日本のザッカーバーグは誰だ!? ジャパニーズスタートアップ、世界へ行く from 『WIRED』VOL. 3

かつて、Twitterやfoursquareをブレイクへと導いたことで知られるサウス・バイ・サウスウエスト。ITスタートアップの登竜門としてすっかり定着し、有力な投資家やメディアからも熱い視線を集めるこのマルチメディアの祭典に、今年、複数の日本人がエントリーしている。彼らはいったい、どんな思いとともに海を越えるのか。そして彼らのなかから、次世代のスターは出現するのだろうか。それを見極めるべく、13組のオフィスを訪ねた。
日本のザッカーバーグは誰だ ジャパニーズスタートアップ、世界へ行く from 『WIRED』VOL. 3

テキサス州オースティン 。マッチョなイメージが売りのこの州にしては、珍しくリベラルな気風(大学都市なので)があるこの街に、年に一度、世界中からIT関係者たちがこぞってやって来る。サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)インタラクティヴに出席/出展するためだ。

SXSWはもともと、音楽のコンヴェンションとして1986年にスタートしたイヴェントで、その後、94年に映画、さらには98年にインタラクティヴ部門が独立して今日に至る。2週間にわたる期間中、日中は会場にてセミナー、勉強会、トレードショーが行われ、夜は街中の至る所で、1,000組以上のライヴパフォーマンスが繰り広げられるという、まさに街をあげての盛大な"お祭り"だ。近年はインタラクティヴ部門への関心が急速に高まりをみせ、2009年にはついに音楽部門への参加者数を上回り、経済効果も1億ドルに迫る勢いだという。

その急成長のきっかけとなったのが、Twitter だった。06年7月にサーヴィスを開始したTwitterは、07年のSXSWに出展。会場の至る所に大型モニターを設置し、会場でアカウントを取得したユーザーたちのタイムラインを流してみせた。「いま××のブースにいるけれど、このサーヴィス、すっごくクール!」「○○で××のライヴがもうすぐ始まるよ」……。(すでにぼくらにもおなじみの)このリアルタイムでさまざまな情報が流れていく面白さや便利さ、さらには自分のコメントに対して瞬時に不特定者からのレスポンスが来る快感は大きな話題を呼び、Twitterは見事、この年のwebアワードの大賞を受賞した。その後、Twitterの広がりとともに「SXSWでブレイクをした」事実もついてまわり、SXSWは、インタラクティヴの世界に対しても強い影響力をもつイヴェントであることが、広く知れ渡ったのである。

もうひとついまでも話題になっているのが、ともに09年のSXSWでデヴューしたfoursquareGowalla の対決だ。「位置情報」がビジネスになるという発想を世の中に植え付けたこのライヴァル同士は、翌年のSXSWの期間中、「どちらがクールか」を競うかのように、オースティンの街を舞台にさまざまなプロモーションを展開して話題をさらった。コンヴェンション会場だけではなく、会場外でのパフォーマンスも含めて競い合う楽しさが定着していることも、SXSWが、ほかのIT系ビジネスカンファレンスと一線を画している大きな要因といえるだろう。

世界中から集まる起業家、プレス、投資家……。彼らの目に、日本のスタートアップはどう映ったのか?

そんなSXSWに、今年、多くの日本人が参戦した。その流れを生み出したのが、ARソフト**「セカイカメラ」** の開発者として知られる頓智ドットの取締役会長・井口尊仁である。初めてSXSWへ赴いた昨年、ある特別な体験をしたことが、今回の行動のきっかけになったと井口は言う。

「実は昨年のSXSWの初日が、3月11日だったんです。会場へ着くと、誰もが気遣ってくれたりハグしてくれて……。募金活動のオーガナイズも、とても早かった。そのホスピタリティに、とても心を打たれたんです。だから今年は、お返しではありませんが、『みんなありがとう、ニッポンは元気だぜ!』といったことを具体的に示したいなと思い、さまざまな方々に『行こうよ』って声をかけたんです」。

井口のその思いに呼応したのが、ここで紹介する13組だ。スタートアップと呼ぶにはあまりに失礼なNEC BIGLOBE、人気集団のKAYAC、あるいはメンバーに高校生がいるプライムアゲインなど、そのプロファイルはヴァラエティに富んでいる。しかし彼らは一様に、井口の掲げた「恩返し」のコンセプトに賛同し、SXSWへの出展を決意した。

2008年の基調講演にはマーク・ザッカーバーグが登場 (12年はブルース・スプリングスティーン)。コラムニストのサラ・レイシーが聞き手を務めたが、「話がつまらない!」と会場からはブーイングが上がり、会場は騒然となった。

もちろん、彼らがもって行くのは感謝の心だけではない。渾身のアプリを携え、ある者は資金調達を目指し、ある者は知名度アップを目指し、ある者は次なるステップへのアイデアをたぐり寄せようともくろんでいる。彼らのなかには、出展の当日までアプリの設計変更をしているグループもありそうだ。しかし、それでいっこうに構わない。何しろ彼らが踏み込むフィールドは、全員が少なからず目標とする男マーク・ザッカーバーグ が言った通り、「Done is better than perfect」がよしとされる世界なのだから。

4月27日、アップルストア銀座で『WIRED』がイヴェント開催! #wiredevt
第2回「WIRED大学 特別公開講座」では、3月にテキサス州オースティンで行われたSXSWの模様を、『WIRED』による現地取材リポートを交えながらお届けする。ARカメラ「セカイカメラ」でも有名な頓智ドットの井口尊仁とのトークショー、SXSWに参加したジャパニーズスタートアップメンバーでもある、Compath Meの安藤拓道からのピッチデモンストレーションと「Tech Cocktail in SXSW」リポートにぜひご注目を!

面白法人 KAYAC
前田良二(演出部 Creator)-右
野崎錬太郎(企画部 Creator)-中
松原佳代(演出部 Creator)-左

出展作品

MUSIC PARTY

“面白法人 KAYAC”という会社自体を知ってもらう、それが今回の目的です

写真アプリ、オチゲー、うんこ……。注目の集団が今回SXSWにもち込むアプリには、日本的面白コンテンツ、アニメ、マンガ、ゲームといった要素が詰まっている。果たして現地での反応はいかに?

Compath.Me Inc.
安藤拓道(Founder & CEO)-右
桜井祥子(Co-founder & CTO)-左

出展作品

Compath.me

初めて行った場所でも自分の”お気に入り”と簡単に出会えます

食、ショッピング、エンターテインメント。自分と趣味嗜好が似ている人をフォローしていくことにより、webでの検索に比べ、より高精度で自分に必要な情報を入手していくことが可能となるアプリ。

mediagene
尾田和実(取締役 COO〈最高執行責任者〉)-左
今田素子(代表取締役 CEO)-中
木継則幸(Manager, Chief Art Director)-右

出展作品

デジモ

Done is better than perfectの言葉通り、「半生」状態でまずは反応をみてみたい

クルマ×ソーシャル。実はキチンとなかったジャンルを、クールなアイデアと優れたUIでパッケージングした、注目のアプリ。世界市場も視野に入れたサーヴィスは、猛者たちの目にどう映るのか!

mashroom.inc
渡邉 誠(CEO co-founder)-右
今野 礎(MusicManager co-founder)-左

出展作品

mashroom.fm

世界中のアーティストにもっと活躍の場を与えたいんです

YouTubeに上がっている動画を、6本まで同時再生やマッシュアップできるwebサーヴィス。単体では「動画」でしかないコンテンツ群を、「新たなる楽曲」へと昇華させる愉しみを提供してくれる。

Rmake
浜本階生(取締役)

出展作品

Crowsnest

自分にとって重要なニュースほど上位に来る画期的なシステムです

Twitter をベースとした自分のソーシャルグラフを使い、公共性や注目度の高いニュ ースだけをまとめてくれる自分専用のニュースリーダー。その便利さは、しばらく使い続けることでジワジワと実感できる。

Vettl
山下英孝(代表取締役 CEO)-左
鈴木 健(取締役 Director)-右

出展作品

PicoTube

今回、ブースではコスプレをしようかと思ってます!

一度に5人までがDJとなり、YouTubeの動画を流してパーティができるアプリ。一時話題を呼んだTurntable.fmが現在アメリカ国内でしか使用できないため、アメリカ以外の世界を獲れる可能性がある!?

NEC BIGLOBE
下島健彦(執行役員)-中
水谷友一(チーフプランナー)-左
中務幸子(マーケティングプランナー)-右

出展作品

RingReef

発想の原点は震災対応。1億ダウンロードを目指して頑張ります

とても簡単、すごく快適にグループメッセージングができるアプリ。テキストだけではなく、写真や位置情報も共有できるこのサーヴィスは、プライヴェートのみならず、ビジネスシーンでも大いに活用できそうだ。

ワンアール
中仮屋俊輔(代表取締役)-右
嶌 克繁(システム開発グループ)-左

出展作品

CuriouCity

ユーザーを増やすべくいろいろと、面白ノベルティを考えてます

初めて行く場所で、おいしいレストランや面白いショップに行きたくなったら、現地の人に聞くのがいちばん。それを実現してくれるのがこのアプリ。チェックイン&チャットで、最新の一次情報にアクセス!

ナスカークラフト
沼倉正吾(代表取締役)

出展作品

ビリオンアイズ

当選のメッセージは、朝届きます。その日1日は有名人気分を味わえます

まずはTwitterのアカウントで登録。そのなかから毎日抽選で1名が選ばれ、その人のつぶやきを、全員でウォッチ(!)するという『トゥルーマンショー』的サーヴィス。見事当たったら、何をつぶやく?

CARAQURI
中本悠太(代表取締役)

出展作品

Vongno

セレンディピティな出会いを、みんなもっと欲しているはずです

すれ違うだけでソーシャルアカウントを交換できると聞くと何やら怪しいが、「いつどこで出会ったのか」が記録されていくと、確かに「何か」生まれていく可能性があるかも。ユーザーが増えれば面白そうだ。

ウエディングパーク
高見沢徳明

出展作品

Goeng

国際交流促進、というコンセプトです。決して出会い系ではありません!

Facebook上でサーチした、近しい嗜好の人と出会えるアプリ。ただしリコメンドされるのは、すべて国籍の違う人。英語に自信がなくても定型文が用意されているので、ゲーム感覚でコミュニケーションできる。

Pitapat
合田武広(代表取締役CEO)-左
伊香賀 淳(COO)-中
太田真明(Chief Developer)-右

出展作品

Pitapat

出会いのドキドキ感は万国共通、なはずですよね!?

Facebookでどんどん「友達」は増えているけれど、正直、なかなかつながりは深まらない。でも、もし気になる人と実は両思いだったとしたら? 実に健全かつストレートな開発コンセプトは、海を越えるか。

プライムアゲイン
阿部伸弘(取締役社長)-右
小島舞子(取締役副社長)-左
綿貫岳海 -中

出展作品

BuzzBall

Googleでは検索できない人がつくり出す情報の広がりをトレースできます!

社長が大学3年生、副社長が4年生、そのほか高校生・大学生で構成される今回の最年少チームが考案したのは、自分がシェアした記事の広がりを追跡できるwebサーヴィス。応用できる分野が広そう?

TEXT BY WIRED.jp_C
PHOTOGRAPHS BY YURI MANABE

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