21世紀という時代の波を乗りこなし、新しい世界をデザインするひとりの男

坂井 直樹

6月13日、ISSにドッキングした後、地球への帰還を果たした「SpaceX Dragon」を前に会見するイーロン・マスク氏〔PHOTO〕gettyimages

 2012年5月22日、スペースX社の無人宇宙船「SpaceX Dragon」は、民間宇宙船で初めて、国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに成功した。宇宙開発の新時代の幕開けとも称されたこの快挙の裏には、時代の波を自由自在に乗りこなし、国家や巨大企業を相手に立ち回るひとりの男の存在がある。

 男の名はイーロン・マスク。スペースXのCTO兼CEOを務める南アフリカ共和国出身の起業家だ。2010年には、『タイム』誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれた彼の辿った道のりを眺めてみると、21世紀という時代の波が見えてくる。

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 1995年、イーロン・マスクは高エネルギー物理学を学ぶためスタンフォード大学の大学院へと進学した。しかしわずか2日在籍しただけで、オンラインコンテンツ出版ソフトを提供するZip2社を起業する。続いて1999年には、ネット決済を手掛けるX.com社を設立、同社は2001年にPayPal社となった。さらに2002年には、宇宙輸送ロケットを製造開発するスペースX社を立ち上げ、現在CEOならびにCTOを務めている。また同時に電気自動車の製造販売を手掛けるテスラモーターズ社にも投資し、2008年には同社の会長兼CEOに就任した。

時代の転換期のサクセス・ストーリー

 ひとりの男がわずか10年足らずの間に、ネットビジネス・ロケットビジネス・EVビジネスで世界を動かすまでの力を付けたというサクセス・ストーリーには、21世紀という時代の波が大きく影響している。

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