6月貿易収支が4カ月ぶり黒字転化、上半期は過去最大の赤字に

6月貿易収支は617億円の黒字、輸出・輸入とも減少=財務省
7月25日、財務省が発表した6月貿易統計速報によると、貿易収支(原数値)は617億円の黒字となった。都内で6月撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)
[東京 25日 ロイター] 財務省が25日に発表した6月貿易統計速報によると、貿易収支(原数値)は617億円の黒字となった。黒字は4カ月ぶり。輸出が4カ月ぶりに減少に転じる一方、輸入も2009年12月以来、30カ月ぶりに減少した。
欧州債務問題を契機とする世界経済の減速や、原油価格下落が影響した。黒字転化したが、輸出増に変調の兆しがみられることから、貿易黒字は一時的との見方が広がっている。
2012年上半期の貿易収支は2兆9158億円の赤字となった。赤字は3期連続で、赤字幅は過去最大を記録した。これまでの最大の赤字は、第2次オイルショックで輸入が膨らんだ1980年上半期の2兆6217億円だった。
<6月輸出が4カ月ぶりに減少、欧州向けは2ケタ減>
6月の輸出は前年比2.3%減の5兆6438億円となった。欧州向けが前年比21.3%減となるなど、欧州債務危機を契機とした世界経済の減速感の広がりが影響した。
品目別では、自動車(8.6%増)や自動車の部分品(22.1%増)が増加したが、これまで輸出増の原動力となっていた自動車輸出の伸び率は大幅鈍化した。減少品目は鉱物性燃料(23.1%減)、電算機類の部分品(20.3%減)など。
地域別では、米国向け輸出が前年比15.1%増と8カ月連続で増加したが、中国向けは同7.3%減と2カ月ぶりに減少した。
また欧州連合(EU)向け輸出は前年比21.3%減と大幅減少した。減少は9カ月連続。輸出と輸入の差引は、5月に比較可能な1979年1月以来初めて赤字転落し、2カ月連続で赤字となった。貿易赤字幅は39億円。
為替レート(税関長公示レート平均)は1ドル79.29円で対前年比2.0%の円高だった。
<6月輸入は30カ月ぶりに減少、燃料価格の下落で>
6月の輸入は同2.2%減の5兆5822億円。燃料価格の下落が影響し30カ月ぶりに減少に転じた。品目では液化天然ガス(24.5%増)や原粗油(3.6%増)が増加したが増加幅は縮小、非鉄金属(28.5%減)や石炭(17.6%減)、音響映像機器(26.7%減)などが減少した。
輸入原油単価は前年比3.6%低下の5万7517円/キロリットルと19カ月ぶりに低下した。ドルベースでは同0.5%上昇の115.3ドル/バレルだった。
ロイターが民間調査機関を対象に行った調査では、予測中央値は1350億円の赤字。輸出は前年比3.0%減、輸入は同1.2%増だった。
<12年上半期は3期連続で赤字に、対EUが過去最低の貿易黒字>
2012年上半期の貿易収支は3期連続で赤字となった。中でもEU向けは、欧州経済の減速が響き、前年同期比71.8%減と大幅に落ち込んだ。小幅黒字を維持したが、黒字幅は1716億円と比較可能な1979年以来過去最低の水準を記録した。
輸出は前年比1.5%増の32兆5956億円で3期ぶりに増加した。海外経済の減速や円高がマイナス要因だが、米国向け自動車輸出の増加がけん引した。輸入は同7.4%増の35兆5113億円。原油価格の高止まりや原子力発電所の稼働停止に伴う液化天然ガスの需要増などで、5期連続で増加した。
輸入原油単価は前年同期比10.3%上昇の5万9963円/キロリットル、ドルベースでは同13.8%上昇の119.8ドル/バレル。ドルベースでは過去最高を記録した。為替レート(税関長公示レート平均)は1ドル79.60円で対前年比3.1%の円高だった。
<市場は黒字は一時的との見方>
6月貿易収支が予想外の黒字になったことで、外為市場ではドル/円が一時78.08円まで下落した。
しかし、みずほコーポレート銀行のマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は「黒字基調が続くとは思っておらず、あくまで一時的とみている。上半期の貿易収支も約3兆円の赤字となった。これは昨年の赤字よりも大きく、需給環境は明らかに円安にある。貿易収支はドル/円の下値を抑えるストッパーになるだろう」との見方を示す。その理由を「黒字になったから輸出が好調かというと、まったく好調ではなく、4カ月ぶりに減少している。いま米国で追加緩和の話が出ようかというときに、これ以上自動車が売れるのかというと、それは難しいだろう。欧州などは言うまでもない」と説明した。
岩井コスモ証券投資調査部のエコノミスト、田口はるみ氏も同様に、「今回は黒字となった貿易収支だが、今後は依然、赤字に転じやすい状況にある」との見方を示した。猛暑などで燃料等の輸入の増加が考えられるため、という。
同氏は「世界経済の減速の影響が出てきている。輸入の減少の背景には、石油価格の落ち着きや商品価格の低下などがある。輸出が4カ月ぶりに減少したのは、欧州向けの減少が大きい。全体でも一般向け機械が減少するなど、経済の中でも設備投資が停滞しているほか、円高の影響で国内生産が海外に転出している影響も出てきているとみている」と述べた。
(ロイターニュース 吉川 裕子;編集 佐々木美和)
*内容を追加します。

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