皆さん、こんにちは。大津です。


今日は良い天気ですね。


ホスピスにいた時。
あるいは在宅医療をしていた時。


幸運にもあまり見かけなかった
患者さんやご家族として
「緩和ケアが関わることを嫌がる
患者さんやご家族」が
いらっしゃいます。

大病院に勤務して、少なからず
「緩和ケアを嫌がる方々」を
拝見し、まだまだ世間一般には
誤解が根強いことを痛感しました。


このブログを見てくださっている
皆さんはすでにご存じのことと
思いますが、
現在緩和ケアは「早期でも」
行うものとなっています。

つまり「終末期」とイコールでは
ないのです。

これまでの「緩和」=「終末期」
のイメージが強いため、なかなか
この誤解を払拭できません。


もちろん医療者の至らない説明が
負の連鎖を招いてしまっている
側面もあります。

例えば
「もはや緩和しかありません」
「病気は緩和ケアの領域に至りました」
このような表現。

やることがない→緩和
緩和ケアの領域→終末期

という非常に間違った使われ方が
しています。

これを聞いた方たちが、「最後は
緩和だって言われて・・」と周囲に
伝えますから、これが拡散されます。

結果として、なかなか誤解が減らない
ということがあるのです。
医療者がちゃんと緩和について
説明せねばなりません。「誰でも」
受けられる、「損などない」のだ
ということを。


けれども、ちょっと厳しいことを
言いますが、「一向に人を信じようと
しない」患者さんやご家族も、
もしかするとちょっと信じてみると
救われるのかもしれません。

「緩和医療医」「緩和ケア医」という
名前が付いているだけで、
「治療を諦めさせるために緩和医療医
が出て来たのではないか」「余計な
ことを吹き込んで、ホスピスに行かせ
ようとしているのではないか」などと
妙な勘ぐりをされる方もいます。

信なき世界の現れです。
とてもとても残念なことです。


緩和ケアは「患者さんのQOLを
良くすること」がその最大の目的です。

ゆえに治療をしたほうがよければ
抗がん剤治療も勧めます。
逆に、そういう治療をしたほうが
身体が厳しい状況になり得る時は、
その見解もお伝えします。

あるいは患者さんが希望されないのに
ホスピスに無理やり転院させるなど
ということは、当然ですがしません。
その方が望む療養場所に合わせて
治療を調整していきます。

中には、
患者さんやご家族が望まれることが
時に命を縮め苦痛を増す選択である
こともあるため、そういう時は
お気持ちに配慮しながらそれを伝える
こともします。実際に望んでらっしゃる
ことと、選ぶ手段が乖離してしまうと
望みが叶わず、失意の中に最後の時間
を過ごしてしまうからです。

こういう時は、確かに難しいです。
例えば告知の問題。

多くの場合、言葉を選んで、現在の
状態というのは患者さんに伝えた
ほうが良いことが多いです。
(絶対ではありません)

しかし中には「何も伝えないでほしい」
というご家族がいらっしゃいます。

日本の慣行として、最初にご家族に
真実の情報が伝えられることが多いです。
その時にご家族が頑として「伝えないで
ほしい」と希望されると、しばしば
患者さんは何も知らずに最期を迎える
ことになります。

しかしこれは何度か著書でも触れていますが、
非常に「険しい」道です。
患者さんは多くの場合、自らの衰弱に
気が付きます。患者さんの性格にもよりますが、
「おかしい」と思い始めます。
そしてご家族や医療者も、良心が痛みながら
嘘をつき通して最後まで接せねばなりません。

これは経験してみないと真にはわかりませんが、
ご家族や医療者にとって相当酷な選択です。
「やっぱり言ってください!」と余命が
短い週単位になってご家族が希望されたりする
こともありますが、それくらいになって伝えら
れる患者さんの身になれば、できるだけ早く
言葉を選んで伝えるべきだということは、
お考えくださればご理解頂けるものと思います。

だから私たちは早め早めに、こうしたほうが
良いかもしれません、という対策を提案します。
断っても気にしなくて良いのですが、それこそ
餅は餅屋でそれを提案するだけの理由があり、
それは豊富な経験に裏打ちされたものなのです。

いずれにせよ緩和ケア医は敵では
ありません。むしろどのような場合に
おいても味方であると思います。

けれども緩和ケア医と聞くと、
その偏見を払拭できず、「なにか変な
ことをされるのではないか」「治療を
邪魔されるのではないか」などと考える
のは非常にもったいないことです。

あるいは「絶対に告知はしない」と決めている
のに、「もしかすると言ったほうが皆さんに
とって楽かもしれませんよ」などと聞くと、
邪魔をするな、と思われる気持ちもわかります
が、ご家族の皆さんのことも考えて、あえて
言いにくいことを言っているわけでもあるのです。

人はなかなか新しいことを受け止めてゆく
のが難しいことはよく承知しているつもり
です。あるいは「あなたには私の気持ちは
わからない」と簡単に思ってしまいがちかも
しれません。

けれども、そこに「この人の言うことに
耳を傾けてみようか」という気持ちがあるか
ないかで、はっきり言って人生は大きく変わる
のではないかと思います。

私にとっても、千例を超える緩和ケアの経験が
ありながら、一般病棟・ホスピス・在宅・
大学病院と全方位の緩和ケア経験がありながら、
それを利用してもらえずに最期を迎えてしまう患者さん
やご家族、そして依頼しない・提案を聞かない
医療者を見ると残念に思います。

緩和ケアチームというものは
はてしない人間修業の場だと任じておりますので
大丈夫ですが、それにしてももっと緩和ケアを
望んで受ける、早い段階から受ける、そういう
方々が少しでも増えてほしいと願い、あえて
書かせて頂きました。

ぜひとも「笑顔で」
緩和ケア医のところへ来てもらいたいものです。
私もいつも「笑顔」心がけていますから。


それでは皆さん、また。
失礼します。