暴力団に代わって「闇経済」を支配し始めた不良集団の急伸! ~「六本木クラブ集団襲撃事件」の背景にある世相の変化

 「自分は、なんでもビジネスに展開できる自信があります。ニッチな分野を見つけ、仲間を糾合してビジネスモデルを築く。頭が悪い分、カンと度胸はいい方です」

 こう語るのは、金融、美容、設備などの会社を数社、経営する元暴走族である。32歳の中卒で確かに"学歴"はないが、儲けを探り出す嗅覚に優れ、そのビジネスのためなら集中して勉強、法を学び、知識を蓄えるのだから"地頭"はいい。それに礼儀正しく、頭の回転が速いので話術が巧みだ。その年齢で年商10億円の企業家になったのも頷ける。

 しかし、手首まで入れた刺青と、糾合する仲間が元暴走族で企業全体が特異なムードを醸し出しているところに、どうしても不安は残る。

 こうした元暴走族を始めとする不良出身の経営者が、急激に増えている。その進出は目を見張るほどで、東京だけでなく全国現象となっている。そこにもまた「白」から「グレーゾーン」を経て「黒」に至るまでのランク分けがある。

「生存権」と「ビジネス権」を奪われた暴力団

 今回、書きたいのは、9月2日未明、東京・六本木のクラブで発生した集団襲撃事件である。現時点で、襲撃犯は捕まっていない。事件の結末はともかく、目出し帽を被った男たちが、無言で金属バットや鉄パイプなどでターゲットを滅多打ち、数分で殺害、逃走するという事件の残酷さを理解するには、グレーゾーンを含む「闇経済」の主体が、暴力団系から不良集団へと変わっている現実を理解する必要がある。

 六本木事件の被害者は、風俗飲食店などを経営する31歳の男性だった。防犯カメラに映った襲撃犯も同年代と見られることから、組織に属さない不良集団の抗争事件ではないかと目されている。経済力をつけた不良集団とはなにか。

 「半グレ」「チンピラ」「ギャング」と、呼び方はまともな人間扱いをされていないものの、ここ数年、冒頭の人物のように、起業して成功を収める事例が増えた。

 風俗、飲食、クラブ、アダルトビデオ、人材派遣、土建、未公開株・社債、各種会員権、エステ、健康食品、化粧品・・・。

 扱い商品はまともでも、販売手法によっては違法になる。不良集団ビジネスの特徴は、グレーゾーンにいとも簡単に飛び込むこと。また、道徳欠損者が少なくない。彼らは、老人を騙して未公開株や社債を買わせることに痛痒を感じない。必要ならマルチ商法で裾野を広げ、金融をやれば法定金利を守る気などない。

 本来、こうした分野は、暴力団系企業の"シノギ"だった。企業舎弟が、暴力装置をバックに違法領域に踏み込み、収益をあげて、自分たちも潤うと同時に、組織に"上納"して共存共栄を図った。

 だが、昨年10月の暴力団排除条例の全国施行に象徴されるように、暴力団とその周辺者は、家や事務所を借りることも、銀行口座を持つこともできなくなった。「生存権」と「ビジネス権」を奪われたわけである。

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