【話題】認知症高齢者300万人突破で関連銘柄浮上

2012年8月25日 21:22

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■2015年に470万人へ、治療薬のエーザイ、紙おむつ花王も

  厚生労働省は24日、2012年の認知症高齢者が推計で305万人に上ると発表した。2002年の149万人から倍増し、65歳以上人口に占める割合は約10%になった。従来予測を上回るペースで増加していることが判明したため、来年度からの5カ年計画で新たな認知症対策に乗り出す模様だ。

  厚生労働省によると、2003年時点の予測では2010年に208万人、2015年に250万人、2020年に289万人としていたが、2010年9月の要介護認定に関するデータを基にして、日常生活で介護や支援が必要な認知症高齢者数を推計し直した結果、2010年時点で280万人(65歳以上人口に占める割合9.5%)と従来予測の1.35倍になっていたことが判明し、今回の推計では2015年に345万人(同10.2%)、2020年に410万人(同11.3%)、2025年に470万人(同12.8%)に増加する見込みとなった。従来予測を上回った原因については、介護保険制度が普及して調査対象者が増えた、高齢者の寿命が延びた、病院で受診する高齢者が増えたなどと分析している。

  なお世界保健機構(WHO)は4月11日の認知症に関する初の報告書で、2010年時点の世界の認知症患者は3560万人で、高齢化に伴って新規患者は毎年770万人増えていき、患者総数は2030年時点で6570万人、2050年時点で1億1540万人に達し、このうち半数以上の6090万人を日本や中国などアジア諸国が占めるとの見通しを示している。また2010年に患者の治療やケアに要した費用は世界全体で6040億ドルとなり、費用は今後一段と増えると警告している。

  認知症は脳や体の疾患を原因として、物忘れ(記憶力障害)など記憶や判断力に障害が起きる病気で、日常生活まで支障をきたすようになる。65歳以上の高齢者に多く発症し、脳の神経細胞が減って脳が小さく委縮する「アルツハイマー型認知症」や、脳の血管が詰まったり破れたりして脳の働きが悪くなる「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」などがある。このうち「アルツハイマー型認知症」(アルツハイマー病)が日本では約6~7割を占め、世界でも半分以上を占めるとみられている。なお65歳未満の人が発症する「若年性認知症」の場合も、原因となる障害は脳卒中などの脳血管障害が4割で最も多いとされているが、うつ病に似た症状も見られるため鑑別が難しい例も少なくないようだ。

  アルツハイマー病の治療には、エーザイ <4523> が開発した「アリセプト」が日米欧で広く使われている。「アリセプト」には脳内での神経伝達機能を高めることで症状の悪化を遅くする効果があるが、認知症の進行を完全に止める効果はないため、エーザイ <4523> の他、武田薬品工業 <4502> 、第一三共 <4568> 、ノバルティス(スイス)、イーライ・リリー(米)など世界の大手医薬品メーカーが、アルツハイマー病の症状の進行を止める薬、認知機能を回復させる薬、アルツハイマー病になる可能性が高い人を見つける診断薬、アルツハイマー病を予防する薬などの開発を急いでいる。また「アリセプト」の特許切れに伴い、日医工 <4541> などの後発医薬品メーカーが参入している。認知症は日本だけでなく、高齢化が進む先進各国共通の課題であり、認知症治療薬の世界市場は100億ドルに達するとの推計もあるようだ。

  この他の関連セクターとしては、大人用紙おむつの花王 <4452> 、ユニチャーム <8113> 、認知症高齢者が介護サービスを受けながら共同生活するグループホーム運営の介護サービス各社、認知症の高齢者が徘徊した場合にGPS(全地球測位システム)付き携帯電話などで居場所を確認できるサービスなどがあるだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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