑)。


Disc Reviewを担当したのは次の4本。

 

サード・ストリームとはまた違ったクラシックとジャズの融合をめざす

朝比奈アイネス隆子の『ネオ・クラシック』についての情報が

ネットではゲットできなかったので、代わりに動画を貼っておく。

 

村井秀清と田中さとこの作品は、それぞれ違った視点で「旅」を

音楽にリンクさせていて興味深かった。

旅のイメージ(映像)と音楽のリンクは、安易に試みるとBGMに堕してしまう。

そうさせないために、センスと技量がかなり問われると思うんだけど、

それをかなり超えた次元で完成させている作品が並んだ気がする。

 

今月号はこれまで。