皆さん、こんにちは。大津です。


世の中はすぐに極論が流行ります。


「がんは治療しないほうが良い」
という極論。フィクション。

「抗がん剤はいついかなる時でも
するべき」
という極論。フィクション。


いずれも間違いです。


しかし既存の医療への不満が
あるためか、前者の
「がんは治療しないほうが良い」
という論を唱える方々の本は
しばしばたくさん売れます。
共感を呼びやすい側面があるので
しょう。

おかげで誤った知識が世の中に
広がり、それに惑わされる方々が
出てきてしまうのです。


代表的な論者に、以前K大学病院に
いらっしゃった先生がいます。

この先生の本は一般ではよく
読まれているために、私自身も
本を出版してから、その先生の本と
内容が異なるけれどもそれに対しての
見解は・・という質問を複数回されて
驚きました。

失礼ですが、
その先生の論はまじめに信じるに足る内容ではない
のに「こんなに信じている人がいるんだ・・」
と驚いたのです。危険だな、とも思いました。
この方も非常に極論を唱えられる方だからです。
信じると大変な結末を招きかねません。

さらに驚いたのは、以前ブログでも触れましたが、
この方が昇進しなかったのは嫌がらせだ
などという説まである言論家が唱えていること
です。「医療界が正当な評価をしないで
冷遇している」と・・。

仔細な事情は私はK大学病院と関わりが
ないからわかりませんが、その先生は明らかに異端
かつ不正確な理論にとらえられてしまっている
ので、評価が与えられることがなかった
ためと理解しています。そして、それが
「正当な評価」ではないかと思います。


私は以下2著で、抗がん剤について、あるいは
医療について、なるべく正確に記すようにして
来ました。

$大津秀一 オフィシャルブログ 「医療の一隅と、人の生を照らす」 Powered by Ameba



そこで書いたように、「正解は常に間にある」
のです。それが、正しい知識が広がらない
原因でもあるのです。

答えが「間にある」ということは、
残念ながら「わかりにくい」ということにも
なり得ます。

一方で
「抗がん剤は効かない!」「抗がん剤は悪!」と
言い切る、あるいは「これで健康になる!」と
主張する、それはとても「わかりやすい」のです。

だから一部にうけます。そういう本はたくさん
売れます。困っている人は「言い切ってもらいたい」
し、「これは白だ!」と言い切る人に信頼を寄せる
方々もいるのです。

私は以前、前述の先生のような間違った意見を
なぜ掲載し続けるのかと当該出版元の方に聞いた
ことがありますが、「両論を併記することが
大切です」と仰っておりました。

けれども問題は、「抗がん剤は効かない!」「がん
は治療しないほうが良い!」という意見は、
「抗がん剤はしたほうが良い場合もそうでない
場合もある」「がんは治療したほうが良い場合も
あるし、そうでない場合もある」という意見より
「強力」で、ある種多くの人の琴線に届き得るという
ことなのです。

また既存の医療への不満を結びつけたり、
あるいはすぐに陰謀論に飛びついてしまう人も
います(例えば「高価な抗がん剤を使用するのは
医師と製薬会社が癒着しているからだ」等という
論。中にはそういう人もいるかもしれませんが、
現場で抗がん剤治療をしている先生、特に若手
医師などからすれば「何を言っているんだ」といった
ところなのではないでしょうか。私もそのような
関係で薬を処方することはないので、そこに
疑いを持たれると非常に悲しい思いです)。
やはり変に「ひきつけてしまう」ところがあるの
でしょう。


当該の先生への正当な批判の本も出ていますが、
(おそらく)悲しいくらい認知度と売れ行きは
違うでしょう。悔しいことですが、これが現実
なのです。

そして私の本に記したより正確な記述も、
当該先生の極論ほど読まれていません。本当に
残念なことなのです。その先生も人を救いたいと
思っているのだと考えますが、私も人一倍その
気持ちが強いです。誤った理論で悲しい結末を
迎えた方々を私はたくさん知っています。
だから思いは同じでも、不幸に近くなる理論を
唱える先生の誤った情報はきちんと否定して
いかねばならないと考えています。

「正しいから広まる」わけではないのです。
「絶対を求める心に響くから」うけるのです。
それはある種の宗教のようなものだと思います。


さて、もし皆さんがそれら「抗がん剤は悪」「がんの
治療などしないほうが良い」というような本を
読み、それをかなり信じてらっしゃるようならば
いくつか誤解を解いておいたほうが良いと思います。

今日はとりあえず箇条書きにとどめたいと思います。
(また後日説明します)

①放置すれば大きくなるがんは存在します。だから
治療しないほうが良いとは言えません。

②抗がん剤で治るがんもあります。

③抗がん剤で症状が和らげられることもあります。

④自然に小さくなるがんも多くはないですが、あります。
(実際に私も無治療長期生存例を10例以上経験して
います)

⑤免疫療法で進行がんが「根治した」という人を
私は見たことがありません。

⑥体力が低下しているのに抗がん剤を最後まで無理に
続けることはやはり生命に負の影響を与えているでしょう。


何度も著書で述べていますが、
②・③である一方で、⑥でもあるのです。
つまり「抗がん剤は一般的にしたほうが良い時期と、
することが命を縮め得る時期と」があるということです。


「がんは治療しないほうが良い」
「抗がん剤はいついかなる時でもするべき」

いずれも極論です。

答えが「間」にあるため、わかりやすさと普及の
スピードは「極論」に劣ってしまいますが、
粘り強く真実を伝えていきたいと存じます。

どうか皆さんも正確な情報の普及にお力をお貸し
頂ければと存じます。


それでは皆さん、また。
失礼します。




追伸
「がん治療の虚実」(Sho先生のサイト)は
具体的に抗がん剤治療やがんのことを学ぶ(科学的証拠も
含めて)のに最適です。より詳しく知りたい
という方はぜひご覧になって頂くと良いと思います。
↓↓
こちらです