僕は就任当初から岡田サンに対して批判し続けてきた。終始一貫ダメ出しを繰り返してきたが、それはあくまでも、代表監督としてのサッカーゲームの進め方についての異議だった。

加茂サン、1回目の岡田サン、トルシエ、ジーコ、オシムに対しても同様。あくまでもサッカーサイドの話であって、人格そのものまで否定した覚えはなかった。

原稿の中で、敢えて岡田監督ではなく「岡田サン」と表現してきた理由も、人間的にはラブリーな人に違いないとの思いがあったからだ。

実際、僕が知るそれまでの岡田サンはそうだったわけだが、「あれは冗談だった」と言われると、さすがに分別をつけていられなくなる。プチッと切れたくなる。

この人いったいどうなっちゃったんだ? と、その人間性、精神性に言及せざるを得なくなる。入りたくない領域に、好むと好まざるとに関わらず、入らざるを得なくなる。残念とはこのことだ。

しかも「岡田監督」は、その時、薄笑いさえ浮かべていた。韓国戦後の記者会見場で、進退伺いの話をした瞬間、一部の記者から笑いが湧いたことを挙げ、記者も冗談ぽく受け止めていたと言うが、空気が読めないというか、おめでたいというか、笑いにもいくつかの種類があることぐらい50も過ぎれば、分からなければならない。

いまの岡田監督は、監督として以上に、人間としておかしくなっている。頭の中のどこかの機能が壊れてしまった感じだ。サッカーどころではない、病的ともいえる危うさを感じる。少なくとも、他人からどう思われているか、彼はまるで鈍感になっている。

サッカー的には、予想されたことが、予想通りに起きているに過ぎないので、韓国に敗れても、別に驚きもしないが、その人間的な面に関しては、こちらの予想を逸脱してしまった。ここまでなるとは読めなかった。

精神的に相当追い込まれていることは想像に容易い。表情を見ているだけでも、この3年間での変化は一目瞭然になる。僕がリングサイドのセコンドなら、とうにタオルを投げ入れているだろう。見ていられない状態とはこのことだ。

そもそも岡田監督と犬飼会長は、壮行試合で韓国に勝つことを前提で、物事を進めていたのだろうか。岡田監督の支持率は、セルビアに0−3で敗れると10%に満たない数字に落ち込んでいた。そこで韓国に敗れれば、支持率はほぼゼロになる。そうした状態の中で、日本を発つことは想像できたはずだ。

で、韓国はそれなりに強い。東アジア選手権でも、メンバー落ちの韓国に2点差で敗れている。簡単に勝てる相手でないことも想像できたはず。負けるはずのない相手に敗れたわけではない。現在の状況が、まさかの事態ではないことを、彼らだって分かっているはずなのである。

そこに僕は問題を感じる。支持率ゼロでもヨシと開き直っているところ。つまりファンの存在を完全に無視しているところに、彼らの最大の問題がある。

韓国戦終了後、スタンドに詰めかけたファンに挨拶をしたのが、急に招集された川口能活で、岡田監督が何も喋らなかったことが問題になっているが、ならば、犬飼会長がしっかり挨拶すべきなのだ。ところが、彼は試合後、記者会見さえしていない。

川淵名誉会長は、もっと狡い気がする。この異常事態を招いたそもそもの原因は、岡田監督を招いたこの名誉会長にある。任命責任を感じていようといまいと、会見ぐらいは開くべきである。公の場に姿を現し、弁明ぐらいすべきである。

岡田監督、犬飼会長、川淵名誉会長をはじめとする協会上層部が、ファンを全く見ていないことは一目瞭然。サッカーの普及発展をメインテーマに存在する協会のトップとして、これはあまりにも情けない話だ。自らのギャラの出所が、どこなのか分かっているのだろうか。もし日本が、本大会で惨敗を喫したら、監督のみならず、会長、名誉会長の責任も免れることはできないのだ。

で、その時、メディアはキチンと騒げるか。何度も言うが、こうした事態を招いた責任は、各方面に気を遣いながらヨイショ報道に徹してきた、メディアにも大いにある。成田に帰国するや、その記者会見で「次の監督はオシム」と、ポロッと漏らした会長の一言に、反省も忘れ飛びついた4年前を想起せずにはいられない。今回も、同じようなことをやろうものなら、この世は終わりを告げるに違いない。

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